2016年8月 日本食品科学工学会(名城大学)

時間軸を取り入れた官能評価による市販ヨーグルトの「クリーミー」食感の見える化

○風間紫穏1、日下舞2、高井めぐみ3、市村武文3、中村卓1(1明治大農・農化、2明治大院農・農化、3(株)明治)

【目的】

ヨーグルトのおいしさの表現として“クリーミー”がある。このクリーミーは「風味」と「食感」の両面から複合的に認知される。さらに、クリーミー食感は知覚レベルの力学的要素と幾何学的要素の両方から総合的に評価される。このクリーミー食感と破壊による構造・物性の変化が相関していることを前回報告した1)。今回は、 “クリーミー食感”とその基本構成食感(知覚食感)について時間軸を取り入れた官能評価を行い、さらに破壊に着目した力学特性・微細構造と相関づけることで、この感性的な食感表現を咀嚼過程の時間軸を踏まえて見える化することを目的とした。

【方法】

市販ハードタイプヨーグルト3種類(A)、(B)、(C)を試料とした。官能評価において、まずQDA法では咀嚼前半と後半の知覚食感を想定した7項目とクリーミーの計8項目について7段階で採点した。さらに、時間軸を組み込んだTemporal Dominance of Sensations(TDS)法、Time Intensity(TI)法でクリーミーを構成すると考えられる力学的・幾何学的な知覚食感を評価した。また、咀嚼破壊をモデルとした破壊物性測定と破壊構造観察を行った。

【結果】

官能評価の結果、QDA法で (A)が有意にクリーミーな食感であった。また主成分分析の結果、“クリーミー”は第1主成分として「舌触りのなめらかさ」と正の相関があり、第2主成分として「粘り」と正の相関があった。TI法では一噛み目以降にクリーミーが高くなった。これは咀嚼後半の知覚食感を想定したものである「舌触りのなめらかさ」と「粘り」が重要であることと一致した。また、TDS法では(A)で早期に「均一さ」を感じる人の割合が有意に高かった。これは構造観察において、破壊による(A)の破片が最も細かかったことと相関があった。さらに、破壊過程での物性変化と破壊ヨーグルトの微細構造を報告し、「クリーミー食感」との関係について考察する。 1)日下ら、日本食品科学工学会 第62回大会講演集、p.73(2015)2Ap5