「心の科学の基礎論」研究会

1998年の活動履歴


第13回研究会

日時:1998/11/14(土) 1:15受付、1:30-5:30

場所:明治大学駿河台校舎 12号館6階2061演習室

1 蛭川 立(日本学術振興会特別研究員/心理学・人類学)

「進化心理学とその周辺」

進化心理学は、ネオ・ダーウィニズムの理論を人間行動に適用するひとつの試みで ある。しかし、エソロジーや社会生物学とは、文化進化に対する考え方や、背後にあ る人間観などが、微妙に異なっている。これらの相違点や、文化人類学や認知科学な どの隣接分野との関係などを検討することで、この進化心理学という研究プログラム の輪郭を浮かび上がらせてみたい。

2 中川維子(お茶の水女子大学/科学哲学)

「心的因果の可否について」


第12回研究会

日時:1998/9/12(土) 2:30受付、3:00-5:30

場所:明治大学駿河台校舎 研究棟4階第2会議室

発表:渡辺恒夫(東邦大学・心理学基礎論)他

論題:10月の日本心理学会大会のラウンドテーブル 「心理学の科学基礎論3:心理学基礎論の確立をめざして」について。

心理学基礎論(philosophy and metatheory of psychology)とは、心理学の対象・ 方法・目標を反省し、心理学とは何かを明らかにするための心理学の一分野であり、 心理学論(metascience of psychology)の中核をなす。実験心理学と臨床心理学の乖 離、隣接科学に併呑される傾向など、心理学の分裂と細分化傾向はその自己同一性を 脅かすまでに至っているが、ヴント以後1世紀以上をへてなおかかる反省が必要とさ れる根底には、「心」の概念の多義性、複雑さがあろう。従来ややもすれば異パラダ イム間の情緒的反発の応酬に流されがちであったこの分野で、最新の科学社会学や人 間科学論の諸潮流にも学びつつ、立場を超えて厳密な反省的営為としての心理学基礎 論の確立を目指す。なお、大会ラウンドテーブルでの話題提供予定は、渡辺恒夫(心 理学基礎論とは何か)、高橋澪子(心理学基礎論への心理学史的アプローチ)、小松 栄一(心理学の哲学:心の概念の3つの水準)、佐藤達哉(心理学の社会学:モード 論で見る日本の心理学)、西川泰夫(心理学基礎論の実践)である。


第11回研究会

1998年7月11日(土) PM1:30-5:30

明治大学研究棟4階第2会議室

1 三石博行(金蘭短期大学/科学技術哲学)

「精神分析学の成立とその科学性批判:現代人間学基礎論の確立は可能か」

1.フロイト精神分析学の成立過程 2.学際的研究と解釈学 3.精神分析学批判とそ の科学の有効性の範囲 4.言語学と精神分析 5.脳神経生理学と精神分析 6.文化論 と精神分析 7.自己組織系のシステム論の土台 8.人間的能力の有限と人間的活動限 界の思想的土台

2 中井 悟(同志社大学/言語学)

「生成文法と心的実在」

生成文法における心の問題の一つである文法の心的実在の問題を紹介する。文法の 心的実在の問題とは、人間の言語を分析する際に言語学者が設定するいろいろな規則 や制約や理論的構築物、あるいは、言語学者が作成する文法そのものが、人間の脳の 何らかの状態と実際に対応するのかどうかという問題である。生成文法の目標、チョ ムスキーの見解、科学哲学的観点からの検討、チョムスキー批判等が主な内容となる。


第10回研究会

1998年5月9日(土) PM1:30-5:30

早稲田大学文学部 第2研究棟(39号館)5階第6会議室

1 高砂美樹(山野美容芸術短期大学/バイオサイコロジー史)

「生理学的心理学の誕生」

心理学は19世紀後半に生理学や生物学の影響を受けて哲学から独立したというこ とになっている。現代心理学の状況を眺めると、脳死や遺伝子の問題など他分野から の強い影響は否めず、1世紀前と似たような状況が成立している。当時の状況をいま 一度顧みることで現在の状況への示唆が得られないか、考えてみたい。(参考文献: 現代思想96年2月号の同名拙著)

2 石川幹人(明治大学/知能情報学)

「Toward a Science of Consciousness 1998」

アリゾナ大学意識研究グループが主催する通称「ツーソン会議」が、4月27日か ら5月2日にかけて開催されるので、その参加報告を行う。本会議は、意識に関する 研究を、哲学、心理学、生理学、物理学などの分野にわたって、広く横断的に対象と する会議であり、学際的かつ啓蒙的議論がなされることで有名。隔年に開催されてお り、本年は第3回。来年は、関連の会議をテーマを絞って東京で開催する予定である ので、その準備状況についても触れる。


第9回研究会

1998年3月14日(土) PM 1:30

専修大学神田校舎7階7B会議室

1 足立自朗(埼玉大学/教育心理学)

「日本の教育心理学パラダイムの成立に関わる問題」

明治以降、第二次大戦までの期間には教育心理学のパラダイムは存在しなかったと 言ってよい。「四本柱の教育心理学」と呼ばれるものが確立したのは戦後のことであ る。四本柱の教育心理学の成立過程がいかに外発的なものであったか、にもかかわら ず、それが戦後50年以上にわたって教育心理学教科書を支配してきたのは何故か。 こんな問題について考えてみたい。

2 西阪 仰(明治学院大学/社会学)

「相互行為の資源としての想起」

記憶/想起というのは、たしかに「不思議」なものだ。それは必ず、現前していな いなにかについての記憶/想起であるからだ。しかしながら、だからといって記憶/ 想起を、わたしたちの皮膚界面下で生起する出来事・過程・状態と考える必要はない し、そのような考えは、むしろミスリーディングである。想起が、一方で、相互行為 のなかで組織され、かつ他方で、その相互行為を成し遂げていくための資源としても ちいられていること、すなわち想起が「認知的」な現象であるというより、むしろ「 相互行為的=社会的」現象であること、これを概念分析と相互行為分析によって示し てみたい。


第8回研究会

1998年1月10日(土) PM1:30-5:30

明治大学研究棟4階第2会議室

1 小松栄一(早稲田大学大学院/社会心理学)

「心の概念を正しく使用するための三つの規準」

心は脳の働きであるという言明に違和感を覚える人は少なくない。議論が紛糾する のは心という概念の使い方が異なるためではないか。心の概念の三つの規準(因果・ 体験・解釈)に焦点をあてディスコース分析を試みる。

2 合評会 ―『認知科学‐現代のエスプリ 362』(西川泰夫編)

― 担当:月本 洋(東芝/人工知能)

認知科学の方法論、人工知能の方法論、特に記号主義、計算主義を、それらの幾つ かの具体的手法も交えて、上記の本に沿って概観し、それらの有効性、および限界に ついて、反記号主義、反計算主義の主張も考慮に入れて、議論したい。


管理者:明治大学文学部 石川幹人