2012年8月 日本食品科学工学会本大会(札幌;藤女子大)

加工条件の異なるパスタの構造と破断物性への茹で後放置温度の影響

○佐藤 純1,中村 卓 1

【目的】

パスタにおいて食感は、おいしさを決める重要な要因である。パスタはデュラムセモリナ粉に水を加えて混合・混練し、押出成型、乾燥工程を経て製造される。押出成型の際にパスタが押し出される先端部分をダイといい、その材質がテフロン・ブロンズの違いによって調理特性が異なるとされている。また、乾燥工程の条件(温度、湿度)はパスタの食感に大きな影響を与える。これまでの研究で、茹でたテフロン、ブロンズダイ押出パスタの両方で高温乾燥パスタにおいて低温乾燥パスタよりも破断強度試験でのもろさ荷重が大きくなった1)。さらに50℃で放置し、水分勾配の消失した高温乾燥パスタにおいても、もろさ荷重の大きさは変わらなかった2)。本研究では、加工条件の異なるパスタを放置することによる水分勾配消失と、放置温度による澱粉老化が及ぼすパスタの構造と物性への影響を検討した。

【方法】

小型電動パスタマシン(マジカ)を用いて、デュラムセモリナを原料としたテフロンダイ(TD)/ブロンズダイ(BD)と乾燥温度85℃/55℃の組み合わせで4種類のパスタを作製した。茹で直後のパスタ、5℃中、50℃中で放置したパスタの破断強度試験をクリープメーターにて、それぞれのパスタの内部構造を共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を用いて観察した。

【結果】

破断強度試験において、50℃で放置し、水分勾配が消失したパスタは、TD85では茹で直後と破断荷重、もろさ荷重の大きさが変わらないのに対し、TD55では破断荷重は変わらないが、もろさ荷重は茹で直後よりも大きくなった。また、5℃で放置したTD85、TD55において、破断点が低荷重、低歪側へと移行し、もろさ荷重も大きくなった。また、それぞれのパスタを重量変化がないように再加熱すると、5℃で放置したパスタについては茹で直後のパスタと近い物性になるが、50℃で放置したパスタは、低歪率領域で荷重が低くなった。BDにおいても測定を行い、CLSMによる構造観察と合わせて報告する。 1)日本食品科学工学会第58回大会講演集 p. 99 2)日本農芸化学会12年度大会