2005年8月 日本食品科学工学会第52回大会(札幌)

 ツェインコーティング澱粉の加熱処理による改質

○久保田 篤,中村 卓(明治大農・農化)

【目的】

澱粉に各種加工を施し、本来の構造や物性の一部を改質した澱粉を加工澱粉という。現在ある加工澱粉のほとんどは化学薬品処理で製造されており、安全性が懸念される。またこれらの加工澱粉はスラリー湿式反応で製造されており廃水が出るなど環境面の問題も挙げられる。前回の発表でトウモロコシ由来のタンパク質であるツェインを用いた澱粉の改質について報告した。澱粉粒表面をツェインでコーティングすることで粒表面に不溶性の構造物を形成させ、それにより糊化時の膨潤を抑制させた(1)。今回は、このツェイン‐コーティング澱粉を加熱処理した際の影響について報告する。

【方法及び結果】

タピオカ澱粉に80%エタノールに溶解したツェインを流体運動型粒子加工装置(AGM-MINI-PJ、ホソカワミクロン社製)を用いて噴霧し、コーティング澱粉を作製した。その後、このツェイン‐コーティング澱粉を180℃で乾式加熱処理を施した。加熱処理前のツェイン‐コーティング澱粉に比べ、加熱処理を施したツェイン‐コーティング澱粉は、さらに乳化能が増加した。また、加熱処理により糊化特性も変化した。さらに、加熱処理したツェイン‐コーティング澱粉の表面構造を各種顕微鏡で観察した結果についても報告する。
(1) 久保田ら:日本食品科学工学会第51回大会講演集 p.40(2004)

2004年9月 日本食品科学工学会第51回大会(岩手)

 ツェインによるでん粉の改質
〜Modification of starch granules with zein〜

○久保田 篤,中村 卓(明治大農・農化)

【目的】

膨潤抑制を目的とした加工でん粉は種々あるが、そのほとんどが化学薬品処理で製造されており、安全性が懸念される。またこれらの加工でん粉はスラリー湿式反応で製造されており廃水が出るなど環境面の問題も挙げられる。以前、ジェランガムによるでん粉の改質について報告した。(1)(2)今回はトウモロコシ由来のタンパク質であるツェインを用いたでん粉の改質について報告する。ツェイン溶液は乾燥すると疎水性の皮膜を作ることが知られている。でん粉粒をツェインでコーティングすることで粒表面を不溶化させ、それにより糊化時の膨潤を抑制させることを目的とした。また乾式に近い粉体加工方法でコーティングでん粉を作製した。

【方法及び結果】

ツェインを80%エタノールに溶解し、流体運動型粒子加工装置を用いてコーティングでん粉を作製した。このコーティングでん粉の膨潤度を遠心沈殿法により測定したところツェインの添加量が多いほど膨潤を抑制した。また可溶性糖分の溶出をフェノール・硫酸法にて測定したところ、未処理及びエタノールのみ添加したでん粉に比べツェインをコーティングしたでん粉がもっとも溶出を抑制した。また、作製したコーティングでん粉の表面構造を顕微鏡で観察した結果についても報告する。

(1) 久保田ら:日本食品科学工学会第50回大会講演集 p.86(2003)

(2) 久保田ら:日本農芸化学会2004年度大会講演要旨集 p.65

2004年3月 日本農芸化学会本大会(広島)

ジェランガム表面コーティングでん粉の作製及び特性
〜Preparation and characterization of gellan gum-coated starch〜

○久保田 篤,小林 功※,後藤 勝※,中村 卓(明治大農・農化,潟zーネンコーポレーション※)

【目的】

現在ある加工でん粉のほとんどは化学薬品処理が行われている。そのため製品への化学薬品の残留が懸念される。また、これらの加工でん粉はスラリー湿式反応で製造されており廃水が出るなど環境面の問題があげられる。そこで、食品素材であるジェランガムをでん粉粒表面にコーティングし、でん粉を改質することを目的とした。さらに、加工方法として乾式に近い物理的手法を用いた。以前は固定容器型底部撹拌式混合機による方法1)について報告したが、今回は流体運動型粒子加工装置を用いてでん粉を改質する方法について報告する。

【方法及び結果】

でん粉粒子にジェランガム溶液を噴霧コーティングし、その後Ca溶液を噴霧し不溶固定化処理を施した。その後乾燥しコーティングでん粉とした。この膨潤度を遠心沈殿法で測定したところ、コントロール群に比べジェランガムとCaを添加したでん粉が最も膨潤を抑制した。可溶性糖分の溶出についてもジェランガムとCaを添加したでん粉が最も溶出を抑制した。また原子間力顕微鏡で、でん粉粒子の表面構造を観察した結果についても報告する。

1)久保田ら:日本食品科学工学会第50回大会講演集 p.86(2003)

2003年9月 日本食品科学工学会第50回大会(東京)

ジェランガムによるでん粉の改質

○久保田 篤,小林 功※,後藤 勝※,中村 卓(明治大農・農化,(株)ホーネンコーポレーション※)

【目的】

でん粉に各種加工を施し、本来の構造や物性の一部を改質したでん粉を加工でん粉という。その中でも低粘度化を目的とした加工でん粉は種々あるが、食品素材を用いてでん粉を改質し、低粘度化を実現させた例はほとんどない。一方、ジェランガムはカチオンの存在下で強固なゲルを形成することが知られている。そこで本研究ではジェランガムで、でん粉粒表面をコーティングし、でん粉粒の糊化膨潤によって起こる粘度増加を抑制することを目的とした。

【方法】

ジェランガム溶液をでん粉に添加混合し、その後乳酸カルシウム溶液を添加混合し乾燥、粉砕しサンプルとした。この一連の操作は粉体状態で行なった。固形分濃度8%(W/W)のでん粉懸濁液を作成し、Rapid visco analyzer(RVA、New port Scientific Pty. Ltd.)を使用し、でん粉懸濁液の糊化粘度曲線を得た。さらに、1%(W/W)のでん粉懸濁液を作成し、これを100℃で10分間加熱糊化させ、その後遠心分離し膨潤度を測定した。

【結果】

ジェランガムと乳酸カルシウムを添加し、加工したでん粉は、未加工と比べてRVA測定のピーク粘度が低下した。また、ジェランガムのみ、乳酸カルシウムのみを添加した場合と比べてもピーク粘度が低下した。また、膨潤度も、ジェランガムと乳酸カルシウムを添加し加工したでん粉は、未加工でん粉と比べて小さな値を示した。以上の結果から、乳酸カルシウム存在下でジェランガムによりでん粉が改質されたと考えられる。また、加工したでん粉を各種顕微鏡により観察した結果についても報告する。