○武田祐実1、木下宏一郎2、白石裕花1、中村卓1(1明治大農・農化、2グリコ栄養食品(株)・開発研究所)
小麦グルテンは水と混練することでタンパク質ネットワークを形成し、ドウ(生地)になる。パンや麺などの小麦粉を用いた食品では、その加工適性においてドウを形成する性質が極めて重要である。さらに、小麦粉から分離されたグルテンは食品の生地特性を改善することを目的として、広く用いられている。グルテンには製造方法の異なるものが市販されている。昨年の本大会において、抽出・乾燥方法の異なる市販の3種類グルテン(A, B, C)のドウが、違った物性や構造を示すことを報告した1)。そこで、本研究では、3種類のグルテンを混合し、ドウの物性に相乗効果が見られるか検討した。さらに、物性の相乗効果と構造の相関について、電子顕微鏡を用いて検討した。
グルテン粉末100gに0.7%食塩水150gを加え、ミキサーで混練することでドウを作成した。3種類のグルテンの配合(A:B:C)は、33:33:33、50:25:25、25:50:25、25:25:50とした。破断強度試験では直径28 mm、厚さ約9 mmのドウを用いた。走査型電子顕微鏡観察では、引き伸ばした状態のものを用いた。化学二重固定・脱水し、臨界点乾燥したものをオスミウム蒸着後観察した。
破断強度試験では、50:25:25>25:50:25≒25:25:50≧33:33:33の順に硬かった。これら3種混合ドウは全て、単独の相加平均や2種混合の相加平均よりも硬くなり相乗効果が見られた。特に、50:25:25と25:25:50でその相乗効果が顕著に見られた。電子顕微鏡観察では、引き伸ばしによる膜や穴の形成に差が見られた。50:25:25では細い繊維状のネットワークが密に張り巡らされ、これがドウへの圧力に対する強度に影響し、硬くなったと考えられる。25:25:50では膜構造が多く見られた。このことから、大きな伸展性がドウのちぎれにくさに繋がり、硬さに影響していると考えられる。電子顕微鏡観察による変形構造の違いと、混合による物性の相乗効果との相関をさらに考察する。 1)白石ら,日本食品科学工学会第63回大会要旨集,p.101(2016)