2006年8月 日本食品科学工学会第53回大会(藤沢)

大豆グリシニンの酸沈殿性へのフィチン添加と加熱処理の影響

○内海裕太,齋藤努*,中村卓(明治大農・農化・不二製油樺`白開発研究所*)

【目的】

大豆種子中に1-3%含まれているフィチンは、豆腐製造において加熱された豆乳の凝集に影響していると考えられている。また、分離大豆タンパク質の酸凝集沈殿性(pH4-6)や酸溶解性(pH2-4)が、フィチン含量に影響されることが明らかにされている。しかし、加熱され会合した大豆タンパク質(可溶性会合体)での酸沈殿性や酸溶解性へのフィチンの影響については、明らかにされていない。そこで、本研究では、大豆タンパク質の主要成分であるグリシニンに焦点を絞り、大豆グリシニンの酸沈殿性へのフィチン添加と加熱処理の影響について検討した。

【方法及び結果】

大豆種子より精製したグリシニン溶液(pH7.5)を用いて、@未加熱、A未加熱+フィチン添加、B95℃-1分加熱グリシニン、C95℃-1分加熱グリシニン+フィチン添加、D(グリシニン+フィチン)95℃-1分加熱の5種類の溶液を調製した。それぞれにHClを加えpHを低下させていき、タンパク質の溶解率を測定した。酸沈殿性に関しては、未加熱グリシニンと95℃-1分加熱グリシニンでは、pH6.5で溶解率が低下しはじめた。それに対し、未加熱+フィチン添加と95℃-1分加熱グリシニン+フィチン添加と(グリシニン+フィチン)95℃-1分加熱したものでは、より低いpHで溶解率が低下しはじめた。すなわち、フィチン添加の影響が大きかった。また、酸溶解性に関しては、未加熱グリシニンではpH4.5で、未加熱+フィチン添加ではpH4.3から、溶解率が上昇しはじめた。95℃-1分加熱グリシニンと95℃-1分加熱グリシニン+フィチン添加と(グリシニン+フィチン)95℃-1分加熱では、より低いpHで溶解率が上昇しはじめた。すなわち、未加熱グリシニンではフィチン添加の影響がみられた。一方、加熱グリシニンでは、フィチン添加の影響はみられなかったが、未加熱のものに比べより低いpHで溶解した。つまり、酸溶解性では加熱処理の影響が大きかった。さらに、酸可溶性成分のHPLC・PAGE分析結果についても報告する。