酵素処理により作成された油脂加工澱粉の糊化特性
○豊泉 智,中村 卓(明治大農・農化)
【目的】食感制御の目的で、食品素材として各種澱粉や加工澱粉が広く使われおり、その一つに油脂加工澱粉がある。以前、我々は酵素処理による油脂加工澱粉の作成1)と、油脂加工澱粉のスラリー(水に懸濁した状態)粘度特性2)について報告した。今回は酵素処理により作成された油脂加工澱粉の糊化特性について報告する。
【方法及び結果】油脂0.5%添加した澱粉にLipoxygenase-1酵素溶液を添加後、乾燥して油脂加工澱粉を作成した。固形分濃度8%(w/w)の澱粉スラリーを作成し、Rapid
viscoanalyzer(RVA)により、糊化曲線を得た。糊化開始温度を比較すると、油脂のみ、酵素のみ、油脂と加熱失活酵素を添加した澱粉より、油脂を添加し酵素処理した油脂加工澱粉の方が高かった。そこで共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で粒表面の油脂存在状態を観察したところ、糊化開始温度が変わらなかった澱粉では、油脂は粒表面に広がっていなかった。しかし、糊化開始温度が高かった澱粉では、粒表面に油脂は広がっていた。さらに原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、糊化開始温度が変わらなかった澱粉では、未加工澱粉と同様に直径40〜200nmの突起が数多く存在し、粒表面は粗かった。しかし、糊化開始温度が高かった澱粉では、突起はほとんど観察されず、粒表面が滑らかだった。
以上の結果より、酵素処理された油脂加工澱粉は粒表面に油がコーティングされ、表面構造が変化したため、糊化開始温度が高くなったと推定した。
1) 豊泉ら;日本農芸化学会 2003年度大会講演要旨集 P203
2) 豊泉ら;日本食品科学工学会 第49回大会講演習p214(2002)