2018年8月 日本食品科学工学会(東北大:仙台)

パンの口どけ食感の見える化

○今井 美穂1、佐々木 優1、後山 和成2、渡邉 晃弘2、青山 博明3、三輪 典子3、中村 卓1(1明治大農・農化、2味の素ベーカリー(株)、3味の素(株))

【目的】

パンの種類には、小麦粉・水・塩・イーストを使用したリーンなパンと、油脂や砂糖等の副材料を豊富に加えたリッチなパンがある。リッチなパンの中でもコッペパンは、菓子パンや調理パンとして用いられることが多い。これらの重要な感性食感として“口どけ”や“ひき”が挙げられる。しかし、これらの食感がどのような知覚的要素の組み合わせにより認知されているのか、さらにその要素がどのような力学的特性・構造変化から示されているのか明らかではない。そこで、本研究では官能評価、物性測定、構造観察を行い、パンの感性食感、特に口どけを見える化することを目的とした。

【方法】

製法や材料が異なる2種類の冷凍生地(A、B)を、解凍,発酵,焼成の順で行い、サンプルを作製した。Aをコントロールとし、Bは“口どけ”が良いサンプルとして比べた。“口どけ”についての物性測定は、人工唾液(又は水)を添加したクリープメータによる口どけ食感解析,触感計による表面の摩擦力測定を行った。また、構造観察では、X線CTによる気泡観察,走査型電子顕微鏡による観察を行い、さらに官能評価を行った。

【結果】

口どけ食感解析の結果、Bは圧縮回数後半に荷重が急激に低下し再び増加した。また、Bの18-20回目の付着力はAよりも低かった。咀嚼前半を模した摩擦力測定において、Aに比べBの10回目の摩擦力は低かった。咀嚼後半を模した摩擦力測定において、Aに比べBの15回目の摩擦力は高かった。官能評価の結果、Aに比べBは[生地の溶けやすさ]、[ペーストへのなりやすさ]、[ペーストのなめらかさ]、[のみこみやすさ]が有意に高かった。以上より、Bの試食時には、圧縮後半の荷重変化が大きく、生地が溶けやすいが、付着力は低くペーストになりやすい。また、咀嚼前半を模した摩擦力が低く、ペーストがなめらかであるが、咀嚼後半を模した摩擦力が高く、生地がまとまりやすく、のみこみやすいことで“口どけ”が良いと認知したと考えられる。さらに、構造観察の結果についても報告する。