2011年9月 日本食品科学工学会本大会(東京農大)

グミキャンディの構造と物性への糖濃度の影響

○山下朋子・村山浩昌*・池田春奈*・中村卓  *:カンロ

【目的】

グミキャンディは食感が重要なお菓子である。グミキャンディはゼラチン、糖、酸から構成され、ゼラチンがネットワークを形成することによりグミキャンディ独特の食感が発現する。市販製品では、ゼラチンと最もよく併用される多糖類としてアラビアガムやペクチンが用いられる。これまでの研究では、グミキャンディにこれらの多糖類を添加すると相分離構造が形成され、食感が変化することを明らかにした。アラビアガム添加グミキャンディではナノスケールで相分離し、セル構造を形成した。ペクチン添加グミキャンディでは、共連続の構造となった。しかし、このように相分離構造が異なるグミキャンディへの糖濃度の影響は明らかとなっていない。そこで、本研究ではグミキャンディの糖濃度に着目し、糖濃度を65%、70%、75%、80%と変化させることによりグミキャンディの構造と物性にどのような影響を与えるのかを検討した。

【方法】

グミキャンディの作製では、ゼラチンと多糖類の濃度は一定にし、砂糖・水飴のみを変化させて固形分濃度(Brix)を調整した。ゼラチン4%で一定とし、単独、ペクチン2%添加、アラビアガム12%添加の計3種類のグミキャンディを用いた。これらについて物性では破断試験を行い、構造は共焦点レーザー走査顕微鏡および電子顕微鏡にて観察した。

【結果及び考察】

破断試験では、ゼラチン単独グミキャンディではBrix80%の応力が上昇し、アラビアガム添加グミキャンディではBrix75%と80%の応力が上昇した。ペクチン添加グミキャンディではBrix75%と80%では応力が高くなり、より低歪率で破断した。電子顕微鏡による構造観察像では、アラビアガム添加グミキャンディではナノスケールでの相分離が変化した。ペクチン添加グミキャンディではBrixが高くなるにつれてネットワーク密度が高くなり、共連続構造から相分離構造へ変化した。以上の様に、グミキャンディの糖濃度が高くなると、物性面ではいずれのグミキャンディでも硬さが増すが、構造面では添加した多糖類の種類によって糖濃度の影響が異なることが明らかとなった。

2009年9月 日本食品科学工学会本大会(名古屋)

グミキャンディの電子顕微鏡観察のための前処理方法の検討

○山下朋子・長谷部智久・村山浩昌*・池田春奈*・中村卓  *:カンロ

【目的】

グミキャンディにとって、食感はおいしさを決定する重要な要因である。その食感はグミキャンディの構造が影響すると考えられ、構造を明らかにすることがグミキャンディのおいしさを追求していく上で大切である。しかし、グミキャンディは糖度が高いため電子顕微鏡により微細構造を観察する際、糖が内部構造を覆い観察を困難にしている。そのため、観察にはグミキャンディの構造を保持しながら糖を抜くことが必要であるが、この前処理方法は確立されていない。そこで、本研究ではグミキャンディの微細構造を走査型電子顕微鏡で観察することを目指し、そのための前処理方法を検討した。

【方法及び結果】

グミキャンディの原料にはゼラチンと最も良く併用される多糖類としてペクチン、アラビアガムを用いた。グミキャンディの作製は、多糖類と砂糖・水飴を煮詰め、ゼラチン溶液とクエン酸を添加混合し、最終糖度Brix80%のグミキャンディになるように調製した。これらグミキャンディの前処理方法としてグルタルアルデヒド・四酸化オスミウムを用いる化学固定により構造形成成分であるゼラチン・多糖類の固定方法を検討した。まず、溶媒に水を用いて固定する方法を行ったが、得られたグミキャンディの走査型電子顕微鏡(SEM)の低倍率での観察画像は、前処理を行っていないグミキャンディの共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)の観察画像と一致せず、アーティファクトがあると判断した。次に、溶媒にアセトンを用いて固定と脱水を同時に行う凍結置換法を行ったが、この方法では試料を固定することすらできなかった。よって、溶媒を用いることに問題があると考え、溶媒を用いずに試薬の蒸気により固定した後、水で洗浄し糖を抜いた。得られたグミキャンディのSEMの低倍率での観察画像が前処理を行っていないグミキャンディのCLSMの観察画像と一致したことから、蒸気固定法では構造にアーティファクトがないと考えられた。以上のように、グミキャンディの微細構造を走査型電子顕微鏡で観察するための前処理方法を確立できた。この方法により市販グミキャンディを観察した結果についても報告する。