2015年8月 日本食品科学工学会(京都大学)

フレッシュチーズへのトランスグルタミナーゼ添加の効果

○塚田信也1、稲員知尋1、白石裕花1、谷遥佳1、中村卓1、福岡勇介2、岡本武2、熊澤義之2(1:明治大 農化、2:味の素(株) 食品研究所)

【目的】

食品中のタンパク質構造は食感に大きな影響を及ぼす。この構造を変化させる酵素の一つとして、タンパク質を架橋する作用をもつトランスグルタミナーゼ(以下TG)がある。現在までヨーグルトなど乳製品でのTGによるタンパク質加工の研究は広く行われてきたが、乳タンパク質を主成分とする食品であるフレッシュチーズへの添加効果は明らかではない。そこで本研究ではTGの添加がフレッシュチーズの歩留まりや食感に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

牛乳に乳酸菌・レンネット・TGを加え凝乳させ、形成したカードをカッティングしホエーを排出させることでフレッシュチーズを作製した。TGをタンパク質1 gあたり0〜2.0 U(以下U/Pg)の濃度になるように添加した。作製したチーズの歩留まり・pH・水分を測定した。TGによるタンパク質架橋をSDS-PAGEにより確認した。クリープメーターによる破断強度試験を行った。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、未破壊時および65%圧縮破壊時の微細構造を観察した。

【結果】

歩留まり測定の結果、無添加チーズに対するTG添加チーズの歩留まり比は、TG添加量の増加に伴い上昇傾向にあった。水分測定の結果、歩留まりと水分に正の相関が見られた。SDS-PAGEの結果、TG添加により濃縮用ゲルに入らない高分子タンパク質のバンドを生じ、架橋が確認された。破断強度試験の結果、TG添加量の増加に伴い破断点が高歪率高応力へシフトした。歪65%圧縮時では、TG添加によって亀裂が大きくなり本数が減少し、少ない数の大きな破片が形成された。SEMによる観察ではTG添加によってネットワーク構造の変化が見られた。破壊時には亀裂の先端部分において、TG添加、無添加で壊れ方の違いが見られた。以上の結果から、フレッシュチーズにTGを添加することでタンパク質が高分子化し、ネットワーク構造を強化することが明らかになった。これによりチーズ内に保持される水分量が増加し歩留まりが向上した。また、もろくやわらかい食感から壊れにくくかたい食感へ変化したと考えられる。