2013年3月 日本農芸化学会本大会(仙台;東北大)

高温乾燥によるパスタの食感の変化には澱粉自体の変化も寄与する

○小林 佳祐、中村 卓 (明治大院農・農化)

【目的】

パスタにおいて食感は美味しさを決める重要な要因である。パスタはデュラムセモリナに水を加え、混合・混練、押出し成型、乾燥過程を経て製造される。なかでも乾燥過程ではパスタのひび割れを防ぐために加熱温度・相対湿度をコントロールした乾燥が行われており、その乾燥条件の違いでパスタの食感は大きく異なると言われている。この乾燥過程ではタンパク質が高分子量化することが明らかとされている。しかし、乾燥過程は主成分である澱粉についても物理的な加工をしている場だと考えられるが、その変化についていまだ明らかとなっていない。今までの実験から高湿加熱処理(パスタ乾燥条件)することにより澱粉の糊化特性が変化すること1)また、そのメカニズムについて明らかにしてきた2)。しかしながら、高湿加熱処理によって生じた糊化特性の変化がどのように食感に影響を与えるかはいまだ明らかとなっていない。そこで本実験では茹でパスタをモデルとした澱粉ゲルを作成し、澱粉ゲルの破断物性と食感への高湿加熱処理の影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

デュラムセモリナからマーチン法を用いて澱粉を単離した。単離したデュラム澱粉(DS)の水分含量を30%に調整し、加熱温度(80〜90℃)と相対湿度(70〜90%)の条件を組み合わせて恒温恒湿で加熱処理した。この処理澱粉を0.15%キサンタンガム溶液に固形分濃度30%となるように混合し、澱粉懸濁液を作製した。作製した懸濁液を100℃で10分間加熱、0℃で10分間冷却し、澱粉ゲルを作製した。このゲルをクリープメータにて破断強度試験、テクスチャー試験をおこなった。さらに、順位法を用いた官能評価をおこなった。

【結果】

茹でパスタをモデルとした澱粉ゲルについて破断強度試験の立ち上がり荷重、もろさ荷重は未処理に比べて、高湿加熱処理することで増加した。また、加熱温度・相対湿度が高いほど立ち上がり荷重、もろさ荷重が増加する傾向が見られた。テクスチャー試験の付着性において未処理よりも高湿加熱処理することで付着性が減少した。また、加熱温度・相対湿度が高いほど付着性が減少した。官能評価では、かたさ、歯切れ、付着性について評価した。未処理に比べ高湿加熱処理したゲルのかたさ、歯切れのスコアが高く、付着性のスコアが低くなった。また、加熱温度・相対湿度が高いサンプルほどかたさ、歯切れのスコアが高く、付着性のスコアが低くなった。官能評価でのかたさは破断強度試験の立ち上がり荷重、歯切れはもろさ荷重、付着性はテクスチャー試験の付着性と相関がみられた。これらの結果よりパスタの高温高湿乾燥過程でも同様に澱粉粒の膨潤が抑制され、その変化はパスタの食感をサックリとしたものにしている可能性が示唆された。 1)第58回食品科学工学会大会要旨集p.64(2011) 2)日本農芸化学会2012年度大会

2012年3月 日本農芸化学会本大会(京都女子大)

地下澱粉の糊化特性への高湿加熱処理(パスタ乾燥条件)の影響

○小林 佳祐 中村卓

【目的】

パスタにおいて食感は美味しさを決める重要な要因である。パスタはデュラムセモリナ(DS)に水を加え、混合・混練、押出し成型、乾燥過程を経て製造される。なかでも乾燥過程ではパスタのひび割れを防ぐために加熱温度・相対湿度をコントロールした乾燥が行われており、その乾燥条件の違いでパスタの食感は大きく異なると言われている。この乾燥過程では主成分である澱粉について高温・高湿で物理的な加工をしている場だと考えられるが、その変化についてはいまだ明らかとなっていない。各種小麦澱粉について高湿加熱処理(パスタ乾燥条件)すると糊化特性が変化することを明らかとした1)。しかしながら、糊化特性が変化する原因については明らかにすることが出来なかった。そこで本実験では地下澱粉に同様の高湿加熱処理をすることで地下澱粉の糊化特性が変化するか、また高湿加熱処理によりどのようなメカニズムで糊化特性が変化しているのかを明らかにすることとした。

【方法】

デュラムセモリナ(DS)からマーチン法を用いて澱粉を単離した。単離したDS澱粉と馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉の水分含量を30%に調整し、加熱温度(80〜90℃)と相対湿度(70〜90%)の条件を組み合わせて恒温恒湿で加熱処理した。得られた処理澱粉について糊化特性をRapid Visco Analyzer(RVA)、示差走査熱量計(DSC)で測定し、結晶構造をX線回折装置で測定した。また、澱粉の表面微細構造について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。

