○磯目 結衣1,今井 美穂1,林 佳絵1,青山 博明2,三輪 典子2,中村 卓1(1 明治大農・農化,2 味の素(株)食品研究所)
うどんのおいしさには食感が重要であり、食感にはグルテンの構造が関与している。このグルテン形成を促進することを目的にうどんには食塩(NaCl)が添加される。しかし近年は、健康志向の高まりから「減塩」の食品が求められており、NaClの代替としてKCl、食感改良剤としてトランスグルタミナーゼ(TG)、タンパク質の可溶化素材としてアルギニン(Arg)が用いられている。しかし、これらの素材がグルテン構造に及ぼす影響は明らかではない。この影響を明らかにすることが出来れば、減塩と従来の食塩を使用したうどんの食感を両立する商品開発の指標となることが期待される。そこで、本研究ではKCl、TG、Argを添加したうどんを試作し、物性測定・構造観察を行うことで、各種素材の添加によりグルテン構造及び食感が変化するメカニズムを明らかにすることを目的とした。
小麦粉100部に素材(無添加、NaCl、KCl、TG、Arg)を水40部に溶かして加え、混捏、熟成、圧延、切出してうどんを作成した。生麺、茹麺を実験に用いた。物性測定では、破断強度試験(茹麺)と引張試験(生麺、茹麺)を行った。構造観察には生麺を使用し、未破壊及び引張破壊構造を走査型電子顕微鏡で観察した。
破断強度試験の結果、破断荷重はTG>Arg、KCl、NaCl>無添加の順に高かった。引張試験においては、伸び率はKCl>NaCl、Arg、無添加>TGの順に高く、平均荷重はTG>NaCl>無添加>KCl、Argの順に高い結果となった。電子顕微鏡観察では、添加した素材の種類によってグルテンの構造や引張による破壊の様子に違いが見られた。無添加、NaCl添加、KCl添加では膜状のグルテンが観察されたが、無添加では膜表面が粗かった。引張破壊したTG添加サンプルは束状に伸びた他サンプルとは異なり、膜のまま切れる様子が見られた。還元剤でSS結合を切断したサンプルの構造観察から、各素材がグルテンの構造に影響を及ぼすメカニズムについて考察する。