○宮崎耕平,中村卓(明治大院・農化)
大豆貯蔵タンパク質は水溶液中単独で加熱されると可溶性の会合体を形成する。一方、豆乳という多成分共存系で加熱されると単独とは異なる挙動を示す可能性がある。そこで、本研究では貯蔵タンパク質単独と豆乳中での貯蔵タンパク質の加熱による変化を会合体形成の観点から比較分析した。
大豆種子から分離大豆タンパク質(SPI)と豆乳を調製した。タンパク質濃度を2%にそろえ、沸騰水中でそれぞれ0〜30分間加熱処理した。ショ糖密度勾配遠心(SDG)でタンパク質の分子量分布を測定したところ、SPI、豆乳ともに加熱によるタンパク質の高分子化が確認された。しかし、沈殿したタンパク質量は豆乳がSPIの2倍以上あった。透過型電子顕微鏡ではこれら沈殿画分にネットワーク構造が観察された。また、SH基封鎖剤であるN-Ethylmaleimide(NEM)添加の影響も調べた。SPI、豆乳ともに新たなSS結合の形成の抑制が確認され、枝分かれの少ない直鎖状の会合体が観察された。しかし、豆乳ではSPIよりも高分子量の会合体が多く形成されていた。
○宮崎耕平,竹中実里,中村卓(明治大院・農化)
現在までに大豆タンパク質の加熱ゲル化について多くの研究がなされてきたが、それらはすべて溶液中での現象を追ったものであり、大豆種子中でのタンパク質の加熱による変化については明らかにされていない。本研究では溶液中での変化と比較しながら、加熱による種子中での貯蔵タンパク質の挙動について調べた。
5℃、24時間で浸漬し、種皮と胚芽を取り除いたツルノコ大豆種子を沸騰水中で0min〜30min加熱した。また、脱脂・抽出分離した10%大豆分離タンパク質(SPI)溶液をキャピラリー管に入れ沸騰水で加熱した。加熱種子と形成されたSPIゲルを63mM Tris-HCl buffer (pH 7.8) 中で破砕、抽出・遠心分離し、タンパク質の抽出率をbradford法、組成変化をNative-PAGEおよびSDS-PAGEで調べた。また、種子細胞中のプロテインボディの加熱による変化を共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)と透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。
加熱種子、SPIゲルともに加熱時間の増加に伴いタンパク質抽出率が著しく減少した。また、抽出bufferに還元剤の2-mercaptoethanolを添加した場合では、加熱種子の抽出率は未添加bufferの場合と同様に減少したがSPIゲルでは抽出率は減少しなかった。抽出されたタンパク質の組成変化を調べた結果、Native-PAGEでは種子とSPIともに高分子成分がみられたが、両者の間でグリシニン、β-コングリシニンの変性、解離の加熱時間による差があった。また、SDS-PAGEでは加熱種子中で新たなバンドもみられたが、加熱種子とSPIゲルでサブユニット組成に大きな違いはなかった。CLSM、TEMによる顕微鏡観察ではタンパク質が種子細胞中のプロテインボディから細胞質へ溶出し、脂質と混ざり合う様子がみられた。