2013年8月 日本食品化学工学会本大会(実践女子大)
ゲル化剤添加プロセスチーズの食感の差を構造と物性の違いから見える化する
○末谷麻実,渡部友里香,井上慶太,中村 卓 (明治大農・農化)
【目的】
プロセスチーズは一般的に複数のナチュラルチーズと乳化促進のための溶融塩や、食品素材などの原料を混合・加熱溶融・乳化・冷却して製造される。原料配合・製造条件を変えることにより、いろいろな食感・風味・二次加工特性(熱溶融性や糸曳き性など)を持つ製品が作られている。一方、ゲル化剤は様々な食感を発現することが知られており、近年ゲル化剤を添加したプロセスチーズも作られている。そこで、本研究では、ゲル化剤添加することによるプロセスチーズの食感の違いを物性測定・構造観察を行うことにより、見える化することを目的とした。
【方法】
プロセスチーズは最終重量が26g、水分含量が45.0-46.0%、pHが5.8-5.9となるように調整した。溶融塩と原料ナチュラルチーズ(チェダーチーズ・ゴーダチーズ)とゲル化剤(寒天・ゼラチン)を用いた。Rapid Visco Analyzerでの乳化は温度90℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間30分で行いプロセスチーズを作製した。これらチーズについて、走査型電子顕微鏡(SEM)共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)により構造観察を、クリープメーターにより破断強度試験を行った。
【結果】
破断強度試験の荷重―歪曲線において、10〜30%の低歪率で、無添加のものと寒天を添加したものは直線的に荷重が増加するのに対し、ゼラチンでは山なりに増加した。寒天1.5%添加すると無添加よりも破断荷重が高くなったが、ゼラチン1.5%添加では無添加と寒天添加の中間であった。単独ゲルで、寒天と同じ破断荷重を示した濃度3.0%でゼラチンをプロセスチーズに添加したところ、1.5%寒天添加プロセスチーズと同程度の破断荷重を示した。破断後の荷重が寒天添加では急激に低下したのに対し、ゼラチン添加ではほとんど低下しなかった。SEM観察により、破壊過程での構造の変化を比較し、プロセスチーズの破壊物性と破壊構造の関係について考察する。