2019年8月 日本食品科学工学会(北海道大:札幌)

各種グルテン混合による、加熱ゲル物性の相乗効果と構造の相関

(明治大農・農化) ○射場彩栄、小島詩歩、武田祐実、中村卓

【目的】

小麦グルテンは水と混練することでタンパク質ネットワークを形成し、ドウ(生地)になる。パンや麺などの小麦粉を用いた食品に対し、小麦粉から分離されたグルテンを使用することで、伸展性、粘弾性などを与えることができる。そして、小麦生地の加熱前には、製造時の作業性改善、加熱後には、製品の食感改善へ効果がみられる。以前、製造方法の異なる3種類のグルテンの特定の配合において、非加熱条件下で、ドウの物性に混合による相乗効果が認められ、それらの結果と微細構造の間に相関が見られることを報告した1)。しかし、実際に食品に用いられる際、小麦生地の多くは加熱される。そこで、本研究では、3種類のグルテンを混合し、加熱ゲルの物性に相乗効果が見られるか検討した。さらに、加熱によるグルテンネットワークの変化を観察し、物性の相乗効果と微細構造の相関について、解析することを目的とした。

【方法】

3種類のグルテンA, B, C単独と、A, B, Cを1:1で配合した混合グルテンの計6種類を用いた。グルテン粉末100gに0.7%食塩水150gを加え、ミキサーで混練し、恒温槽を用いて80℃30分加熱することでドウを作成した。破断強度試験では厚さ約9 mmのドウを用いた。引張試験では、内径8 mm、高さ20 mmのドウを用いた。走査型電子顕微鏡観察では、引き伸ばした状態のドウを化学二重固定・脱水・臨界点乾燥し、オスミウム蒸着後観察した。

【結果】

破断強度試験・引張試験の結果、ドウは、加熱・非加熱共にA>B>Cの順にかたく、弾力があり、ちぎれにくかった。また、3種のグルテンそれぞれの1:1混合において、グルテン混合による相乗効果や抑制効果が認められた。さらに、加熱によるグルテンネットワーク変化を観察し、グルテンネットワークと物性の相関を考察する。 1)2017年日本食品科学工学会第64回大会 要旨集 p.74 2Ap5