○渡部 友里香1、井上 慶太1、森口 奈津美2、柳沢 有哉3、武藤 高明3、芳 一尚3、中村 卓1 (1明治大農・農化、2明治大院農・農化、3雪印メグミルク株式会社・ミルクサイエンス研究所)
プロセスチーズはナチュラルチーズと溶融塩を混合・加熱溶融・乳化して製造される。乳化はプロセスチーズにおいて製品の品質を決定づける最も重要な工程である。乳化の際に粘度が次第に上昇する現象をクリ―ミングと言い、この反応は最終製品の物性調整のために重要である。さらに、物性調整のためにプレクックチーズが利用されている。プレクックチーズを数%添加すると、乳化したチーズでクリーミングが起こり、不溶性のカゼインミセルが増加し、チーズが硬くなることが明らかにされている。一方、我々はクリーミングではカゼインサブミセルの凝集構造がランダムからストランド状へ変化し、チーズの物性が変化し降伏点を示すことを報告した。そこで本研究では、プロセスチーズの構造と物性へのプレクックチーズの添加の影響を明らかにすることを目的とした。クリーミングを示したプロセスチーズと示さなかったプロセスチーズをプレクックチーズとして使用し、カゼインサブミセルの凝集構造とチーズの物性との相関を検討した。
プロセスチーズは最終重量が30g、水分含量が45.0−46.0%、pHが5.8−5.9となるように調整した。溶融塩はポリリン酸塩とジリン酸塩(4:1)を、原料チーズはチェダーとゴーダを用いた。乳化は加熱温度90℃で、加熱撹拌中の粘度を測定できる機器Rapid Visco Analyzer(RVA)によって行った。撹拌速度と撹拌時間は各2水準の計4条件でプロセスチーズを試作し、これをプレクックチーズとして用いて、無添加でクリーミングを起こさない撹拌条件でプロセスチーズを作製した。これらについて走査型電子顕微鏡(SEM)、共焦点レーザー走査顕微鏡により構造観察を、クリープメータにより破断強度試験を行った。
RVAによる乳化中、短時間撹拌で試作したクリーミングを示さないプレクックを添加したチーズでは粘度は変化せず、クリ―ミングが見られなかった。しかし長時間撹拌でクリーミングを示したプレクックを添加したチーズではクリーミングが見られた。破断強度試験では、クリーミングを示さないプレクックを添加したチーズは降伏点のない物性を示し、クリーミングを示すプレクックを添加したチーズは降伏点を持つ物性を示した。SEM微細構造観察の結果から、クリーミングを示さないプレクックを添加したチーズではカゼインサブミセルの構造がランダム状に、クリーミングを示したプレクックを添加したチーズではストランド状に凝集した。すなわち、プレクック添加によるクリーミングでのチーズの構造と物性の変化は無添加でクリーミングを示したチーズと同様の変化であった。以上よりプレクック添加によりクリーミング反応が促進される事が明らかとなった。
○渡部友里香1,佐藤早華1,井上慶太1,森口奈津美 1,芳 一尚2,柳沢有哉2,武藤高明2,中村 卓1(1明治大農化,2雪印メグミルク諌ルクサイエンス研究所)
プロセスチーズは複数のナチュラルチーズと溶融塩を混合・加熱溶融・乳化して製造される。乳化はプロセスチーズにおいて製品の品質を決定づける最も重要な工程である。乳化の際の撹拌速度による脂肪球サイズの変化や撹拌を続けることによるカゼインサブミセルの微細構造の変化が製品の物性に影響を与えると考えられている。また、Rapid Visco Analyzer(RVA)は撹拌速度および温度を制御して加熱撹拌中の粘度を測定できる機器であり、近年チーズの試作にも用いられている。そこで本研究では、RVAによる乳化条件(撹拌速度・時間)のプロセスチーズの構造と物性への影響を明らかにすることを目的とした。
プロセスチーズは最終重量が30g、水分含量が45.0-46.0%、pHが5.8−5.9となるように調整した。各種溶融塩と原料ナチュラルチーズ(チェダーチーズ・ゴーダチーズ)を用いた。RVAでの乳化は温度90℃と固定し、撹拌速度と撹拌時間は各2水準の計4条件でプロセスチーズを作製した。これらチーズについて、走査型電子顕微鏡(SEM)共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)により構造観察を、クリープメーターにより破断強度試験を行った。
RVAによる乳化中、長時間撹拌で粘度が上昇するクリ―ミング反応がみられた。破断強度試験の結果は、短時間撹拌では降伏点のない物性を示し、長時間で降伏点を持つ物性を示した。同じ撹拌時間では撹拌速度が速い方が全歪率において高い応力を示した。CLSMおよびSEM構造観察の結果から、撹拌速度が速いほど、また撹拌時間が長いほど脂肪球サイズが小さくなる傾向がみられた。つまりチーズ中の脂肪球サイズが小さいほど高歪率において応力が高い結果となっており、脂肪球サイズと応力の間に負の相関が得られた。そしてSEM微細構造観察の結果から、サブミセルが短時間撹拌ではランダムに、長時間ではストランドに凝集した。すなわち、撹拌時間が長いほどサブミセルの構造がランダムからストランド状へ変化する傾向があり、これにより乳化中に粘度が上昇するクリ―ミング反応を生じ、破断試験で降伏点を示したと考えられた。また、熔融塩の種類の違いによる影響についても報告する。