2004年9月 日本食品科学工学会第51回大会(岩手)

各種澱粉粒の表面微細構造と焼成による変化
〜Fine surface structures of various starch granules and their changes by baking 〜

○杉山明美,豊泉智,中村卓(明治大農・農化)
Department of Agricultural Chemistry, School of Agriculture, Meiji University
Akemi Sugiyama, Satoshi Toyoizumi, Takashi Nakamura

【目的】

各種澱粉が添加された焼成食品が市販されており、食感の発現における澱粉の役割が注目されている。現在までの澱粉の研究では、澱粉を完全可溶化し、成分としてのアミロース・アミロペクチンの構造が明らかにされている。さらに、高水分条件下での澱粉の糊化については多くの研究がなされてきた。しかし低水分下、特に焼成による澱粉粒の構造変化に関する研究は少ない。焼成食品中の澱粉は粒構造を保っており、焼成食品の食感と澱粉の構造との相関を考えるためには、焼成した際の、澱粉粒としての構造変化を明らかにする必要がある。そこで、まず由来農産物の異なる澱粉についてそれらの微細構造を調べ、さらに、焼成による澱粉粒の変化を明らかとすることを目的とする。

【方法】

澱粉は市販のタピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、レギュラーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、ワキシーコーン澱粉を用いた。各澱粉に対し、0〜45%の蒸留水を加えた後、180℃で30分焼成した。これら澱粉粒を両面テープで試料台に固定し、原子間力顕微鏡(NanoScope/DigitalInstruments)を用い、Tapping modeで観察した。

【結果】

各種澱粉の表面には突起物やくぼみのナノスケール凹凸構造が観察された。小麦澱粉では、比較的他の澱粉より滑らかであり、突起は直径100nm〜150nmであった。タピオカ澱粉では非常に粗く、突起は直径50nm〜130nmだった。馬鈴薯澱粉は100nm前後、レギュラーコーンは50〜150nm、ハイアミロースコーンは40〜150nm、ワキシーコーンは40〜300nmの直径の突起構造が観察された。この様に、凹凸構造の大きさや頻度は澱粉の種類によって異なっていた。これら澱粉に水分を45%添加し焼成すると、粒構造は保持していたが、この凹凸構造は消え、なめらかな表面が観察された。しかし、水分添加量が少ない場合は一部凹凸構造が残存していた。つまり、加水量の違いによる焼成時の澱粉粒表面構造の変化に差が見られた。