2018年8月 日本食品科学工学会(東北大:仙台)

のびるゼリーのメカニズムの解析

○坂本 真梨奈1、鈴木 真人2、長谷川 知美3、岩村 真実3、天野 明日香3、中村 卓1(1明治大農・農化、2明治大院農・農化、3新田ゼラチン(株))

【目的】

現在食品には、おいしいだけではない「+α」の価値が求められている。そこで楽しさという付加価値に着目し、ある一定の条件で作製するとのびる性質をもつゼリーを研究対象とした。どのようなメカニズムでのびるのかを解明できれば、より幅広い食品づくりに貢献し、よりおいしく、かつ楽しめるゼリーの安定的な生産に繋がると考えている。本研究では、のびる条件で作製したゼリーとのびない条件で作製したゼリーの構造を、電子顕微鏡を用いて観察することにより、構造とのびる性質との関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

ゼラチン・ペクチン・タピオカ澱粉・糖類からなるゼリーを作成した。ゼラチンの種類を変えて作製した、のびるゼリーとのびないゼリーの微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。特に、引張り破壊ゼリーの構造について詳細に観察した。また、原料として含まれている各成分がそれぞれどの構造を形成しているかを明確にするため、各ゼリーに以下の3つの処理をした後、SEM観察した。@アミラーゼ処理(澱粉分解)A温水処理(ゼラチン溶解)Bペクチナーゼ処理(ペクチン分解)。

【結果】

のびる条件で作製したゼリーでは網目状の構造が観察された。特に引張り破壊ゼリーでは複数成分間相互作用が見られた。一方、のびない条件で作製したゼリーでは網目状の構造に亀裂が見られた。また、@アミラーゼ処理サンプルでは、処理なしと比較して澱粉と思われる物質が分解された様子が観察された。A温水処理サンプルではゼラチンと思われる物質が見られなくなった様子が観察された。さらに、ペクチナーゼ処理を行ったサンプルでの微細構造観察についても報告する。以上の結果からのびるメカニズムについて考察する。