○森田幸夫,隠木一晃,中村卓(明治大農・農化)
食品中タンパク質は食感発現に大きく関与し、そのためタンパク質のゲル化に関する研究はよく行われている。異種タンパク質混合系ではタンパク質間相互作用が考えられ単独と異なる性質が期待できる。そこで本研究では大豆グリシニン(11S)と卵白オボアルブミン(OVA)混合系におけるゲル化特性について検討した。
イオン強度の異なるK-Pi buffer(pH7.6)(低イオン強度(I=0.01)、高イオン強度(I=0.5))中で、OVA:11Sが5:5 (同質量比)、1:9 (同モル比)となるように調整した後、100℃で加熱した。ゲル物性測定はRHEONARUを、構造観察は原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。
低イオン強度下のゲル物性は、タンパク質組成比が高いほうの性質が強まった。ゲル中で両タンパク質は均一に分散していた。一方、高イオン強度下では1:9混合ゲルは、単独ゲル、5:5混合ゲルより特異的に物性が低くなった。OVAはランダム会合体を形成し、ゲル中ではOVA単独で凝集し、11Sと分離していた。これらの結果より混合ゲルでは単独と異なる性質発現が示唆された。
○ 森田幸夫,沢辺司,佐藤絵里子,中村卓(明治大・農化)
多くの食品において、その食感(テクスチャー)は加熱によりタンパク質とでん粉が構造体を形成することにより発現する。大豆タンパク質とでん粉のそれぞれ単独での加熱ゲルの物性やテクスチャー特性はよく研究されているが、両者の共存系ではあまり行われていない。そこで本研究では、大豆タンパク質に性質の異なる各種コーンスターチを添加した際の影響を物性・構造の2つの側面から検討した。また、共存ゲル化への加熱温度の影響を調べるため、一度所定の温度を保持した後、100℃に昇温する2段階加熱を行い、初めから100℃の一定温度で加熱したゲルとの違いを検討した。
ツルノコ大豆より大豆分離タンパク質(SPI)を調製し、35mM K-Pi buffer(pH7.6、0.02%NaN3含む)に溶解した。でん粉は、ゲル物性の異なるコーンスターチ(レギュラー種(CS)、ワキシー種(WX)、ハイアミロース種(HA))を使用した。SPI濃度10%、でん粉濃度0〜5%となるように調整した溶液を加熱し、6℃で18時間冷却後、25℃で1時間放置し、以下の分析に使用した。RHEONARU((株)山電)を用いて物性を測定し、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を用いて微細構造を観察した。
SPIに各種でん粉を添加したゲル物性は無添加と比較して、CSではかたさが高く、CSとHAでは凝集性が低く、ガム性が高く、WXでは付着性が高かった。これは各種でん粉単独ゲルでの傾向と一致した。また、加熱温度過程を2段階制御することにより、特にWXでは膨潤が抑制され、共存ゲルのかたさが増加した。これらの結果より大豆タンパク質へのでん粉添加は、でん粉単独のゲルの性質と膨潤程度が共存加熱ゲルの物性と構造に反映されていることが示唆された。