2016年8月 日本食品科学工学会(名城大学)

市販グルテンにおけるドウの伸展構造と加工適性の関係

○白石裕花1、木下宏一郎2、池田潔昭2、日下舞1、中村卓1(1明治大農・農化、2グリコ栄養食品(株)・開発研究所)

【目的】

小麦グルテンは水と混練することでタンパク質ネットワークを形成し、ドウ(生地)になる。パンや麺などの小麦粉を用いた食品では、その加工適性においてドウを形成する性質が極めて重要である。さらに、小麦粉から分離されたグルテンは種々の食品に添加され、生地特性を変化させ、その食品に適正な加工特性を付与する。グルテンには製造方法の異なるものが市販されている。これらは様々な食品に用いられているが、これらのグルテンと各種食品に与えられる加工特性の相関メカニズムは解明されていない。そこで、本研究では、種類の異なるグルテンを用いて、それらのグルテンドウを引っ張り変形させた際の伸展構造の違いから、加工適性との関係を解明することを目的とした。

【方法】

製造方法の異なる市販の3種類のグルテン粉末(A, B, C)を用いた。ドウの作成では、グルテン粉末100gに0.7%食塩水150gを加え、ミキサーで混練した。破断強度試験では厚さ約9 mmに切断したドウを用いた。走査型電子顕微鏡観察では、ドウを約2 mm角に切り出したものと、引き伸ばした状態のものを用いた。化学二重固定・脱水し、臨界点乾燥したものをオスニウム蒸着後観察した。

【結果】

破断強度試験の結果、ドウはA>B>Cの順にかたかった。未変形ドウの走査型電子顕微鏡観察ではタンパク質ネットワーク連続相に違いが見られた。A,Cには密な構造が、Bには粗い構造が見られた。かたさが異なっていても類似した構造をとっており、両者に相関は認められなかった。一方、ドウを引っ張った伸展構造の電子顕微鏡観察の結果、Aには太い繊維状のまとまりや膜状になった構造が、CにはAよりも厚い膜状の構造が、Bには細い繊維状の構造が見られた。変形による構造変化の結果、A, B, Cそれぞれで違った構造を示すことが明らかになった。これら変形構造の違いと破断強度試験のパラメーターとの相関、さらに加工適性との関係を考察する。