中村 卓,〇市川 親代子,若林 正人,亀井 麻直*,後藤 勝**
(明大・農化,*(財)杉山産業化学研究所,**(株)ホーネンコーポレーション)
キャッサバをはじめとして特殊とうもろこし、馬鈴薯等の原料由来の異なる各種澱粉やそれらの加工澱粉が食品素材として利用されてきている。一方、実際の食品系では澱粉を組み合わせて使用することがある。また、多様な食感を持つ澱粉を複数組み合わせることにより新たな食感を発現させる可能性もある。本研究では、最近食品用途で広く使われるようになってきたタピオカ澱粉に注目し、タピオカ澱粉とその他異種澱粉を組み合わせた場合のアミログラフ糊化粘度特性について調べた。また、実際麺用途で併用されることの多いタピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を組み合わせた際のゲル物性の変化についても検討した。
タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉・コーンスターチ・ワキシーコーンスターチを組み合わせた場合の6%濃度ブラベンダー糊化特性を調べた。これらの結果から、澱粉粒の膨潤(糊化開始温度・最高粘度)から崩壊(ブレイクダウン)までの糊化の挙動では、タピオカ澱粉粒と異種澱粉粒がお互いに影響されずにそれぞれ単独で糊化していると思われた。一方アミロースの老化が関係する冷却後の最終粘度では、異種澱粉との相互作用が示唆された。タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を混合した25重量%濃度のスラリーをケーシングチューブに入れ、100℃で30分加熱糊化後、冷却しゲル化させた。混合比の違いによるゲル物性の変化を大変形試験である破断強度解析とテクスチャー解析で調べた。糊液の結果とは異なり、わずか5%の置換で破断強度解析の破断荷重・もろさ荷重やテクスチャー解析の凝集性・付着性に大きな変化が認められた。これらの結果は、うどんなどの練り込み用途でわずかな澱粉の添加により食感が変化することと一致した。