2013年8月 日本食品科学工学会本大会(実践女子大)
ゼラチン/マルトデキストリン共存系カプセルの構造と機能特性の相関
○木下友花1,齋藤健太2,釜口良誠3,水谷勝史3,中村卓1 (1明治大農・農化,2明治大院農・農化, 3森下仁丹(株))
【目的】
食用カプセルに求められる機能特性として、品質保持、風味(フレーバー)、食感がある。これら機能特性にはシェル(皮膜)の構造が大きく関係していると考えられる。シェル形成成分にはタンパク質と多糖類がある。これらを混合すると一般的に相分離構造を形成することが知られている。タンパク質としてゼラチン、多糖類としてマルトデキストリンを用いたゲルとフィルムの物性と相分離構造の相関について報告した1)。デキストロース当量(DE)が異なるマルトデキストリンを用いると分散相サイズの異なる4種類のゲル及びフィルム構造(均質・ミクロ相分離・セミマクロ相分離・マクロ相分離)を形成することを明らかにした。そこで本研究では、ゼラチンとDEの異なるマルトデキストリンの共存カプセルを用い、カプセルの相分離構造とカプセルが持つ機能特性の相関を明らかにすることを目的とした。
【方法】
ゼラチン濃度20%、マルトデキストリン濃度10%(DE4・11・16・18)、グリセリン4%配合で液中滴下法にて作製したシームレスカプセルを乾燥して用いた。各分析前にカプセルを25℃・相対湿度50%で12時間以上処理し、水分を調整した。調整したカプセルについて破断強度試験、溶解性試験、HS-SPME-GC法によるアロマリリース測定を行った。更に共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて微細構造を観察した。また、ヒトによる官能評価と機器測定による機能特性の関連性を検討した。
【結果】
CLSM・SEM・TEM観察の結果より、カプセル構造においてDEが低くなる程、マルトデキストリン分散相の直径が大きくなる傾向を示した。破断強度試験の結果、分散相を形成しない均質構造のカプセルと比較して、分散相の直径が大きい程、低荷重・低歪率で破断した。また、溶解性は分散相の直径が大きい程、低くなる傾向がみられた。アロマリリースについては、分散相の直径が大きい程、リリース量が多くなる傾向がみられた。 1)日本農芸化学会2013年度大会講演 (2A12a01)