祝企業賞受賞 2016年8月 日本食品科学工学会(名城大学)

シフォンケーキのおいしさを表現する感性食感の見える化

○末田依里桂1、庄司理沙1、日下舞2、中村卓1(明治大農・農化1、明治大院農・農化2)

【目的】

食感は食品のおいしさにとって重要な要素で、咀嚼により構造を破壊することで発現する。おいしい食感は、かたさ・粘り・粗さ等の知覚的要素が咀嚼過程で組み合わされ、好ましいものとして感性語として表現される。シフォンケーキのおいしさに重要な感性食感として、一噛み目の咀嚼過程前半期の「しっとり・ふわふわ」と、唾液と混ざり合う咀嚼後半期の「口どけの良さ」が考えられる。しかし、これらの感性食感は具体的にどのような知覚的要素が組み合わさり認知されているかは明らではない。そこで本研究では、これらのシフォンケーキが持つ特徴的な感性食感を、咀嚼前半期・後半期をモデル化した物性測定と構造観察から可視化することを目的とした。

【方法】

本研究では、咀嚼前半の食感を澱粉添加で、咀嚼後半の食感を固形脂添加で試作したシフォンケーキを用いて評価した。ケーキは、薄力粉・太白胡麻油をコントロール(O)とし、澱粉は薄力粉の25%を、固形脂は油の25%を置換し作製した。澱粉はタピオカ澱粉(A)、コーン (B)、ワキシーコーン (C)、ハイアミロース(D)の4種、固形脂は融点31.5℃(P)と34.0℃(Q)の2種を使用した。これらのケーキについて、物性測定として咀嚼前半をイメージしたテクスチャー解析、咀嚼後半をイメージした加水時の口どけ食感解析を行った。また、構造観察としてX線CTによる気泡と、走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造を観察した。

【結果】

咀嚼前半をイメージした測定では、テクスチャー解析においてAとCの値が付着性で有意に高く、ケーキ戻り率で有意に低かった。またX線CTによる構造観察ではAとBとDで密な構造が観察された。咀嚼後半をイメージした測定では、口どけ食感解析の、圧縮力・付着性でPとQが有意に低い値を示した。構造観察ではX線CTにおいてOでは均一な構造、PとQで不均一な構造が観察された。さらにSEMによる圧縮時の微細構造観察では、Oは穴が小さくなめらかであるのに対し、PとQは穴が不均一で粗い構造が観察された。これら物性測定、構造観察の結果と咀嚼前半の「しっとり・ふわふわ」、咀嚼後半の「口どけの良さ」と関連付け考察した。