2019年8月 日本食品科学工学会(北海道大:札幌)

シフォンケーキの口どけ食感へのホスホリパーゼA2添加の影響

(明治大農・農化1、明治大院農・農化2、ナガセケムテックス3) ○小松原舞1,今井美穂1,片岡明日香2,塩尻正俊3,中村卓1

【目的】

シフォンケーキは卵・植物油を含み、卵白を泡立てたメレンゲの気泡によって膨らむのが特徴的なケーキである。シフォンケーキのおいしさに重要な要素の一つに口どけがある。この口どけは食品添加物である乳化剤の添加により向上させることが出来る。しかし、近年は食品の安全への関心が高まっており、食品添加物として乳化剤が表示された食品を避ける傾向がある。そこで乳化剤の代わりに安全性が高く、乳化力を向上させる酵素としてホスホリパーゼA2(PLA2)が添加される。しかし、この酵素がシフォンケーキの口どけ食感にどのような影響を与えるかは明らかではない。そこで、本研究ではこの酵素を添加したシフォンケーキを試作し、物性測定・構造観察・官能評価をすることで、口どけ食感が変化するメカニズムを明らかにすることを目的とした。

【方法】

PLA2添加・無添加の2種類のシフォンケーキを作製した。物性測定では、動的粘弾性試験によりバッターの粘度を調べた。構造観察ではX線CTによる気泡分布、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)による成分分布、走査型電子顕微鏡(SEM)による成分特定を行った。さらにバッターの比重測定、ケーキの官能評価を行った。また、リゾレシチンの定量によりリゾ化率を求めた。

【結果】

焼成後のケーキの高さはPLA2添加>無添加であった。官能評価の結果、口どけの良さはPLA2添加>無添加であった。リゾ化率はPLA2添加>無添加であった。バッターの粘度はPLA2添加>無添加であった。比重はPLA2添加<無添加であった。さらに、バッターのCLSM観察、ケーキのSEM観察の結果、油滴粒子の数はPLA2添加>無添加、油滴粒子の大きさはPLA2添加<無添加であった。以上の結果より、酵素添加によりリゾレシチンが増加、バッターの油滴粒子が小さく数が多くなり、粘度が増加し、気泡保持能が向上したため、焼成時に膨らんだと考えられた。さらに、圧縮時のケーキの物性測定と構造観察の結果についても報告し、口どけが良くなるメカニズムについても考察する。