2014年3月 日本農芸化学会本大会(川崎:明大)

かき玉形成への剪断の影響とオボムチンの関与

○伊與田 哲也1,中村 卓1,星野 貴2,滝田 裕二2,山口 祐輝2,五十部 誠一郎3 (1明治大院農・農化,2(株)フロンティアエンジニアリング,3日大・生産工学)

【目的】

液全卵は生卵に近い機能性を持ち、割卵の手間が省け簡便に扱える。そのため、工業的に広く利用されている。しかし、サルモネラ菌による食中毒が危惧されるため、加熱殺菌処理を行う必要がある。この加熱殺菌処理では、間接加熱殺菌処理とジュール加熱殺菌処理が用いられている。この内、ジュール加熱処理後の液全卵ではかき玉が形成されるのに対して、間接加熱処理では形成されない。その原因として、加熱方法の違いや細い間隙を通る事による剪断の影響が考えられる。これまでの研究にて、加熱の均一性と昇温速度の違いによる過加熱が影響する事を明らかにした。 また、強い剪断を掛けた液全卵ではかき玉が形成されない事を示した。そして、前回大会にて、かき玉形成の要因として卵白の寄与が大きい事を報告し、かき玉の凝集体部分に高分子量オボムチンとオボトランスフェリンが多く存在する事を明らかにした。そこで本研究では、かき玉形成の要因を追求するために、卵白タンパク質成分の寄与を明らかにする事を目的とした。特にオボムチンに着目し、オボムチンゲルを分離して解析を行った。

【方法】

市販卵を割卵し、卵黄を除いて卵白のみを目開き850μmの篩に通し、Native液卵白サンプルとした。さらに、ホモジナイザーを用いて減圧状態でそれぞれ1500、4500、9000rpmで1分間攪拌した。これら4種類の液卵白サンプルについて動的粘弾性測定と、水への分散性について比較した。また、液卵白サンプルに塩溶液を加えて分離したオボムチンゲルについて、SDS-PAGEによりタンパク質成分の分析を行った。さらに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細構造観察を行った。

【結果】

液卵白の動的粘弾性測定について、剪断力を強くするに従い貯蔵弾性率(G′)と損失弾性率(G”)の直線領域の値が低下した。また、ゲル化点における歪率では剪断力が強くなるに連れて有意に低下した。水への分散性において、Nativeと1500rpmの液卵白ではまとまりながら直線的に落下した。4500rpmではやや拡散しながら落下する様子が観察され、9000rpmでは水に投入された直後から大きく拡散する様子が観察された。したがって、液卵に剪断を加える事で粘弾性が低下し、それにより分散性が増加し、かき玉が形成されなくなる事が示唆された。さらに、剪断処理のオボムチンゲルへの影響について報告する。

2013年3月 日本農芸化学会本大会(仙台;東北大)

かき玉形成への剪断の影響と卵白の寄与

○伊與田 哲也1,中村 卓1,星野 貴2,滝田 裕二2,山口 祐輝2,五十部 誠一郎3 (1明治大院農・農化,2(株)フロンティアエンジニアリング,3(独)農研機構・食総研)

【目的】

液全卵は生卵に近い機能性を持ち、割卵の手間が省け、殻などの廃棄物もなく簡便に扱える。そのため、工業的に広く利用されている。しかし、サルモネラ菌による食中毒が危惧されるため、加熱殺菌処理を行う必要がある。この加熱殺菌処理では、間接加熱殺菌処理とジュール加熱殺菌処理が用いられている。この内、ジュール加熱処理後の液全卵ではかき玉が形成されるのに対して、間接加熱処理では形成されない。その原因として、加熱方法の違いや細い間隙を通る事による剪断の影響が考えられる。これまでの研究にて、加熱の均一性と昇温速度の違いによる過加熱が影響する事がわかった。 また、強い剪断を掛けた液全卵ではかき玉が形成されない事を明らかにした。しかし、その際の要因については分かっていない。そこで本研究ではかき玉形成への卵白、卵黄の寄与を明らかにする事を目的とした。