【結果】

RVAで測定した最高粘度は全てのサンプルで未処理に比べ高湿加熱処理することで減少した。また、加熱温度・相対湿度が高いほど最高粘度が減少した。DSCで測定した糊化ピーク温度は全てのサンプルで未処理に比べ高湿加熱処理することで上昇した。また、加熱温度・相対湿度が高いほど糊化ピーク温度が上昇した。融解エンタルピー(僣)は全てのサンプルで未処理に比べ高湿加熱処理することで減少した。また、加熱温度・相対湿度が高いほど僣が減少した。AFMでDS澱粉の表面微細構造を観察すると未処理サンプルでは5〜10nm程度の凹凸が観察された。この凹凸はBlocklet構造だと考えられる。しかしながら、高湿加熱処理すると表面の凹凸が消失した。高湿加熱処理により僣が減少したことから澱粉粒表面付近の結晶が融解したため、表面のBlocklet構造が消失したと考えられる。X線回折によって測定した結晶構造は馬鈴薯澱粉の未処理ではBタイプの結晶構造をとっていたのに対し、高湿加熱処理するとAタイプの結晶構造に近づいた。この変化は湿熱処理と同様の変化であった。以上の結果より地下澱粉を高湿加熱処理すると糊化特性が変化することが明らかとなった。また、高湿加熱処理することにより澱粉には湿熱処理と同様の変化とさらに部分糊化が起こっていると考えられる。これらの結果よりパスタ乾燥過程でもパスタ中の澱粉に湿熱処理と部分糊化の物理的加工がおこなわれていると考えられる。 1) 第58回食品科学工学会大会要旨集p.64(2011)

2011年9月 日本食品科学工学会本大会(東北大)

各種小麦澱粉の糊化特性への高湿加熱処理(パスタ乾燥条件)の影響

○小林 佳祐、猶塚 雄太、中村 卓

【目的】

パスタにおいて食感は美味しさを決める重要な要因である。パスタはデュラムセモリナ(DS)に水を加え、混合・混練、押出し成型、乾燥過程を経て製造される。なかでも乾燥過程ではパスタのひび割れを防ぐために加熱温度・相対湿度をコントロールした乾燥が行われており、その乾燥条件の違いでパスタの食感は大きく異なると言われている。乾燥過程では小麦粉中のタンパク質が重合することが明らかにされているが、主成分である澱粉の変化については明らかではない。そこで本研究では澱粉に着目し、パスタ乾燥過程をモデルとした高湿加熱処理による澱粉糊化特性の変化を明らかにすること、さらに各種小麦澱粉を用いることによりDS澱粉と他用途小麦澱粉の高湿加熱処理による影響の差を明らかにすることを目的とした。

【方法】

デュラムセモリナ(DS)、薄力粉(S)、中力粉(M)、強力粉(H)からマーチン法を用いて澱粉を単離した。単離澱粉の水分含量を30%に調整し、加熱温度(80〜90℃)と相対湿度(70〜90%)の条件を組み合わせて恒温恒湿加熱処理した。得られた処理澱粉について糊化特性をRapid Visco Analyzer(RVA)、示差走査熱量計(DSC)で測定し、結晶化度をX線回折装置で測定した。表面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。

【結果】

高湿加熱処理することにより未処理と比べ全ての澱粉でRVAの最高粘度、X線回折の総結晶化度が減少した。また、加熱温度・相対湿度が高くなるほど最高粘度・総結晶化度が減少した。DS澱粉は他の小麦澱粉に比べ高湿加熱処理しても最高粘度・総結晶化度が低下しにくいことが明らかとなった。また、全ての澱粉で総結晶化度が減少するほど最高粘度が低下する相関がみられた。以上のように澱粉を高湿加熱処理することにより糊化特性が変化することが明らかとなった。これらの結果はパスタ乾燥過程で澱粉の糊化特性が変化する可能性を示している。さらにDS澱粉は他の小麦澱粉と比べパスタ乾燥過程で糊化特性の変化に特徴がある可能性が示唆された。

2011年3月 日本農芸化学会本大会(京都女子大)

デュラム小麦澱粉の糊化特性への高湿加熱処理(パスタ乾燥条件)の影響

○小林 佳祐、猶塚 雄太、中村 卓(明治大農・農化、1明治大院農・農化)

【目的】

【目的】パスタにおいて食感は美味しさを決める重要な要因であり、乾燥過程での温度、相対湿度の違いで大きく異なると言われている。乾燥過程でタンパク質が重合することが明らかにされているが、主成分である澱粉の変化については明らかではない。そこで本研究では澱粉に着目し、パスタ乾燥過程をモデルとした高湿加熱処理による澱粉糊化特性の変化を明らかにすることを目的とした。

【方法および結果】

デュラムセモリナから単離した澱粉を用いて、水分含量を調整し、相対湿度(70〜90%)と加熱温度(60〜90℃)を組み合わせ、恒温恒湿加熱処理した。得られた処理澱粉について糊化特性をRapid Visco Analyzer(RVA)、示差走査熱量計(DSC)で測定し、結晶化度をX線回折装置で測定した。その結果、RVAの最高粘度は湿度80%、温度85℃以上の加熱で大きく減少した。また、X線回折の総結晶化度は加熱温度・相対湿度が高いほど減少した。以上のように、澱粉を高湿加熱処理することにより、糊化特性が変化することが明らかとなった。これらの結果はパスタ乾燥過程で澱粉の糊化特性が変化する可能性を示している。