2015年3月 日本農芸化学会本大会(岡山大)

冷解凍ゲルの「もちもち」食感へのタピオカ加工澱粉の効果

○井之上 明弘、中村 卓 (明治大院農)

【目的】

食感は食品のおいしさを決定する重要な要因である。近年好まれる食感として、「もちもち」食感が挙げられる。「もちもち」食感を付与する食品素材としてタピオカ澱粉がある。タピオカ澱粉は、ドーナツやうどんといった食品に特徴的な「もちもち」とした食感を付与することが知られている。しかし、感性的な性質である「もちもち」食感を人間がどのように認知しているのかは明らかでない。これまでの研究で、人間が「もちもち」食感を認知するためには、第一咀嚼後半の噛み応えや複数回咀嚼時の噛み応えの持続といった知覚が重要であることを明らかにした1)。本研究ではさらに、各種加工タピオカ澱粉を卵白に混合した食品モデルゲルを用いて、冷凍冷蔵食品における澱粉の老化促進をイメージした冷解凍処理を行った。冷解凍したゲルの「もちもち」食感について、官能評価と破壊力学特性、澱粉の加工種類・程度の関係を検討した。

【方法】

澱粉はタピオカ加工澱粉4種(アセチル化[AC]、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋[HPC]、低置換・高置換アセチル化アジピン酸架橋[L-AD, H-AD])を用いた。澱粉・卵白混合懸濁液を、95℃で10分間加熱後、25℃で30分間常温に戻し、作製直後ゲルとした。さらに-20℃で24時間、常温で1時間の冷解凍処理を2サイクル行い、冷解凍ゲルとした。クリープメータにてゲルの破断強度試験と10回繰り返し圧縮試験を行った。4種の冷解凍ゲルの「もちもち感」について、一対比較法にて官能評価した。

【結果】

破断強度試験の結果、L-ADは冷解凍処理により圧縮初期の立ち上がり荷重ともろさ荷重が増加した。HPCは作製直後と類似した物性を示した。10回繰り返し圧縮試験の結果、L-ADは冷解凍処理によって圧縮の繰り返しに伴う応力低下の程度が大きくなり、さらに付着性も減少した。他の3種は冷解凍処理しても作製直後の物性が維持された。冷解凍ゲルの官能評価の結果、「もちもち感」はHPC>H-AD>AC>L-ADの順で高かった。HPC、H-ADは、冷解凍後も圧縮初期のやわらかさ、後期のかたさ(噛み応え)、複数回圧縮時のかたさ(噛み応え)、付着性といった知覚が維持されたために、「もちもち感」を強く感じたと考えられる。以上の結果より、タピオカ澱粉の加工方法として、高程度の耐老化性置換、軽度の架橋が冷凍冷蔵食品の「もちもち感」に効果があることが示唆された。 1) 日本農芸化学会2014年度大会 大会プログラム集2B02a02

2014年8月 日本食品科学工学会(福岡;中村学園大)

各種加工タピオカ澱粉/卵白共存ゲルの破壊力学特性の解析による「もちもち」食感のみえる化

○井之上 明弘、中村 卓 (明治大院農)

【目的】

食感は食品のおいしさを決定する重要な要因である。近年好まれる食感として、「もちもち」食感が挙げられている。「もちもち」食感を付与する食品素材としてタピオカ澱粉がある。タピオカ澱粉は食品の食感改良の目的で用いられており、例えばドーナツやうどんなどの食品に特徴的な「もちもち」とした食感を付加させることが知られている。しかし、どのような知覚を感じることで人間が「もちもち」食感を認知しているのかは明らかでない。これまでの研究では、「もちもち」食感には、タピオカ澱粉の伸びる性質が重要で、人間が認知するには噛み応えが必要であることが示唆された1)。本研究では、各種加工タピオカ澱粉を卵白に混合したゲルを食品モデルとして、破壊力学特性と官能評価の関係を解析することで、タピオカ澱粉の「もちもち感」を具体的な知覚としてみえる化することを目的とした。

