文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究「訴訟行動の研究」

(領域代表:村山眞維、領域名「法化社会における紛争処理と民事司法」)

1.研究組織

構成メンバー:CO1グループ代表 ダニエル・H・フット(東京大学)

東京大学班 「市民の民事裁判使用行動」
研究代表者 ダニエル・H・フット(東京大学)
研究分担者 河合幹雄(桐蔭横浜大学)、太田勝造(東京大学)、垣内秀介(東京大学)
専修大学班 「ジェンダーと民事訴訟」
研究代表者 神長百合子(専修大学)
研究分担者 和田安弘(大阪府立大学)
関西学院大学班 「市民の訴訟利用と和解成立要因」
研究代表者 守屋明(関西学院大学)
研究協力者 前田智彦(名城大学)、長谷川貴陽史(首都大学東京)、飯田高(成蹊大学)、藤田政博(政策研究大学院大学)、 森大輔(東京大学)、入江秀晃(東京大学)、酒井雅弘(東京大学)

2.主な研究活動

研究会などの開催は以下の通りである

C01グループ研究会等の記録

平成18年度

4月16日(日) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
5月28日(日) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
5月30日(火) 地方裁判所記録調査補遺
6月25日(日) 訴訟行動調査研究会(関西学院大学東京オフィス)
7月6日(木)
~9日(日)
LSAボルティモア大会で報告およびUniversity of WisconsinのHerbert Kritzer 教授らと打合せ
7月16日(日)
~17日(月・祝)
訴訟行動調査研究会合宿(名古屋)
7月30日(日) 訴訟行動調査研究会(関西学院大学東京オフィス)
8月7日(月) 訴訟行動調査研究会(東京大学)
8月15日(火) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
9月1日(金) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
9月9日(火) 訴訟行動調査研究会(東京大学)

平成17年度

4月17日(日) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
5月29日(日) 訴訟行動調査研究会(関西学院大学東京オフィス)
6月26日(日) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
7月6日(水) 東京地方裁判所記録予備調査
7月18日(月・祝) 訴訟行動調査調査者への説明会(明治大学)
7月22日(金) 訴訟行動調査調査者への説明会(東京大学)
7月25日(月)
~26日(火)
地方裁判所記録調査
8月3日(水)
~11日(木)
地方裁判所記録調査
8月12日(金) 地方裁判所記録調査
8月16日(火)
~19日(金)
地方裁判所記録調査
8月22日(月)
~25日(木)
地方裁判所記録調査
8月29日(月)
~9月2日(金)
地方裁判所記録調査
9月5日(月)
~9日(金)
地方裁判所記録調査
9月13日(火)
~16日(金)
地方裁判所記録調査
9月28日(水)
~30日(金)
地方裁判所記録調査
10月5日(水)
~7日(金)
地方裁判所記録調査
3月13日(月)
~15日(水)
地方裁判所記録調査

平成16年度

5月23日(日) 特定領域合同研究会
6月13日(日) 特定領域合同研究会
6月27日(日) 訴訟行動調査研究会(品川プリンスホテル)
8月1日(日) 訴訟行動調査研究会(品川プリンスホテル)
8月11日(水) 最高裁判所と調査打合せ会議
8月18日(水) 東京地方裁判所と調査打合せ会議
8月19日(木)
~21日(土)
訴訟行動調査研究会合宿(アクトシティホテル浜松)
9月29日(水) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
10月11日(月・祝) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
10月30日(土) 訴訟行動調査研究会(京都河合研究所)
11月5日(金) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
11月7日(日) 訴訟行動調査研究会(東京大学)
11月25日(木) 調査会社との会議(中央調査社)
1月20日(木) 調査会社の調査員との打合せ(中央調査社)
1月23日(日) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
2月15日(火) 訴訟行動調査研究会(専修大学)
3月23日(水) 訴訟行動調査研究会(関西学院大学東京オフィス)

平成15年度

7月18日(金)
~20日(日)
RCSLロンドン大会でHazel Genn教授らと打合せ
8月7日(木) 訴訟行動調査の調査項目と方法の叩き台(学士会館本館)
9月17日(水) 最高裁判所と調査打合せ会議
10月5日(日) 特定領域合同研究会
10月15日(水) 東京地方裁判所記録調査
11月3日(月・祝) Stanford UniversityのDeborah Hensler教授と打合せ
11月5日(水) University of WisconsinのHerbert Kritzer 教授と打合せ
11月14日(金) 東京地方裁判所で記録の予備調査
11月21日(金) 東京地方裁判所で記録の予備調査
11月27日(木) 訴訟経験者への面接調査実施
12月11日(木) 訴訟経験者への面接調査実施
12月13日(土) 訴訟経験者への面接調査実施
12月14日(日) 特定領域合同研究会
12月16日(火) 訴訟経験者への面接調査実施

【予備調査質問票調査実施関係】
平成17年1月20日(木)中央調査社との検討会(予備調査質問票調査関係、東京都)
平成17年3月18日(金)中央調査社との予備調査反省会(東京都)
調査実施:平成16年12月~平成17年2月

