交換としての経済 Economy as Exchange

■文化人類学の基本概念のひとつが「交換 exchange」である。交換はコミュニケーションの社会的様態であり、また経済活動の基本ともみなされる。
■経済的交換のシステムは一般に
(1)互酬制 reciprocity
(2)再分配 redistribution
(3)市場交換 market exchange
の三種類に分類される。
■近代的な「経済」の概念では、市場交換による貨幣経済を「経済」と捉えるが、人類学では人間の経済活動を交換=コミュニケーション全般に拡張して捉え、市場交換はその一形態にすぎないとみなす。
■この分類では、歴史的に出現した順はたしかに1→2→3なのだが、だからといって後者のほうがより優れたシステムだということを意味しない。また3が優位である近代都市社会でも、実際には1〜3のシステムが共存して機能している。
■近代社会ではたしかに水平的な市場交換が優位ではあるが、たとえば税のシステムはむしろ垂直的な再分配の原理にもとづいている。互酬制は、さらに一般的互酬制と相互的互酬性に分類されるが、直接の見返りを求めない純粋な贈与にもっとも近いのが一般的互酬制で、これは交換というイメージからはもっとも遠いものである。しかし、近代社会においても家族の内部(それはしばしば市場の外部と見なされる)ではそのような「原始的」な交換のシステムは健在である。
(2005-10-15 修正 文:蛭川立)

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