【方法】

卵白と澱粉を混合した懸濁液を95℃で10分間加熱後、25℃で30分間冷却しゲルを作製した。ゲル作製には未加工のタピオカ澱粉と加工タピオカ澱粉11種を用いた。12種のゲルについて、クリープメータにて破断強度試験、10回繰り返し圧縮試験を行った。6種のゲルの「もちもち感」について、一対比較法を用いて官能評価を行った。物性測定で得られた波形から物性パラメータを抽出し、官能評価の結果と合わせて主成分分析を行った。

【結果】

官能評価で「もちもち感」のスコアが高かったゲルは、破断荷重が高く、破断後の荷重低下が緩やかな傾向があり、特に、破断強度試験における破断歪率が高く、また10回繰り返し圧縮試験より複数回圧縮時の応力低下が小さかった。以上の結果より、人間が「もちもち」食感を認知するためには、咀嚼後半の噛み応え、複数回咀嚼した時の噛み応えの持続といった知覚が重要であることが示唆された。 1) 日本農芸化学会2014年度大会

2014年3月 日本農芸化学会本大会(川崎;明大)

各種加工タピオカ澱粉/卵白共存ゲルの「もちもち」食感と破壊力学特性の解析

○井之上 明弘、中村 卓 (明治大院農)

【目的】

食品のおいしさを決定する重要な要因として食感がある。食感は咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が認知されることにより表現される。食品構造を形成する主要な成分として澱粉が挙げられる。中でもタピオカ澱粉は食品の食感改良の目的で用いられており、例えばドーナツやうどんなどの食品に特徴的な「もちもち」とした食感を付加させることが知られている。しかし、なぜ「もちもち」とした食感が発現するのかは明らかになっていない。これまでの研究では、馬鈴薯澱粉、タピオカ架橋澱粉を比較対象とし、タピオカ澱粉の伸びる性質とタンパク質界面での相互作用が重要であることを明らかにした。本研究では、各種加工タピオカ澱粉を卵白に混合したゲルを食品モデルとして、タピオカ澱粉の「もちもち感」について、破壊力学特性と官能評価の関係を検討した。

【方法】

卵白と澱粉を混合した懸濁液を、95℃で10分間加熱後、25℃で30分間常温に戻しゲルを作製した。ゲル作製には未加工のタピオカ澱粉とタピオカ加工澱粉(アセチル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)を用いた。ゲルについて、クリープメータにて破断強度試験、10回繰り返し圧縮試験を行った。ゲルの「もちもち感」について、7段階尺度の採点法を用いて官能評価を行った。物性測定で得られた波形から9項目の物性パラメータを抽出し、官能評価の結果と合わせて主成分分析を行った。

【結果】

官能評価の結果より、アセチル化澱粉を添加したゲルで最も「もちもち感」を強く感じた。破断強度試験の結果、加工澱粉は全て未加工澱粉より高荷重で破断し、アセチル化澱粉が最も高歪率高荷重で破断した。また10回繰り返し圧縮試験の結果、ゲルの壊れ方に違いが見られた。未加工澱粉は繰り返し圧縮による応力低下が大きいのに対し、加工澱粉では応力低下が抑えられ、アセチル化澱粉で最も小さかった。主成分分析より、官能評価の「もちもち感」と破壊力学特性の破断荷重、破断歪率、10回圧縮後の比率といったパラメータとの間に相関が見られた。以上より、第一咀嚼後半の噛み応えや、複数回圧縮した時の噛み応えの持続を知覚することにより、人間は「もちもち」という食感を認知していると考えられる。

2013年3月 日本農芸化学会本大会(仙台;東北大)

架橋程度の異なるタピオカ加工澱粉/卵白共存ゲルの破壊物性と破壊構造の解析

○井之上明弘1、付惟2、小林佳祐2、中村卓1 (1明治大農・農化、2明治大院農・農化)

