大豆グリシニンの加熱ゲル化における二段階温度処理の影響
○水越実,中村卓,森友彦*(明治大農・農化,畿央大健康科・健康栄養*)
【目的】大豆タンパク質は加熱によりゲル化することから、食感改良の目的で多くの加工食品に用いられている。そのため、大豆タンパク質の主要成分であるグリシニン(Gly)のゲル化に関する研究は種々行われている。Gly は、低イオン強度溶液において、変性温度の異なる6 量体(11S)と3 量体(7S)で存在する。一方、加熱ゲル化による食感発現は、タンパク質が変性→会合体形成→ネットワーク構造化することで生じる為、変性温度と加熱温度の関係が重要となる。つまり、変性履歴の違いによるネットワーク構造形成の過程を明らかにすることは、加熱による食感制御につながると考えられる。そこで、本研究ではGly を用い、加熱温度
を二段階で変化させた際の、加熱方法とゲル物性の相関をネットワーク形成過程の解析により検討した。
【方法】鶴の子大豆より精製したGly を低イオン強度(3.5mM K-PiBuf.,I=0.01,pH7.6)に調整後、1 段階目60〜95℃→2 段階目95℃でそれぞれ20 分ずつ加熱した。その後、クリープメーターにて物性を測定し、DSC・電気泳動にて変性状態を調べ、SDG にて会合体サイズを分析した。
【結果】OVAゲルは1段階目を70〜80℃で加熱後、100℃で加熱すると、はじめから100℃で加熱するよりも硬さが小さかった。特に、75℃→100℃加熱では約半分の硬さであった。しかし、ゲルのネットワーク構造に相違は見られなかった。そこで、75℃での1段階目加熱後のゲル中のタンパク質の変性状態を分析したところ、全タンパク質の約2割が未変性モノマー分子の状態で残存していた。また、2段階目加熱後のゲルではすべて高分子化していた。以上より、1段階目加熱後に残存していた未変性モノマー分子が2段階目の加熱により変性・凝集したが、十分な硬さの発現には至らなかったと考えられた。