○堀田竜之介,中村卓(明治大農・農化)
Puroindoline(PIN)は小麦澱粉の表面タンパク質で、トリプトファンに富んだドメインと5つのジスルフィド結合を持っている。PINにはPIN-a , PIN-bという2つのアイソフォームが存在する。両者とも小麦種子のかたさに影響していることが明らかとされている。演者らは、澱粉にPIN 溶液を添加することでPINが特異的に結合し1) 、澱粉に乳化能が付加されたことを明らかにした2) 。本研究では、PIN 自身の乳化特性について報告する。
小麦粉(ASW)より非イオン性界面活性剤TritonX- 114を用いた二層分離法(D.Marion等の方法)で抽出し、ゲルろ過クロマトグラフィー, 陽イオン交換クロマトグラフィーによりPIN は精製した。タンパク濃度を0 . 1% に調整し、超音波破砕機にて乳化した。その後、Kinsellaらの方法にて乳化活性、乳化安定性を測定した。比較タンパク質として、市販OVA ,BSAを用いた。また、ANSを用いた蛍光光度測定により、表面疎水性についても比較した。
PINはOVA, BSA と比較して、乳化活性が2倍程度と高い値を示した。また、乳化安定性も高かったことから、PIN は乳化能が高いことが明らかとなった。また、表面疎水性を測定したところ、PIN は高い値を示した。このことが、高乳化能を示す原因と考えられた。
1) 堀田ら,日本農芸化学会2003 年度大会要旨集P222
2) 堀田ら,日本農芸化学会2004 年度大会要旨集P221
〇堀田竜之介,中村卓(明治大農・農化)
Puroindolines(PINs)は小麦澱粉表面に結合して存在している蛋白質で、種子のかたさに影響することが明らかになってきた。表面蛋白質を除いた小麦澱粉にPuroindolines溶液を再添加すると、PINsが特異的に小麦澱粉粒に結合することが報告された1)。本研究では、由来農産物の異なる各種澱粉へのPINsの結合について調べた。
PINsは小麦粉(ASW)より非イオン性界面活性剤TritonX-114を用いた二層分離法で抽出した。澱粉として小麦澱粉・特殊コーンスターチ(レギュラーイエロー種・レギュラーホワイト種・ワキシーイエロー種・ワキシーホワイト種・ハイアミロース種)・馬鈴薯澱粉・タピオカ澱粉を用いた。これらにPINs溶液を添加し結合の違いをSDS-PAGEで解析したところ、澱粉種によりPINsの結合程度に差がみられた。ハイアミロースコーンスターチが最も多く、馬鈴薯澱粉へはほとんど結合しなかった。また、同様に他種タンパク質とPINsを混合添加すると、他種タンパク質は結合せず、PINsが特異的に結合した。
1) Bloch et.al, Cereal Chem. 78, 74-78, 2001
(明大・農化、1)山崎製パン梶A2)(財)杉山産業化学研究所、3)莞ーネンコーポレーション)
〇堀田竜之介、若林正人1)、亀井麻直2)、後藤勝3)、中村卓
小麦粉は、麺,パン等の原料として食品産業に広く用いられている。最近、タピオカ、特殊とうもろこし、馬鈴薯等の異種澱粉を添加することにより食感の改良が行なわれている。現在まで、単一澱粉の添加の影響は研究されてきたが、澱粉の混合添加の影響はあまり調べられていない。本研究では、小麦粉のモデルとして小麦澱粉を、食品のモデルとしてゲルを用いて、小麦澱粉への異種澱粉の混合添加の影響について検討した。
異種澱粉としてタピオカ澱粉・ワキシーコーンスターチ・コーンスターチ・馬鈴薯澱粉を用い、これらを5%濃度で20%濃度の小麦澱粉に添加し澱粉懸濁液とした。これをケーシングチューブに入れ、100℃で30分加熱しゲルを作製した。このゲルを5℃で18時間冷蔵後、25℃で1時間放置した。これを10mmの厚さに切り、クリープメーター(且R電 RHEONERURE2-33005S)でV型プランジャー(p-49)を用いて歪み率100%で破断強度を測定し、破断強度解析ソフト(且R電)で解析した。
小麦澱粉ゲルへ異種澱粉を単一添加した際、低歪み率において馬鈴薯澱粉とコーンスターチは硬さが増加したが、タピオカ澱粉は変化せずワキシーコーンスターチは硬さが減少した。高歪み率において馬鈴薯澱粉・コーンスターチ・タピオカ澱粉添加は硬さを増加させたが、ワキシーコーンスターチでは硬さに変化が見られなかった。これらを1:1で組み合せ混合添加したところ、低歪み率・高歪み率の両方においてそれぞれの単独添加での性質が相加された。しかし、馬鈴薯澱粉とコーンスターチを混合添加した場合は相加以上に硬くなった。以上の結果は、それぞれの澱粉単独でのゲル物性の違いが混合添加時にも反映されることを示している。