文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究「法使用行動の研究:法専門職のリーガル・サービスと法使用」

(領域代表村山眞維、領域名「法化社会における紛争処理と民事司法」)

1.研究組織

構成メンバー:B02グループ代表 和田仁孝(早稲田大学)

早稲田大学班 「法使用パターンの抽出とその相互影響関係の分析」
研究代表者 和田仁孝(早稲田大学)
福岡大学班 「市民の法使用の実態-弁護士使用」
研究代表者 武士俣敦(福岡大学)
大阪大学班 「市民の法使用の実態-司法書士の使用」
研究代表者 仁木恒夫(大阪大学)

2.主な研究活動

B02グループ研究会

平成17年度

6月5日 東京大学(B01グループと合同)
7月30日 早稲田大学
8月9日 福岡大学
11月6日 大阪市立大学(B01グループと合同)
11月13日 福岡大学
11月9日 東京大学(B01グループと合同)
12月11日 東京大学(B01グループと合同)
12月18日 福岡大学
12月23日 大阪市立大学(B01グループと合同)
2月12日 東京大学(B01グループと合同)

平成16年度

6月25日 福岡大学
8月12日 福岡大学
10月16日 神戸大学(B01グループと合同)
10月30日 関西学院大学大阪梅田キャンパス
12月19日 福岡大学
1月11日 早稲田大学
2月10日 専修大学
3月18日 早稲田大学

平成15年度

9月10日 九州大学
9月20日 大阪コスモスクエア国際交流センター
(B01グループと合同)
9月30日 九州大学
11月9日 九州大学(法専門職利用者インタビュー)
11月11日 法政大学(法専門職利用者インタビュー)
11月16日 九州大学
1月15日 九州大学
2月3日 九州大学

3.研究の概要

平成17年度

 平成17年度は、昨年までの弁護士・司法書士利用者調査によって得られたデータについての分析を行い、その分析に基づいて、B01班と協働で行う本格的な質問票調査の調査票の内容、および調査方法についての検討を行った。またこの過程で、B01班との協働調査の内容充実のための示唆を得るため、弁護士・司法書士利用者、および弁護士・司法書士への若干の面接調査を、補充的に実施した。
 さらに平成17年度は、このB01との本格的共同調査の準備・実施とは別に、その過程で得られた知見に基づく成果の様々な形でのアウトプットの実施にも尽力した。福岡大学武士俣敦教授、大阪大学仁木恒夫助教授とともに構成されたB02班では、すでに一昨年、予備調査や予備的文献研究で得られた成果を『弁護士活動を問い直す』(2004、商事法務)という著書の形で公開しているが、さらに、今年度は、弁護士会、司法書士会など、法サービスの提供者側への調査データ分析結果の提示に努めた。具体的には弁護士会での研修講演、日本司法書士会連合会関連のシンポジウム、研修講演などの形で提示し、その結果は日弁連研修叢書などの形で公表されることになっている。また、成果の一部は、弁護士の利用者への関係形成のあり方についての技法的提言として、『リーガル・カウンセリングの技法』(日本評論社、2006)のなかで展開している。
 こうした研究過程で得られた知見の公開とそれへの反応は、本年度のもっとも重要な作業であった、B01との共同調査の内容に反映され、その方向づけに役立ったということができる。次年度は、このB01との共同調査の本格的なデータ分析と、そこで得られる弁護士・司法書士利用者への質的調査の実施、さらにそれに基づく研究成果の公表に努めていくことになる。

平成16年度

 平成16年度は、前年度実施の調査結果の検討からスタートした。B02調査票の検証と本調査へ向けての修正を経て、東京および大阪において、弁護士利用者予備調査、司法書士利用者予備調査を実施した。その過程で、理論仮説の構成に関しては内外の先行研究を渉猟し、当事者の属性や資源、当事者の目的、弁護士のタイプや属性、事件の特性、など主要な理論的変数を同定することができた。また、我が国独自の職能である司法書士調査については、弁護士利用調査に準拠しつつ、必要な修正を加える方向で理論的変数を検討した。
 平成17年度以降、これら理論的検討の結果、および予備調査の成果を踏まえて、それをB01グループとの共同質問紙調査に反映させ実施していく作業に取り組んでいるところである。

平成15年度

  平成15年度には市民による弁護士使用の実態に関する全国調査の構想を立案することが基本目標であった。そのために調査項目の検討と調査票の作成準備に着手したが、その前提として内外の先行研究や文献を綿密に精査し、理論的枠組み、方法論、仮説構成、および調査実施計画の検討作業もおこなった。これらの作業は、弁護士の使用に関する調査をおこなう福岡大学班、司法書士の使用に関する調査をおこなう久留米大学(現大阪大)班、さらに行政機関や各種ADRの使用を取り扱うB01グループとの連携のもとおこなわれた。
  平成15年9月から10月にかけて大量サンプルを扱うB01グループとの共通枠組みによる弁護士使用調査の第一次予備調査のデザインの検討をおこなった。並行しつつ、11月には福岡と東京において若干名の弁護士利用者を対象にインテンシブなインタビューをおこなった。これにより、市民の側から見た弁護士利用上の問題点を探り、必要な調査項目の明確化を試みた。また、この段階で弁護士利用の非常に広範な多様性が明らかとなった。
 以上を踏まえて、B01グループの法機関利用調査に含まれるサブ調査という形式で本研究を推進することを基軸としつつ、そこでの調査項目の精錬を目的として、補足的に独立した予備調査を実施することとした。平成16年1月には弁護士利用に関する調査票の作成に着手し、2月半ばに完成、それを用いて2月下旬から3月にかけて予備的な調査を実施した。

 この調査では、調査地を東京に限定し、法律事務所を通じて弁護士利用者にアクセスする形での調査を試みた。具体的には、弁護士会名簿からランダムに100名の弁護士を抽出し、これらにたいし最近終了したクライアントの事件(相談を含む)について、弁護士事務所より質問票を当該利用者に郵送してもらうように依頼し、それを受け取った弁護士利用者より直接返信してもらうという方法である。その際、100名の弁護士中、50名には郵送で、残りの50名には留置きでおこない、回収効果の差異を探ることとした。
 こうして、平成15年度は文献等による理論的検討と小規模の探索的な予備的実態調査の実施で終わった。