祝企業賞受賞 2014年8月　日本食品科学工学会（福岡;中村学園大）

市販プレーンヨーグルトの食感を構造破壊過程から解析する

○井上慶太1，上川理絵1，中村卓1，三久保誠人2，髙井めぐみ2，越智大輔2，堀内啓史2，久保田康史2（1明治大院農・農化，2 (株)明治）

【目的】

食感は食品のおいしさを決定する重要な要因である。食感は咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が知覚・認知されることにより表現される。この破壊過程は咀嚼部位（歯／舌）と時間軸（ひと噛み目／それ以降）の組み合わせからなる。しかし、咀嚼過程において食品構造がどのように破壊されるのかは明らかとなっていない。そこで、食感に関する新規の解析手法の開発が必要とされている。本研究では、舌と口蓋によって構造が破壊されるプレーンヨーグルトの咀嚼過程に注目し、咀嚼をイメージした機器による構造破壊過程における力学特性と構造状態の変化から食感を解析することを目的とした。

【方法】

量販店で購入した市販プレーンヨーグルト4種類(a)、(b)、(c)、(d)を試料とした。各試料の食感を特徴付けるために用語選定、官能評価を行った。力学特性測定として、クリープメーターを用いた破断強度試験とレオメーターを用いた動的粘弾性測定を行った。微細構造観察として、未破壊および破壊途中のヨーグルトを走査型電子顕微鏡（SEM）で観察した。観察された成分（タンパク質・脂質・多糖体・乳酸菌）を特定するために、無菌・無脂肪のヨーグルトも観察した。

【結果】

官能評価結果の主成分分析より、ヨーグルト4種類の食感の違いが明らかとなった。破断強度試験での応力‐歪曲線より、(a)の破断応力が最も低かった。未破壊ヨーグルトの動的粘弾性測定（歪スイープ）により、(a)のみが非線形領域における急激な粘度低下を示した。また、(a)は撹拌破壊後も低粘度であり、他の3種類のヨーグルトとの力学特性の違いが明らかとなった。微細構造観察より、各成分の分布が明らかとなったが、ヨーグルト4種類の未破壊構造に明確な差は見られなかった。破壊過程での構造の変化についても報告し、市販プレーンヨーグルトの食感と破壊物性・構造の関係について考察する。

祝企業賞受賞 2013年8月　日本食品科学工学会本大会（実践女子大）

市販プロセスチーズの食感を構造破壊過程から解析する

○井上慶太，中村卓 (明治大院農・農化)

【目的】
プロセスチーズは原料配合や製造条件を変えることにより、いろいろな食感・風味・二次加工特性（熱溶融性や糸曳き性など）を持つ製品が作られている。これらの様々な特性のうち、食感は食品のおいしさを決定する重要な要因である。食感は口腔内での咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が認知されることにより表現される。しかし、食品構造がどのように破壊されるのかは明らかになっていない。そこで本研究では、プロセスチーズの食感を構造破壊過程から解析することを目的とした。

【方法】
量販店で購入した市販プロセスチーズ15種類について、クリープメータを用いて楔形治具による破断強度試験を行い、得られた荷重-歪曲線のパターンを分類した。そこから4種類を選び、未破壊および破壊途中のプロセスチーズの微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。また、7段階カテゴリー尺度を用いた採点法による官能評価を行なった。さらに、官能評価について、分散分析、主成分分析を行なった。

【結果】
荷重-歪曲線の結果から、市販プロセスチーズは以下の4つのグループに分類された。(A)低歪率での荷重増加後、歪率が増加しても荷重がほぼ一定に推移するもの、(B)立ち上がり荷重が低く、また高歪率において荷重低下を生じないもの、(C)低歪率での2段階の荷重増加後、破断後に荷重低下するもの、(D)立ち上がり荷重が高く、破断後に2段階の荷重低下を生じるもの。各グループから1種類ずつ選び、さらに分析した。破壊構造のSEM観察より、治具先端や試料台といった接触面に近いところで脂肪球が変形していた。また、カゼインサブミセルのネットワーク構造が引きちぎられて亀裂が発生していた。官能評価の結果より、4つのグループの食感の違いがみられた。さらに、プロセスチーズの食感と物性・構造の関係について考察する。

2013年3月　日本農芸化学会本大会（仙台；東北大）

プロセスチーズの破壊物性と破壊構造の解析

○井上 慶太1、森口 奈津美2、中村 卓1 (1明治大農・農化、2明治大院農・農化)

【目的】

プロセスチーズは一般的に複数のナチュラルチーズと乳化促進のための溶融塩などの原料を混合・加熱溶融・乳化・冷却して製造される。原料配合・製造条件を変えることにより、いろいろな食感・風味・二次加工特性（熱溶融性や糸曳き性など）を持つ製品が作られている。これらの様々な特性のうち、食感は食品のおいしさを決定する重要な要因である。食感は口腔内での咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が認知されることにより表現される。そのため、この力学特性と構造状態がどのように変化しているのかを明らかにすることは重要である。そこで、本研究では、市販プロセスチーズを用いて、咀嚼による破壊をイメージした破壊物性測定・破壊構造観察を行い、プロセスチーズの破壊過程を解析することを目的とした。

【方法】

量販店で購入した15種類の市販プロセスチーズについて、クリープメータを用いて楔形治具による破断強度試験を行い、得られた荷重-歪曲線のパターンを分類した。そこから、さらに4種類を選び、デジタルカメラを用いて破断強度試験時のプロセスチーズを側面から動画撮影し、巨視的観察を行った。また、破断強度試験前後のプロセスチーズの微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。

【結果】

破断強度試験で得られた荷重-歪曲線の結果から、市販プロセスチーズは以下の4つのグループに分類された。(A)低歪率での荷重増加後、歪率が増加しても荷重がほぼ一定に推移するもの(B)立ち上がり荷重が低く、また高歪率において荷重低下を生じないもの(C)低歪率での2段階の荷重増加後、破断後に荷重低下するもの(D)立ち上がり荷重が高く、破断後に2段階の荷重低下を生じるもの。各グループから1種類ずつ選び、さらに構造観察を行った。動画撮影での巨視的観察より、低歪率において、種類間の形状変化の違いは見られなかった。しかし、歪率70%において、(A)と(B)は亀裂を生じないが、(C)と(D)では側面に亀裂が発生、伝播した。この亀裂が入ったプロセスチーズでは、亀裂の発生と荷重-歪曲線での荷重低下に相関が見られた。未変形構造のSEM観察より、脂肪球サイズ・脂肪球分布・カゼインサブミセルの凝集構造に4種類のプロセスチーズの間で違いがみられた。破壊過程でのこれら構造の変化についても報告し、プロセスチーズの破壊物性と破壊構造の関係について考察する。