【方法】

市販卵を割卵し、卵白と卵黄を分けて目開き850μmの篩に通し、未処理液卵白・卵黄サンプルとした。これを250g測り取り、ホモジナイザーを用いて-0.08MPaの減圧状態でそれぞれ4500、9000rpmと回転数を変えて1分間攪拌した。これら液卵白・卵黄の各3種類を90℃の熱湯の中に流し入れてかき玉を作製した。この卵白かき玉について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細構造観察した。さらに、卵白かき玉と上清を目開き250μmの篩で分けて、それぞれ凍結乾燥した。これをSDS-PAGEで分析した。また、3種類の液卵白について粘度測定、加熱ゲルの破断強度試験を行った。

【結果】

液卵黄ではかき玉は形成されなかった。しかし、液卵白サンプルでは、未処理で衣状、4500rpmで針状のかき玉が形成され、9000rpmでは分散した様子が観察された。SEMによる微細構造観察では、剪断力を強めるにつれて粗い構造が見られた。液卵白の粘度測定については、剪断が強くなるにつれて粘度は低下し、攪拌抵抗性も低下する傾向にあった。加熱ゲルの破断強度試験では、剪断の影響は見られなかった。これらは液全卵時とほぼ同様の結果であった。卵白かき玉のSDS-PAGEでは、未処理と4500rpmにおいてオボトランスフェリン、オボムチンと思われるバンドが上清よりもかき玉により濃く現れた。以上の事から、かき玉形成には卵白の寄与が大きく、中でもオボトランスフェリン、オボムチンが関与している事が示唆された。

2012年8月 日本食品科学工学会本大会(札幌;藤女子大)

液全卵のかき玉形成へのホモジナイザー処理の影響

○伊與田哲也1,梅森賢1,中村卓1,星野 貴2, 滝田 裕二2,山口 祐輝2,五十部 誠一郎3(1明治大院農・農化,2(株)フロンティアエンジニアニング,3(独)農研機構・食総研)

【目的】

液全卵は生卵に近い機能性を持ち、割卵の手間が省け簡便に扱えるといった利点から工業的に広く利用されている。しかし、サルモネラ菌による食中毒が危惧されるため、加熱殺菌処理が行われる。この加熱殺菌処理において、従来のプレートなどを用いた間接加熱殺菌処理で得られた液全卵ではかき玉を形成する事が出来ない。その原因として、内側と外側での温度の差による過加熱と細い間隙を通る事によるシェアリングの影響が考えられる。前回大会で過加熱によるタンパク質の構造変化について明らかにした。そこで、本研究ではかき玉形成へのシェアリングの影響を明らかにする事を目的とし、ホモジナイザー処理(シェアリング)による液全卵のかき玉形成への影響を検討した。

【方法】

市販卵を割卵し、目開き850μmの篩に通した液全卵を試料として使用した。これを250g測り取り、ホモジナイザーを用いて-0.08MPaの減圧状態で0〜9000rpmの範囲で回転数を変えて1分間攪拌した。攪拌後のサンプルを90℃の熱湯の中に流し入れかき玉を作製し、篩を通しサイズを分けた。これらかき玉について、目視による巨視的観察、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた微細構造観察を行なった。

【結果】

かき玉の巨視的観察では、未処理で薄く広がった衣状、4500rpmで細い繊維がつながったかき玉が形成されたが、9000rpmでは針状に分散しかき玉は形成されなかった。SEMを用いたこれらの微細構造を観察した結果、かき玉が形成されたものではストランド凝集で均質な構造、針状に分散したものではランダム凝集で粗い構造が形成された。しかし、これら液全卵の加熱ゲルを比較したところ、破断物性に差はなかった。以上の事から、ホモジナイザー処理により、液全卵の加熱ゲル物性に差はないが、かき玉形成に影響を与える事が明らかとなった。