乳化剤と熱処理の組み合わせによる澱粉への耐老化性の付与
○小野純,中村卓(明治大院・農化)
【目的】
澱粉に加工を施し、本来の構造や物性を改質した澱粉を加工澱粉という。現在、食品に利用されている加工澱粉の多くは、澱粉を水に懸濁したスラリー状態で、化学薬品を用いて加工されており、食の安全性への不安や廃水による環境負荷が懸念される。そこで食品素材を用い、物理的方法により澱粉の改質を目指している。本研究では、食品添加物である食品用乳化剤を用いた。更に、廃水の出ない加工法として乾式熱処理を行い、乳化剤と熱処理を組み合わせることで、アミロースと乳化剤の複合体を形成させ、澱粉の耐老化性の改善を試みた。前回、各単独での影響が小さい条件で乳化剤と熱処理を組み合わせることにより、澱粉に耐老化性が付与されたことを報告した(1)。しかし、この加工澱粉の老化抑制能は低かったので、より耐老化性の向上を目的とし、乳化剤の種類及びその濃度を検討した。
【方法及び結果】
澱粉は小麦澱粉を用いた。各種、乳化剤エタノール溶液を澱粉に添加・ミキシングし、乳化剤添加澱粉(対澱粉0.05-0.50%)を調製した。その後、密閉容器で120℃を中心とする温度で1時間熱処理した。@未処理,A乳化剤添加,B乳化剤添加[熱処理]の澱粉について、糊化特性を加熱撹拌型粘度測定装置(RVA)にて測定した。また、老化はRVAにより得られた糊液を冷解凍させ、その硬さの変化をクリープメーターにて測定し評価した。
【結果】コハク酸モノグリセリドを0.50%添加したB乳化剤添加[熱処理]の糊化粘度は、熱処理温度が増加するにつれて、最高粘度・最終粘度が低下した。
ゲルの硬さ変化も、熱処理温度が増加するにつれて、A乳化剤添加のゲルよりも硬さの変化が小さくなった。つまり、より高温で熱処理することで澱粉の膨潤が抑制され、老化抑制能が高まった。以上、より高い濃度・温度の乳化剤と熱処理を組み合わせることで、耐老化性が向上した澱粉に改質することができた。
(1)第54回食品科学工学会大会講演集 p151