【目的】

食品のおいしさを決定する重要な要因として食感がある。食感は咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が認知されることにより表現される。食品構造を形成する主要な成分として澱粉が挙げられる。中でもタピオカ澱粉は食品の食感改良の目的で用いられており、例えばドーナツやうどんなどの食品に特徴的な「もちもち」とした食感を付加させることが知られている。しかし、なぜ「もちもち」とした食感が発現するのかは明らかになっていない。そこでタピオカ澱粉を卵白に混合したゲルを食品モデルとして破壊過程における力学特性と構造状態の変化を検討した。これまでの研究では、馬鈴薯澱粉を比較対象とし、タピオカ澱粉の伸びる性質とタンパク質界面での相互作用が重要であることを明らかにした1)。架橋は澱粉の膨潤を抑制し、伸びる性質に影響することが知られている。そこで、本研究では、架橋程度の異なるタピオカ加工澱粉を用いて、破壊物性と破壊構造を比較し、破壊過程でのタピオカ澱粉の伸びる性質を解析することを目的とした。

【方法】

卵白と澱粉を混合した溶液を、95℃で10分間加熱、氷水中で10分間冷却した後に6℃で一晩冷蔵しゲルを作製した。ゲル作製には未加工のタピオカ澱粉と架橋の程度が異なる架橋タピオカ澱粉を用いた。ゲルについて、クリープメータにて破断強度試験を行った。歪率を段階的に変えて圧縮したゲルを化学固定した。これら固定ゲルについて目視による巨視的観察、また走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてゲルの微細構造を観察した。

【結果】

破断強度試験の結果、応力-歪曲線において未加工のタピオカ澱粉では低歪領域で低応力、高歪領域で高応力、また降伏点を生じない物性を示した。それに対し、架橋タピオカ澱粉では低歪領域で高応力、高歪領域で低応力、さらに降伏点を生じた。また、架橋の程度が高いほど低歪領域の応力が高くなり、降伏点が低歪・低応力側へシフトした。段階的に圧縮したゲルの巨視的観察ではゲルの潰れ方に違いが見られた。未加工のタピオカ澱粉では表面に亀裂が形成されなかった。しかし、架橋タピオカ澱粉では亀裂が生じた。また、架橋の程度が高いゲルでは亀裂の入り始める歪率が低かった。さらに圧縮したゲルの微細構造観察の結果についても報告する。 1)日本食品科学工学会59回大会要旨集p.160 (2012)

2012年8月 日本食品科学工学会本大会(札幌;藤女子大)

タピオカ澱粉を添加した卵白タンパク質ゲルの破壊物性と破壊構造の解析

○井之上明弘1,高野恵美香1,青山博明2,付惟2,小林佳祐2,森口奈津美2,中村卓1(1明治大農・農化,2明治大院農・農化)

【目的】

食感は咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化が認知されることにより表現される。食感を構成する重要な成分として澱粉が挙げられる。澱粉の中でも、タピオカ澱粉はドーナツ、うどんなどの食品に用いられており、特徴的な「もちもち」とした食感を付加させることが知られている。しかし、なぜ「もちもち」とした食感が発現するのかは明らかになっていない。そこで本研究では、タピオカ澱粉、また比較として「さっくり」とした食感を示す馬鈴薯澱粉を卵白に混合したゲルを食品モデルとして、2種類のゲルの破壊物性と破壊構造を比較することにより破壊過程でのタピオカ澱粉の特性を解析することを目的とした。

【方法】

卵白と澱粉を混合した溶液を作製し、95℃で10分間加熱、氷水中で10分間冷却した後に6℃で一晩冷蔵したものをゲルサンプルとした。ゲル作製にはタピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉の2種類を用いた。作製したゲルについて、クリープメータにて破断強度試験、テクスチャー試験を行った。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてゲルの微細構造を観察し、さらにゲルの破壊構造を観察するためにクリープメータを用いて圧縮したゲルを破壊サンプルとして観察した。

【結果】

破断強度試験の結果、破断後の応力低下に違いが見られた。馬鈴薯混合ゲルでは応力が急激に低下したのに対し、タピオカ混合ゲルでは緩やかに低下した。テクスチャー試験の結果においても、馬鈴薯混合ゲルでは初めの数回の圧縮により応力が一気に低下したのに対し、タピオカ混合ゲルでは応力の低下が緩やかであった。またSEM観察ではゲル中での澱粉の形態に違いが見られた。タピオカ混合ゲルでは澱粉がネットワーク構造を形成していたが、馬鈴薯混合ゲルではそのような構造は見られなかった。さらにSEMを用いた圧縮したゲルの破壊構造観察についても報告する。