2012年8月 日本食品科学工学会本大会(札幌;藤女子大)

連続相の異なる卵白・寒天共存ゲルの物性への添加油脂の局在構造の影響

○森口奈津美,中村卓

【目的】

タンパク質や多糖類は豆腐やプリン等のゲル状食品における主要な構造構成成分である。一般的に、これらを共存させると、分散相・連続相の相分離構造を形成することが知られている。これまでに、@卵白が連続体となる卵白連続相、A卵白・寒天どちらもが連続体となる両連続相、B寒天が連続体となる寒天連続相の3種類の相分離構造へ油脂を添加したところ、添加による破断点の挙動が異なる事を明らかにした1)。また、卵白・寒天共存ゲルにおいて固形分を低濃度から高濃度へと変化させると、相分離のサイズがミクロからマクロへ変化する事を報告した2)。そこで、本研究の目的を相分離サイズの異なる3種類の連続相構造への油脂添加の影響を明らかにする事とした。

【方法】

卵白溶液と寒天溶液を、高固形分濃度帯および低固形分濃度帯で卵白連続相(E)・両連続相(B)・寒天連続相(A)となるように調整、混合した (計6種類) 。最終濃度5%となるように油脂を添加し、真空乳化機で乳化溶液を作製した。この溶液を95℃で10分間加熱後、氷水中にて10分間冷却、5℃で一晩冷蔵しゲルを作製した。このゲルをクリープメーターにて、破断強度試験を行なった。さらに、各成分の分布観察として共焦点レーザー走査顕微鏡を、微細構造観察として走査型電子顕微鏡を用いて構造観察を行なった。

【結果】

3種類の連続相構造の異なるゲルへ油脂を添加したところ、破断強度試験から、高固形分においてEでは高歪・高応力、Bでは低歪・低応力へ破断点がシフトし、Aでは変化が見られなかった。一方で、低固形分ではE、B、Aともにどの歪率においても応力が上昇した。また、構造観察より、高固形分のEでは連続相である卵白内のみ油脂が存在していたのに対し、BおよびAでは油脂が卵白・寒天どちらの相にも存在していた。他方で、低固形分では、3種類のどのゲルにおいても油脂が卵白内にのみ存在していた。以上のことから、これら油脂添加による破断物性の変化の方向の違いは添加した油脂の局在構造が影響していると考えられた。 1)日本農芸化学会 2012年度大会 2)日本食品科学工学会 第58回大会講演要旨集 p.71 

2012年3月 日本農芸化学会本大会(京都女子大)

卵白・寒天共存系における連続相の異なるゲルへの油脂添加の影響

○森口奈津子 中村卓

【目的】

一般的に、食品の構造を形成する成分であるタンパク質と多糖類を共存させると、相分離が起こることが知られている。そのため、単独での特徴が共存時に発揮されず、食品開発においてタンパク質と多糖類を併用して、狙った食感を創造する障壁となっている。そこで、共存系における相分離構造に着目し、これまでに、加熱でゲル化する卵白タンパク質と、冷却でゲル化する寒天を用い、卵白と寒天の混合比を変化させると、卵白連続相・両連続相・寒天連続相と、相状態が変化することを明らかにした1)。そこで、本研究では、混合比を変化させ、さらに固形分濃度の影響による相分離構造の変動を明らかにすることを目的とした。

【方法】

13%,9.75%,6.5%の卵白溶液(E)と、3%,2.25%,1.5%濃度の寒天溶液(A)を作製した。これらの溶液を13%-3%、9.75%‐2.25%、6.5%-1.5%の系とし、両溶液を混合した。この混合溶液を95℃で10分間加熱、氷水中で10分間冷却した後、6℃で一晩冷蔵しゲルを作製した。このゲルについて、クリープメーターにて破断強度試験を行った。構造観察として、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、タンパク質の分布観察を、さらに、走査型電子顕微鏡を用いて微細構造観察を行った。

【結果】

【結果】13%-3%および9.75%-2.25%の系では、卵白-寒天の配合比率を変化させることで、μmオーダーの相分離構造が観察された。寒天比率の上昇につれ、卵白連続相から、両連続相、寒天連続相へと相転移した。また、破断強度試験の結果、寒天比率の上昇につれ破断点が低応力低歪側へシフトした。一方、6.5%-1.5%の系では、破断点が寒天比率の上昇につれ低応力低歪側へシフトした。しかし、寒天濃度0.53%以上では破断点が低歪側へシフトしたが、応力は一定となった。構造観察より、nmオーダーでの相分離が観察され、寒天比率の上昇とともに、ゲルのマトリクスが卵白から寒天へ変化する、ミクロ相分離構造であることが明らかとなった。以上のことから、破断点の推移が異なるのは、ミクロからマクロへ相分離構造が変化したためと考えられる。 1)日本農芸化学会2011年度大会講演要旨集p.230

2011年9月 日本食品科学工学会本大会(東北大)

卵白-寒天共存ゲルにおける ミクロからマクロへの 相分離構造の変化と物性の相関

○森口奈津美,中村卓

【目的】

一般的に、食品の構造を形成する成分であるタンパク質と多糖類を共存させると、相分離が起こることが知られている。そのため、単独での特徴が共存時に発揮されず、食品開発においてタンパク質と多糖類を併用して、狙った食感を創造する障壁となっている。そこで、共存系における相分離構造に着目し、これまでに、加熱でゲル化する卵白タンパク質と、冷却でゲル化する寒天を用い、卵白と寒天の混合比を変化させると、卵白連続相・両連続相・寒天連続相と、相状態が変化することを明らかにした1)。そこで、本研究では、混合比を変化させ、さらに固形分濃度の影響による相分離構造の変動を明らかにすることを目的とした。

