臨死体験

臨死体験 NDE: Near Death Experience とは、死に瀕した人が死後の世界を垣間見るような体験のことをいう。
典型的な臨死体験は以下のようなものである。
20歳 女性 学生
 入院したときに麻酔が効きすぎたようで三日間ほど寝入ってしまったときのこと。
 目の前に色とりどりのお花畑が広がっていた。そこには川も流れていて、川の向こう側にはたくさんの知らない人たちが、黙って手招きをしていた。でもどこからか、「そっちに行ってはだめ」「帰っておいで」という声が聞こえてきたので、声のするほうにお花畑の中を歩いていくと、丸く光る空洞が現れ、その中へ吸い込まれていくような感じがした。
 すると、今度は、はっきりと自分を呼んでいる声が聞こえて、目が覚めると、家族が自分のことを呼んでいた。
 その後そのような体験をすることはなかった。
(聞き取り:末延千尋 2004年12月)
臨死体験が「死後の世界」を垣間見る体験なのか、それとも瀕死の状態で見る夢のようなものなのかについては議論が分かれている。しかし、ふつうに見る夢よりも体験内容が互いに類似しているのが特徴である。欧米での研究では、臨死体験には共通してあらわれやすい要素があることが指摘されている。つまり
・静かで平和な感覚
・自分の身体の外側に抜け出たような感覚(対外離脱体験)
・暗いトンネルを光に向かって通り抜ける体験
・人生を走馬灯のように振り返る
・境界線(三途の川など)を見る(生還者はそこを超えない)
・光に満ちた、お花畑のような美しい世界
・死者の霊や神との出会い(帰れと言われることが多い)
などが典型的なものとして挙げられている。「死後の世界」説によれば、これは体験者たちが同じような世界に行き同じような存在と出会うからだと説明できる。また夢や幻覚とする説によれば、体験内容が似ているのは側頭葉など脳の特定の部分が活動するからで、またその人が持っている天国や極楽のイメージが展開してくるだけだとも説明できる。
上の事例のように、必ずしも瀕死の状態にはなくても、麻酔薬やサイケデリックス(幻覚剤)の使用によっても同じような体験が起こることは、脳内の化学的な変化によってこのような体験が引き起こされるという可能性を示唆している。
いずれにしても、臨死体験者の多くは、体験後、人生観や死生観を変化させることが多い。死後の世界や霊的なものへの関心が高まり、逆に物質的な世界での競争や成功にはあまりこだわらなくなるという。
※事例の文章は聞き取りをした人の原文をもとに蛭川が若干の加筆修正を行なったものです。
(作成:2548/2005-01-18)