3.研究の概要

平成17年度

 平成17年度は,平成15年度および平成16年度の予備調査を受けて,第一次本調査として,既済訴訟事件を全国の地方裁判所の既済訴訟事件からランダムに事件を抽出した.地方裁判所本庁50庁の2004年1月から12月の終結事件番号のデータベースに基づいて,処理事件数に応じた按分配分を行い,ランダム抽出法で事件番号を抽出した.全国で1132件となった.
 全50庁の訟廷管理官等と連絡を取り,訪問,記録調査の日程調整の後に民事訴訟記録閲覧請求手続きに基づいて記録調査を行った.具体的には,法律分野の専門家ならびに法科大学院生・研究者養成大学院生に対して(200名を超える),民事訴訟手続,民事法,社会調査法,裁判所記録等についてのティーチングを行い,さらにノートパソコン上に開発したデータエントリーソフトの利用法の訓練を行った.裁判所記録調査の作業は,研究代表者・研究分担者の監督の下に全国で行った.調査の実施は,C班の他,特定領域研究の研究分担者ならびに研究協力者を動員して,作業の実施と監督を行った.
 調査内容は,終結区分,事件区分,付属手続き,期日の記録,訴状の内容の概略,第一審の手続結果の内容の概略,上訴関係の記録,当事者・代理人情報,その他,多岐にわたる.
 以上により,日本の民事訴訟について代表制のあるデータが蒐集され,手続きの概要等の詳細な知見が得られた.さらに,平成18年度予定の当事者・代理人への質問票による調査のためのデータも蒐集された.

平成16年度

 平成17年度の訴訟記録調査(本調査1:全国地裁平成16年終了事件からランダム抽出1000件)と平成18年度の当事者・弁護士調査(本調査2:訴訟当事者と訴訟代理人弁護士への質問票調査)のための予備調査を実施した.
① 平成15年度の訴訟記録予備調査(主要5地裁平成14年度終了事件からランダム抽出125件)をデータベース化し,本年度の訴訟当事者・弁護士調査の基礎データとした.
② 平成15年度の質的調査(訴訟経験者への面接調査)の結果及び文献調査の成果に基づき,紛争の発生,相談・紛争解決機関の利用,弁護士利用,訴訟利用へと進むFestinger Modelに依拠して質問票を作成した.質問票は,当事者調査用(本人訴訟原告用,弁護士訴訟原告用,本人訴訟被告用,弁護士訴訟被告用の4種類)と弁護士調査用(原告弁護士用及び被告弁護士用の2種類)を作成した.共通の質問事項と個別の質問事項で構成され,調査結果の統計的比較分析が可能となるよう設計されている.当事者のプライヴァシーならびに弁護士の守秘義務に対する慎重な配慮を行った質問事項としている.
③ 上記②で作成した調査票を用い調査専門機関に委託して,上記①の訴訟当事者及び弁護士の全員を対象とする質問票調査を実施した.調査の概要を付した調査への協力依頼文書(シール目隠処理付の拒否葉書同封)を送付した後,拒否者と典拠先不明者を除く全員に調査員による訪問のお知らせを送付し,調査員が各対象者を訪問した.留め置き法によった.調査会社からデータ入力,データクリーニング等を施しデータベース化したデータが本年度末に納入される.また,予備調査であるので,対象者及び調査員による調査票内容や調査手法に対する意見,コメント,所見等のデータも収集している.

平成15年度

 民事訴訟における当事者・代理人の紛争行動・訴訟追行行動を探求する.
 17年度の第一次本調査と18年度の第二次本調査に向けて,予備・予備調査の今年度は,以下の研究を行った.
① 訴訟に至るまでも紛争当事者の行動パタンの調査,訴訟提起の可否についての意思決定考慮要素の確定,弁護士と紛争当事者の間の交渉・面接のあり方,訴訟戦略の策定における当事者と弁護士の役割などについて,内外の文献を調べた.
② 質的調査として,複数の弁護士に紹介していただいた5名の訴訟経験者への面接調査を実施した.日程調整が不可能であったので,グループ・ディスカッション形態を採用することができず,個人面談方式で実施した.一部,事件の詳細が不明なものについては弁護士に依頼して訴訟記録等も戴いた.面接は1時間から1時間半を掛けて複数の共同研究者で行い,全て音声を記録した.
③ 訴訟記録調査として,東京地裁,大阪地裁,岡山地裁,札幌地裁,福岡地裁で,それぞれ通常民事事件20件と家事事件5件を,昨年度終了事件リストからランダム抽出して実施した.法人対法人事件を対象外とするゆえに,実際に蒐集した事件数は各地裁で22件から25件となっている.この予備調査の結果として,いくつかの問題点(例えば,裁判所,書記官,訟廷事務官に対する負担,訴訟記録調査にかかる多大な時間等)が明らかとなったので,来年度以降の調査方法を再検討した.