【方法】

13%,9.75%,6.5%の卵白溶液(E)と、3%,2.25%,1.5%濃度の寒天溶液(A)を作製した。これらの溶液を13%-3%、9.75%‐2.25%、6.5%-1.5%の系とし、両溶液を混合した。この混合溶液を95℃で10分間加熱、氷水中で10分間冷却した後、6℃で一晩冷蔵しゲルを作製した。このゲルについて、クリープメーターにて破断強度試験を行った。構造観察として、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、タンパク質の分布観察を、さらに、走査型電子顕微鏡を用いて微細構造観察を行った。

【結果】

13%-3%および9.75%-2.25%の系では、卵白-寒天の配合比率を変化させることで、μmオーダーの相分離構造が観察された。寒天比率の上昇につれ、卵白連続相から、両連続相、寒天連続相へと相転移した。また、破断強度試験の結果、寒天比率の上昇につれ破断点が低応力低歪側へシフトした。一方、6.5%-1.5%の系では、破断点が寒天比率の上昇につれ低応力低歪側へシフトした。しかし、寒天濃度0.53%以上では破断点が低歪側へシフトしたが、応力は一定となった。構造観察より、nmオーダーでの相分離が観察され、寒天比率の上昇とともに、ゲルのマトリクスが卵白から寒天へ変化する、ミクロ相分離構造であることが明らかとなった。以上のことから、破断点の推移が異なるのは、ミクロからマクロへ相分離構造が変化したためと考えられる。 1)日本農芸化学会2011年度大会講演要旨集p.230

2011年3月 日本農芸化学会本大会(京都女子大)

卵白・寒天の共存ゲルにおける両連続相構造の形成

○森口奈津子 山田芳 武藤愛 中村卓

【目的】

多くの食品は、複数成分から成る。食品ゲルの主要な構造形成成分であるタンパク質と多糖類を共存させると、お互いの特徴を打ち消し合うことが多い。これは、タンパク質と多糖類が分散相・連続相の相分離構造を形成し、分散相が本来の性質を発揮できないためと考えられる。前回大会において、卵白と寒天をある濃度で共存させると、分散相-連続相の相分離構造ではなく、両連続相構造をとることを明らかにした。そこで本研究では、両連続相の形成に注目し、卵白・寒天共存ゲルの両連続相構造の形成への濃度の組み合わせの影響を明らかにすることを目的とした。

【方法および結果】

13%濃度の卵白溶液(E)と、3%濃度の寒天溶液(A)を、各比率(E:A)で混合しゲルを作製した。このゲルについて、クリープメーターで破断試験、共焦点レーザー走査顕微鏡で構造観察を行った。その結果、E比率が67.5以上で寒天が分散相に、E比率が57.5以下で卵白が分散相になった。さらに、E比率が65および60で、不安定な両連続相を形成し、その中間の62.5:37.5の比率(E8.13% A1.12%)で、安定な両連続相構造を形成することが、明らかになった。

2010年9月 日本食品科学工学会本大会(東京・東農大)

卵白・寒天・カードランの 三種混合ゲルにおける 新規構造の形成と物性の発現

○森口奈津子 山田芳 武藤愛 中村卓

【目的】

食品の構成成分であるタンパク質と多糖類を共存させると、一般的に不均質な相分離構造を形成することが知られている。これまで、加熱でゲル化する卵白タンパク質を用い、ゲル化機構の異なる多糖類に着目しこれらを共存させ、その構造と物性について報告した1)。卵白と、冷却でゲル化する寒天を共存させると相分離構造をとること、また、卵白と加熱でゲル化するカードランを共存させるとダブルネットワークを形成することを明らかにした。そこで、本研究では、これら二種混合ゲルをベースとして、卵白・寒天・カードランの三種混合ゲルの構造とその物性を明らかにすることを目的とした。

【方法】

単独ゲルの破断応力が同程度である卵白6.5%、寒天1.5%、カードラン2.7%で混合した溶液を95℃で10分間加熱後、氷水中にて10分間冷却、6℃で一晩冷蔵しゲルを作製した。このゲルをクリープメーターにて、破断試験を行った。さらに、各成分の分布観察を行うため、共焦点レーザー走査顕微鏡を、各成分の存在状態の観察として、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。

【結果】

三種混合ゲルの破断強度試験で得られた応力-歪み曲線は、各単独ゲルの和、各二種混合ゲルの平均のいずれとも一致しない新規な物性を示した。寒天・カードランゲルに卵白を混合する視点からみると、歪率25%から応力の上昇が見られ、破断点を持たない物性となった。また、卵白・寒天ゲルにカードランを混合する視点では、歪率30%以降で応力が上昇し、破断のおきない物性を示した。さらに、カードラン・卵白ゲルに寒天が入る視点からは、どの歪率においても応力が上昇した。また、顕微鏡観察により、卵白カードラン共存部分と、カードラン寒天共存部分が見られたことから、カードランが卵白と寒天と相互作用することで、両成分の仲介をしていると考えられる。 1)日本農芸化学会2010年度大会講演要旨集p,55