2008年3月 日本農芸化学会本大会(名古屋)

Ca誘導性大豆タンパク質-ジェランガム共存ゲルにおける相分離構造と破断特性の関係

○渡部幸一郎,中村卓(明治大院農・農化)

【目的】

大豆タンパク質、ジェランガムは共にCaの存在下で熱不可逆性のゲルを形成する。そのため両者の共存系でCaを添加して得られるゲルは成分間にCa架橋が形成されている可能性がある。これまでに演者らは均質な共存ゲルを作成し、それぞれの単独ゲルとは物性が異なること、また共存ゲルはマクロ構造(相レベル)、メソ構造(凝集体レベル)では相分離しているものの、両者のネットワークが相互に侵入していたことを報告した。今回は大豆タンパク質、ジェランガム濃度が共存ゲルの相分離構造、破断特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法および結果】

試料には大豆分離タンパク質(以下SPI)と脱アシル型ジェランガム(以下ジェラン)を用いた。ゲル化の方法は今年度の日本食品科学工学会の報告と同様に行った1)。試料濃度はSPIで1-6%、ジェランは0.05-0.4%に調製した。ゲルはクリープメーターにて破断試験測定を行い、CLSM、SEMにより相分離の評価を行った。ジェラン濃度の上昇に比例して共存ゲルの破断応力は上昇したが、SPI濃度とは相関が見られなかった。このゲルについて構造観察の結果についても報告する。1)第54回日本食品科学工学会大会講演集p150

2007年9月 日本食品科学工学会第54回大会(福岡)

大豆タンパク質‐ジェランガム共存系でのCaイオン添加によるゲル形成過程の解析

○渡部幸一郎,中村卓(明治大院農・農化)

【目的】

大豆タンパク質、ジェランガムは共にCaイオンの存在下で熱不可逆性のゲルを形成することが知られている。そのため両者の共存下でCaを添加して得られるゲルは二成分間にCaの架橋が形成されている可能性がある。前回の大会において演者らは大豆タンパク質、ジェランガムの均質な共存ゲルを作成し、それぞれの単独ゲルとは物性が異なること、また共存ゲルはマクロ構造では相分離し、ミクロ構造では両者のネットワークが相互に侵入していたことを報告した(1)。今回はこの共存ゲルの形成過程やゲル形成のメカニズムについて解明することを目的とした。

【方法および結果】

試料には大豆分離タンパク質(以下SPI)と脱アシル型ジェランガム(以下ジェラン)を用いた。ゲル化の方法は昨年度の報告と同様に、最終濃度SPI6%、ジェラン0.1%になるよう蒸留水に分散させた後90℃で10分間加熱し、5℃で1時間冷却した。これを再び加熱し50℃でCaCl2水溶液をCa濃度0.08%になるよう添加して70℃まで昇温させ15分間保持した。その後5℃まで冷却しゲルを得た。このゲルは肉眼レベルでは均質であったが、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した結果、前回報告した走査型電子顕微鏡観察と同様の相分離構造が見られた。また、ゲル化方法と同様の加熱、冷却過程およびCa添加時の粘度変化をRVA(Rapid Visco Analyzer)で測定した。SPI単独溶液では変性に伴うと考えられる70℃程度とCa添加時の2点で粘度が上昇した。またジェラン単独溶液ではCa添加後の冷却時約40℃で粘度が上昇した。一方、共存溶液では単独成分のみでは見られなかったCa添加前の冷却時約35℃おいて粘度上昇が見られた。このことからSPI、ジェラン間にCa添加以前に何らかの相互作用が生じていると考えられる。この粘度変化の前後におけるゲル前段階の微細構造観察についても報告する。 (1)第53回食品科学工学会大会講演集 p71

2006年8月 日本食品科学工学会第53回大会(藤沢)

大豆タンパク質-ジェランガム共存系でのCaイオン添加によるゲルの形成とその特性

○渡部幸一郎,中村卓(明治大農・農化)

【目的】

大豆タンパク質、ジェランガムは共にCaイオンの存在下で熱不可逆性のゲルを形成する。そこで両者の共存系でCaイオンを添加し得られるゲルは二成分間にCaの架橋が形成され、それぞれの単独ゲルとは異なる新たな物性を持つのではないかと考えられる。そこで本研究ではまず各成分単独で均質ゲルができる条件で共存ゲルを作成し、得られた共存ゲルの物性を単独ゲルと比較した。さらに電子顕微鏡による微細構造観察をすることにより大豆タンパク質、ジェランガム間の相互作用の有無やその機構を検討した。

【方法及び結果】

試料は大豆分離タンパク質(SPI)と脱アシル型ジェランガムを用いた。それぞれ単独でのゲル化条件を検討した結果以下の条件で共存ゲルを作成した。まず、これらを蒸留水に分散させた後90℃10分間の加熱を行い、5℃で1時間冷却させた。これを再び加熱し50℃で塩化カルシウム水溶液(凝固剤)を添加して70℃を15分間保持した。その後5℃まで冷却し共存ゲルを得た。この共存ゲルの破断試験をレオナーU(山電社製)で行った結果、それぞれの単独ゲルとは異なった破断挙動を示した。このことから大豆タンパク質、ジェランガム間に何らかの相互作用が生まれた可能性が考えられる。さらに共存ゲルの微細構造観察の結果についても報告する予定である。