2011年3月 日本農芸化学会本大会(京都女子大)

食品ゲルの食感を物性と構造から可視化する

○山田芳 中村卓

【目的】

ゲル状食品のおいしさに、食感は重要である。その食感は、食品ゲルの構造により異なると考えられ、ゲルの構造形成に関する多くの研究がなされてきた。しかし、食感は咀嚼による口腔内での構造破壊過程で力学物性と状態構造を知覚することで発現する。その為、より望まれる食感を実現するためには、加工により構造がどの様に形成されるかに加えて、咀嚼によりどの様に破壊するか具体的な構造破壊過程のイメージを持つ必要がある。そこで本研究では、構造破壊過程を力学物性と状態構造から可視化する手法の確立を目的とした。

【方法および結果】

モデルゲルと市販プリンについて、より単純な咀嚼破壊モデル系として、クリープメーターを用いて段階的に圧縮し、破断測定(応力・歪曲線)から力学物性を数値化した。さらに、それら圧縮ゲルを化学固定し、各種顕微鏡(CLSM・SEM)により、マクロ・メソ・ミクロレベルで破壊過程を観察し、状態構造の変化を画像化した。その結果、力学物性を説明できる観察結果が得られ、可視化手法を確立できた。このような、食品の破壊における物性と構造の可視化手法は、よりおいしい食品を開発する為の基盤となると考えている。

2010年9月 日本食品科学工学会本大会(東農大)

タンパク質と多糖類から成る 相分離構造の異なる共存ゲルにおける 構造破壊過程の解析

○山田芳 中村卓

【目的】

ゲル状食品において、咀嚼後半に感じる「なめらかさ」や「ざらつき」等の『口当たり』はおいしさを判断するための重要な食感である。しかし、その差が生じる過程は明らかにされていない。そこで今回は、この『口当たり』に着目し、その違いを構造破壊の観点から明らかにする事を目的とした。本研究では今までに、ゲル化機構の異なる卵白タンパク質とジェランガムを用いて、加熱冷却履歴を変えてゲルを作製する事により、同一配合において構造と物性の異なるゲルが得られる事を明らかにした (日本農芸化学会2009年度大会要旨集p.73)。これらのゲルでは、ひと噛み目の硬さの差は小さいが、咀嚼後半の『口当たり』は大きく異なっていた。そのため、これらゲルの構造の破壊過程を巨視的〜微視的レベルで観察し、相分離構造の違いによるゲルの壊れ方の違いとその食感への影響について比較検討した。

【方法】

作製したゲルについて、クリープメーターを用いて、圧縮前のゲルの高さの40%から99%まで段階的にゲルを圧縮した。それらの圧縮されたゲル全体を固定し、巨視的レベルでは肉眼で破壊の過程を観察した。微視的レベルではSEMによりゲルの亀裂部分を観察した。また、CLSMを用いてゲルを圧縮しながら観察することで、亀裂が伝播していく様子を観察した。

【結果】

巨視的な破壊過程の観察により、亀裂伝播の様子と圧縮後の破片の大きさに違いが見られた。破断測定において、より低歪・低応力で破断するゲルの方が、巨視的な亀裂の発生数が少なく、圧縮後の破片が大きい事が明らかとなった。さらに、SEMによる微視的なゲルの亀裂観察により、卵白タンパク質とジェランガムの界面で亀裂が発生・伝播していく様子が観察された。これらの結果により、同一配合のゲルでも、相分離構造が異なると壊れ方が異なることが明らかとなり、これが『口当たり』の差になることが示唆された。

2010年3月 日本農芸化学会本大会(東大駒場)

加熱冷却履歴の異なる卵白タンパク質とジェランガム共存ゲルにおける構造と物性への卵白濃度の影響

○山田芳 中村卓

【目的】

卵白タンパク質は加熱により熱不可逆ゲルを形成する。ジェランガムは加熱溶解後2価のカチオンを添加して冷却することで熱不可逆ゲルを形成する。これらのゲル化機構の違いを利用し、加熱冷却履歴を変えることにより、同一配合において構造と物性の異なるゲルが得られることを明らかにした (日本農芸化学会2009年度大会要旨集p.73) 。そこで、今回は卵白タンパク質の濃度を3段階に設定し、加熱冷却履歴の異なるゲルを作製し、これらゲルについて構造と物性を比較した。

