2015年8月 日本食品科学工学会本大会(京都)

ネットワーク構造の異なるプロセスチーズへの澱粉添加の影響

○付惟,中村卓 (明治大院農・農化)

【目的】
咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化を知覚認知することにより、食感が表現される。タンパク質ゲル状食品であるプロセスチーズは多成分からなる不均質構造を持っている。プロセスチーズでは、カゼインミセルのネットワーク構造は製造条件の違いによりストランドタイプとランダムタイプの2種がある。また、品質の多様性が求められる食品開発の現場において、望む食感を設計するために、澱粉の添加は常用な方法である。しかし、食感素材である澱粉を添加することによって、異なる構造のプロセスチーズの食感にどのように影響するのか?形成した食品構造が破壊によりどの様に破壊し食感を発見するのかは明らかになっていない。そこで、本研究では、タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を添加することによって、ネットワーク構造の異なるプロセスチーズの力学特性と構造状態などへの影響を破壊過程から解析した。

【方法】
溶融塩と原料ナチュラルチーズとプレクックチーズ(全量の5%)と澱粉(タピオカ澱粉または馬鈴薯澱粉(全量の2.5%))を用い、最終水分含量が50%、pHが5.8-5.9となるように調整した。Rapid Visco Analyzerを用いて温度90℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間15分で行い異なるプレクックチーズを添加したネットワーク構造の異なるプロセスチーズを作製した。なお、プレクックチーズは温度90℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間10分または30分の2種類作製した。作製したプロセスチーズについて、走査型電子顕微鏡(SEM)により構造観察を、クリープメーターにより破断強度試験を行った。

【結果】
2種類プレクックチーズの添加により、同じ加熱条件でストランドとランダム構造を持つプロセスチーズが形成された。破断強度試験の応力―歪曲線の10-30%の低歪率において、ストランドでは、タピオカの添加は澱粉無添加より応力への影響が見られなかったが、馬鈴薯を添加したものは応力が増加した。ランダムでは、タピオカと馬鈴薯の添加どちらにおいても無添加より応力は有意に増加した。馬鈴薯では応力が一番高かった。また、SEM観察によりプロセスチーズの破壊構造と力学特性の関係についても考察する。

2014年8月 日本食品科学工学会本大会(福岡)

ネットワーク構造の異なるホエータンパク質(WPI)ゲルの破断特性への食感の異なる澱粉添加の影響を破壊過程から解析する

○付惟,井之上明弘,中村卓 (明治大院農・農化)

【目的】
咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化を知覚認知することにより、食感が表現される。食感を発現する重要な食品成分として澱粉が挙げられる。また、ゲル状食品中のタンパク質のネットワークには、ストランドタイプとランダムタイプの2種がある。前回の報告では、澱粉添加による、ゲルの破断特性への影響がゲルのネットワーク構造のタイプによって、異なることを明らかにした。しかし、その変化の違いがどの様にして生じているのかは明かではない。そこで、本研究では、異なる食感を示すタピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を混合したネットワーク構造の異なるWPIゲルの破断特性の変化を破壊過程から明らかにすることを目的とした。

【方法】
タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉各2.5%とWPI(15%)を含む溶液を作製した。pHを5.8と6.8に調整し、95℃で10分間加熱、氷水で10分間冷却した後に、5℃で一晩冷蔵し、ゲルを作製した。その作製したゲルについて、クリープメータにて破断強度試験を行った。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、ゲルの破壊構造を観察した。なお、ゲルはpH6.8ではストランド、pH5.8ではランダムタイプのネットワーク構造である。

【結果】
破壊構造観察の結果、タピオカ澱粉の共存ゲルについて、pH6.8では、生じる断面では澱粉粒が観察されなく、タンパク質のストランド構造が観察され、タンパク質連続相構造で破壊を生じるため、単独ゲルの破断特性と似ていることが示唆された。pH5.8では、澱粉粒から亀裂が生じ、澱粉粒が伸びる様子が観察され、特に、伸びた澱粉粒の中ではそれぞれと異なる構造が観察された。澱粉の伸びる構造から脆性破壊から延性破壊に変わると考えられ、低歪で降伏点を生じた。馬鈴薯の共存ゲルでは、pH6.8では澱粉粒が残り、タンパク質相と分離することが観察され、界面から壊れたため、単独のタンパク質連続相で破壊するより、低歪で破壊した。pH5.8では、破壊後に澱粉粒が変形したが、亀裂が生じなかった。しかし、断面ではタンパク質のランダム構造が観察され、澱粉粒よりもタンパク質相から破壊を生じたため、単独より、高歪で破断した。以上の様に、ストランド構造とランダム構造であるWPIネットワーク構造において、タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉の添加により、破断特性への影響を破壊過程から明らかとなった。

2013年8月 日本食品科学工学会本大会(実践女子大)

ネットワーク構造の異なるホエータンパク質(WPI)ゲルの破断特性への食感の異なる澱粉の添加の影響

○付惟,井之上明弘,中村卓 (明治大院農・農化)

【目的】
咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化を知覚認知することにより、食感が表現される。食感を発現する重要な食品成分として澱粉が挙げられる。澱粉の添加は食品の破断特性に影響を与える。また、ゲル状食品中のタンパク質のネットワークには、ストランドタイプとランダムタイプの2種がある。しかし、澱粉の添加により、ネットワーク構造の異なる食品の破断特性がどの様に変化するのかは明らかになっていない。そこで、本研究では、異なる食感を示すタピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を混合したWPIゲルを食品モデルとして、ネットワーク構造の異なるWPIゲルの破断特性への澱粉添加の影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】
タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を用い、WPI(15%)と混合した溶液を作製した。pHを5.8と6.8に調整し、95℃で10分間加熱、氷水で10分間冷却した後に、5℃で一晩冷蔵し、ゲルを作製した。その作製したゲルについて、クリープメータにて破断強度試験を行った。また、共焦点電子顕微鏡(CLSM)と走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、ゲルの構造状態を観察した。

【結果】
澱粉単独の糊化特性へのpH6.8と5.8の影響は馬鈴薯で少し認められたが、小さかった。破断強度試験の結果、pH6.8のWPI単独ゲルでは、応力歪曲線の立ち上がり応力が緩やかに上昇したのに対し、pH5.8では急激に上昇した。しかし、pH6.8では高歪高応力で破断したのに対し、pH5.8では低歪低応力で破断した。澱粉の混合ゲルでは、単独ゲルよりすべての歪で応力が高かった。pH6.8ではタピオカと馬鈴薯の添加ゲルの立ち上がり応力は一致した。しかし、馬鈴薯は高歪低応力で破断した。pH5.8ではタピオカの混合ゲルは馬鈴薯より立ち上がり応力が高く、低歪低応力で破断した。SEM観察で、pH6.8のWPI単独ゲルのネットワーク構造はストランドであり、pH5.8の方はランダムであった。pH6.8の澱粉の混合ゲルでは膨潤したタピオカ澱粉粒の中に凝集したタンパク質が存在したが、馬鈴薯澱粉粒では見られなかった。pH5.8ではタピオカ混合ゲルのタンパク質のネットワーク構造は馬鈴薯添加ゲルより高密度であった。さらに、破断特性と界面構造の関係についても報告する。