2003年9月 日本食品科学工学会第50回大会(東京)

卵白加熱ゲルへの各種澱粉添加の影響

○林田真理子,星野志麻,中村卓(明治大農・農化)

【目的】

ゲル状加工食品において卵白と澱粉は食感コントロールの目的で併用されることが多い。本研究では、卵白に糊化特性の異なる澱粉を添加した際の加熱ゲルについて、構造と物性の変化を明らかにすることを目的とした。また、加熱途中の澱粉粒の変化についても観察した。

【方法】

澱粉として、レギュラーコーンスターチ(CS)とワキシーコーンスターチ(WX)架橋コーンスターチ(CL-CS)、マルトデキストリン(MD)を用いた。ゲルの作成は、卵白粉末を蒸留水に溶かしたものに各種澱粉を添加し、卵白最終濃度10%に調整し、95℃で30分間加熱した。6℃で18時間冷蔵後、25℃に戻したのちV型プランジャーを用いてレオメーターにより破断強度測定を行った。また、共焦点レーザー走査顕微鏡でゲルの微細構造を観察した。更にホットステージにより加熱途中の澱粉粒の変化を観察した。

【結果】

破断荷重はWX、CSの両者とも添加濃度に比例し増加した。また破断歪率は、CSでは添加濃度が増加すると減少していくが、WXでは一度減少し、5%添加から再び増加した。これは、CSでは徐々に脆くなり、WXでは脆いものから弾力をもったゲルへ移行したためと考えられる。また、CL-CSでは歪率20%時の荷重が他と同様な傾向を示したが、MDでは徐々に減少した。MDは保水能力がないので、かたさの増加には澱粉の保水能力が関与していると考えられる。WX10%では、他の場合と異なり連続相が澱粉、分散相が卵白となり、相転移が見られた。また、卵白溶液中で、澱粉を加熱すると、水溶液中よりも膨潤が抑制されたが、WXは他と比べて、膨潤能力が大きかった。この膨潤能力の差が相転移の違いとして表れたと考えられる。以上より、澱粉添加では、澱粉ゲルのそれぞれの性質が、卵白ゲルの物性・構造へと影響を及ぼすことが明らかになった。