【方法および結果】

卵白とジェランガムをそれぞれ蒸留水中に溶解させ、最終濃度が卵白3.25、6.50、9.75%、ジェランガム0.3%になる様に混合した。0.04%になる様Caを添加後、(A)直ちに冷却、(B)95℃で10分加熱した後冷却、(C)10分間冷却後95℃で10分加熱し再び冷却、以上の様に加熱冷却履歴の異なる3種類のゲルを作製した。これらのゲルについて、物性では破断測定を行い、構造は走査型電子顕微鏡と共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。その結果、卵白濃度が異なる場合でも、加熱冷却履歴の違いによって相分離構造が異なる事を明らかにした。

2009年9月 日本食品科学工学会本大会(名古屋)

卵白タンパク質とジェランガムの濃度の異なる共存ゲルにおける構造と物性への加熱冷却履歴の影響

○山田芳 中村卓

【目的】

卵白タンパク質は加熱により熱不可逆ゲルを形成する。ジェランガムは加熱溶解後2価のカチオンを添加して冷却することで熱不可逆ゲルを形成する。これらのゲル化機構の違いを利用し、加熱冷却履歴を変えることにより、同一配合において構造と物性の異なるゲルが得られることを明らかにした。そこで今回はジェランガムの濃度を3段階に設定し、それぞれのジェランガム濃度で(A)卵白未変性・ジェランガムのみゲル化、(B)95℃で卵白加熱変性後・ジェランガムをゲル化、(C)一度冷却させジェランガムゲル化後・95℃で卵白加熱変性、これらゲルについて構造と物性を比較した。

【方法】

卵白とジェランガムをそれぞれ蒸留水中に溶解させ、最終濃度が卵白6.5%、ジェランガム0.15、0.3、0.6%になる様に55℃で混合した。Caイオン濃度が0.04%になる様CaCl2溶液を添加後、(A)直ちに冷却、(B)95℃で10分加熱した後冷却、(C)10分間冷却後95℃で10分加熱し再び冷却、以上の様に3種類の加熱冷却履歴でゲルを作製した。

【結果】

これらのゲルについて、動的粘弾性測定した結果、ジェランガム濃度が増加するに従って貯蔵弾性率・損失弾性率共に増加した。破断測定では、(A)はジェランガム濃度に関係なく、ジェランガム単独ゲルよりも破断応力・歪率共に低い値を示した。ジェランガム濃度が高い場合、(B)(C)はジェランガム単独ゲルと比較して低い破断応力を示した。一方ジェランガム濃度が低い場合、(B)(C)は破断歪率・応力共に高く、卵白単独ゲルに近い値を示した。(B)と(C)の比較では、ジェランガム濃度が低い場合は(B)の方が破断応力・歪率共に高い値を示した。共焦点レーザー顕微鏡観察により、加熱冷却履歴が異なると卵白の相分離状態に違いが見られた。また走査型電子顕微鏡観察により、ジェランガム濃度が高くなると、(B)において卵白凝集サイズが大きくなることが明らかとなった。以上の結果から破断物性と卵白の不均質構造の関連について考察する。

2009年3月 日本農芸化学会本大会(福岡)

卵白タンパク質とジェランガム共存ゲルにおける構造と物性への加熱冷却履歴の影響
〜Effect of heating-cooling history on microstructure and physical properties of egg white/gellan gum gels〜

○山田芳 武藤愛 渡部幸一郎 中村卓

【目的】

卵白タンパク質は加熱により熱不可逆ゲルを形成する。ジェランガムは加熱溶解後2価のカチオンを添加して冷却することで熱不可逆ゲルを形成する。本研究では、これらの性質を利用し、同一配合で構造と物性の異なるゲルの作製を目指した。そこで、混合後の加熱冷却履歴の異なる三種類のゲルを作製し、これらゲルについて構造と物性を比較した。

【方法および結果】

卵白とジェランガムを各々蒸留水中に溶解させ、最終濃度が卵白6.5%、ジェランガム0.3%になる様に混合した。0.04%になる様Caを添加後、(A)直ちに冷却、(B)95℃で10分加熱した後冷却、(C)10分間冷却後95℃で10分加熱し再び冷却、以上の様に加熱冷却履歴の異なる3種類のゲルを作製した。これらのゲルについて、物性では破断測定と動的粘弾性測定を行い、構造は走査型電子顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、破断測定では(A)は(B)(C)よりも破断歪率と破断応力が大きく低下した。また、いずれのゲルもジェランガムが連続相を形成したが、卵白タンパク質は異なった不均質構造を示した。