2012年3月 日本農芸化学会本大会(京都;京都女子大)

ジュール加熱殺菌処理した液全卵の物性・構造解析

○梅森 賢、中村 卓、星野 貴1、滝田 裕二1、山口 祐輝1、五十部 誠一郎2 (明治大院農・農化、(株)フロンティアエンジニアリング1、(独)農研機構・食総研2)

【目的】

食品には安全が求められる。しかし、安全確保のため加熱殺菌処理することで、食品の持つ本来の性質が失われるという課題が存在する。液全卵はサルモネラ菌による食中毒リスクが存在し、加熱殺菌処理(60℃、3.5分)が行われる。しかし、従来の熱媒体を用いた間接加熱殺菌処理では緩慢でムラのある加熱のため液全卵に熱負荷がかかり、卵本来の品質と異なる問題がある。この問題を解決する方法として液全卵を通電させることで迅速で均一な加熱が可能であるジュール加熱殺菌処理が挙げられる。ラボスケールのバッチ方法で液全卵をジュール加熱殺菌処理した液全卵の調理特性が未処理と同等であることを明らかにした1)。工業的に利用するためスケールアップする必要がある。本研究では、パイロットスケールの連続方法でジュール加熱殺菌処理を行い、加熱殺菌処理による液全卵の調理特性への影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

試料として市販液全卵を使用した。これをジュール加熱(20kHz,300-350V)にて60℃、3.5分間加熱殺菌処理を行った (Joule)。比較対象として、間接加熱処理された市販液全卵を用いた (Indirect)。各液全卵(Native、Joule、Indirect)の熱変化を示差走査熱量計(DSC)にて測定した。また、Rapid Visco Analyzer(RVA)にて粘度測定を行い、レオメーターにて動的粘弾性測定を行った。調理特性として、熱水(90℃)に液全卵を投入した様子を確認し、形成した構造物を走査型電子顕微鏡(SEM)にて微細構造観察を行った。

【結果】

DSCの結果、NativeとJouleの吸熱ピークが60℃、67℃、78℃に現れたのに対し、Indirectは60℃に吸熱ピークが現れなかった。RVAの結果、25℃及び80℃での粘度はNative≒Joule>Indirectとなった。また、NativeとJouleにて62℃付近に粘度の増加が見られた。動的粘弾性試験(温度スイープ)の結果G’、G”値が80℃まではNative≒Joule>Indirectであったが、85℃以降ではNative≒Joule

2011年9月 日本食品科学工学会本大会(仙台;東北大)

ジュール加熱殺菌処理した液卵の調理加熱ゲルの物性解析

○梅森賢1,中村卓1,星野 貴2,五十部 誠一郎3(1明治大院農・農化,2(株)フロンティアエンジニアニング,3(独)農研機構・食総研)

【目的】

食品には安全の保証が求められる。しかし、安全確保のため加熱殺菌処理を施すことで、食品の持つ本来の性質が失われるという課題が存在する。液卵はサルモネラ菌による食中毒リスクが存在し、加熱殺菌処理(60℃、3.5分)が行われる。しかし、従来の熱媒体を用いた間接加熱殺菌処理は、緩慢でムラのある加熱のため液卵に熱負荷がかかり、卵本来の品質と異なる問題がある。この問題を解決する方法として液卵を通電させることで迅速で均一な加熱が可能であるジュール加熱殺菌処理が挙げられる。そこで本研究では、異なる加熱殺菌処理を行った液卵を調理加熱にてゲル化させ、加熱殺菌処理による液卵ゲルの力学物性への影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

試料として市販卵を使用した。目開き850μmの篩に通し、未殺菌液卵(Native)サンプルとした。これを60℃、3.5分間それぞれ加熱処理を行った。この処理をジュール加熱処理では20kHz、150Vにて昇温させ、10Vで3.5分保持した。間接加熱処理として62℃の恒温槽にて処理した。加熱処理後6℃で冷蔵保存しそれぞれ加熱殺菌処理液卵(Joule、Indirect)とした。各液卵(Native、Joule、Indirect)の熱変化について示差走査熱量計(DSC)にて測定した。更に調理加熱ゲルは、各液卵を95℃で10分加熱後、氷水中にて10分冷却、6℃で一晩冷蔵して作製した。各ゲルをクリープメーターにて破断測定(応力-歪曲線)を行い、レオメーターにて動的粘弾性測定を行った。

【結果】

DSCの結果、NativeとJouleの吸熱ピークが60℃、67℃、78℃に観測されたのに対し、Indirectの吸熱ピークは67℃、78℃に観測された。破断測定の結果、歪率50%以下までNativeとJouleの応力に差は見られなかったのに対し、Indirectは高応力へシフトした。動的粘弾性測定の結果、G’、G”の値が共にIndirect>Joule≒Nativeとなった。破断測定結果と動的粘弾性測定結果の間で正の相関が得られた。ジュール加熱殺菌処理は、従来法に比べ液卵への熱負荷が小さいため、液卵本来の品質へ近づけることが可能であることが示唆された。更にDSCと破断測定、動的粘弾性測定との相関について考察する。