○隠木 一晃,中村 卓 (明治大農・農化)
大豆タンパク質の主要成分であるグリシニン(Gly)とβ−コングリシニン(βCG)の加熱ゲル化に関して、中間体として可溶性会合体を経てゲルを形成することが示されている。その際GlyはSH/SS交換反応による新たなSS結合を介するが、βCGはそうではない。今回我々は、GlyとβCGの共存加熱ゲル化過程へのSH基封鎖剤であるN-Ethylmaleimide(NEM)添加の影響を調べた。
鶴の子大豆から精製したGlyとβCGをタンパク質濃度2.5%(w/v)となるよう1:1で混合し、100℃1分間、2分間加熱した。ショ糖密度勾配遠心により可溶性会合体の分子量分布を測定したところ、Gly単独に近い位置にピークが得られたが、NEMを添加した場合ではGly単独とβCG単独の中間にピークが生じた。1分間単独加熱後両者を混合し更に1分間加熱した場合、分子量分布は始めから混合して加熱したものとは異なった。以上の結果より、SH/SS交換反応による新たなSS結合形成が無くても、GlyとβCGからなる複合可溶性会合体が形成されることが示唆された。またこれら会合体の原子間力顕微鏡観察結果も報告する。