2010年9月 日本食品科学工学会本大会(東京農大)

各種市販パスタの調理過程における 構造と物性の変化

○川田可南子・天水智子・檜貝雄哉・中村卓

【目的】

パスタにおいて食感は、おいしさを決める重要な要因である。市販パスタでは、原材料や製造方法が様々であり、その違いにより食感にも違いが生じる。昨年の大会では、市販10種のパスタの構造と物性を分析し、4つのグループに分けられることを明らかにした(日本食品科学工学会第56回大会要旨集p.115(2009))。一方、製品内において、調理では茹で時間の経過と共に吸水量が増加し、食感も変化する。そしてその食感の変化は、市販製品間でどのように異なるかはまだ明らかになっていない。そこで本研究では、調理に着目し、茹で時間の経過によって、パスタの構造や物性がどのように変化するのか、さらに、市販製品間でどのように異なるのか明らかにすることを目的とした。

【方法】

市販ロングパスタ10種の中から特徴のあるパスタ4種を選び、以下分析した。まず、水分吸収量(茹で後重量/茹で前重量)の分析をするため、パスタを0.5%NaCl溶液で茹で、1〜14分の各1分毎にパスタを取り出し、重量を測定した。同時に、長さと直径も測定した。その結果から、水分吸収量の値が2.1, 2.3, 2.5, 2.7になる時間を決定した。それらパスタについてクリープメーターにて破断試験を行い、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)によりパスタ縦断面の構造を連続的に観察した。

【結果】

全てのパスタにおいて水分吸収量は時間と共に増加した。しかし直径は、5分までは増加し、その後変化は見られなかった。長さは、5分までは変化は見られず、その後増加した。一方、破断試験においては、全てのパスタで水分吸収量が増加するにつれて破断点が推移し、その推移は4種のパスタで異なっていた。CLSM観察においては、澱粉粒の形が、中心部分・中間部分・端部分で異なっており、水分吸収量が増加するにつれてそれぞれの部分の比率が変化した。また、4種のパスタで各部分の比率の推移が異なっていた。この厚さの比率と破断点の推移に関連が見られ、端部分の厚さの比率が増加すると破断歪率も増加し、中心部分の厚さの比率が減少すると破断荷重も減少することが明らかとなった。

2009年9月 日本食品科学工学会本大会(名古屋)

各種市販パスタの破断特性と澱粉糊化特性へのグルテン構造の影響

○川田可南子・高根理美・足立麻理子・小野純・中村卓

【目的】

パスタにおいて食感はおいしさの重要な要因である。麺の食感には、タンパク質のネットワーク形成と澱粉の糊化が関係していることが明らかになっている。特にパスタにおいて、グルテンタンパク質のネットワーク構造が食感に大きく寄与していると考えられてきた。最近、パスタの澱粉も食感に大きく関わっていることが報告されている。しかし、両者がどのように影響を及ぼしあい、食感に関係しているのかはあまり明らかになっていない。そこで、本研究では、各種市販パスタの澱粉とタンパク質について分析し、澱粉糊化特性へのグルテン構造の影響と、またそれによる茹でパスタの破断特性への影響について解析することを目的とした。

【方法】

直径1.6mm〜1.7mmの市販ロングパスタ10種を液体窒素中で凍結粉砕機にて粉末にし、デュラムセモリナ粉(DS)を対象として、以下分析した。澱粉については、Rapid Visco Analyser(RVA)にて糊化特性を、X線回折装置にて結晶化度を測定した。Proteinase処理によってタンパク質を分解したものについても、同様にRVAにて測定した。タンパク質については、重合度をSDS Bufferによるタンパク質抽出で評価した。さらに、SDS-PAGEでタンパク質のサブユニット組成を分析した。破断特性については、市販パスタ10種の最適茹で時間(芯が見えなくなった時間)を決定し、クリープメータにて破断試験を行った。

【結果】

糊化粘度測定については、最高粘度・ブレークダウン共に大きい2種と、その他8種の2グループに分かれた。Proteinase処理後は、サンプル間で大きな差はなかった。還元剤(Mercaptoethanol:ME)有無の2種類(+ME,−ME)のSDS Bufferで抽出したところ、−MEでは、最高粘度・ブレークダウン共に大きい2種において抽出率が高かった。さらにこの2種では、SDS-PAGEで高分子グルテニンサブユニットのバンドが観察された。以上の結果より、市販パスタ中の澱粉の糊化にはグルテン構造が影響しており、グルテンネットワークの違いによって澱粉糊化特性が異なることが明らかになった。また、破断特性との関係についても報告する。