ネットワーク構造の異なるプロセスチーズへの澱粉添加の影響
○付惟,中村卓 (明治大院農・農化)
【目的】咀嚼による食品構造の破壊過程において、力学特性と構造状態の変化を知覚認知することにより、食感が表現される。タンパク質ゲル状食品であるプロセスチーズは多成分からなる不均質構造を持っている。プロセスチーズでは、カゼインミセルのネットワーク構造は製造条件の違いによりストランドタイプとランダムタイプの2種がある。また、品質の多様性が求められる食品開発の現場において、望む食感を設計するために、澱粉の添加は常用な方法である。しかし、食感素材である澱粉を添加することによって、異なる構造のプロセスチーズの食感にどのように影響するのか?形成した食品構造が破壊によりどの様に破壊し食感を発見するのかは明らかになっていない。そこで、本研究では、タピオカ澱粉と馬鈴薯澱粉を添加することによって、ネットワーク構造の異なるプロセスチーズの力学特性と構造状態などへの影響を破壊過程から解析した。
【方法】溶融塩と原料ナチュラルチーズとプレクックチーズ(全量の5%)と澱粉(タピオカ澱粉または馬鈴薯澱粉(全量の2.5%))を用い、最終水分含量が50%、pHが5.8-5.9となるように調整した。Rapid Visco Analyzerを用いて温度90℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間15分で行い異なるプレクックチーズを添加したネットワーク構造の異なるプロセスチーズを作製した。なお、プレクックチーズは温度90℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間10分または30分の2種類作製した。作製したプロセスチーズについて、走査型電子顕微鏡(SEM)により構造観察を、クリープメーターにより破断強度試験を行った。
【結果】2種類プレクックチーズの添加により、同じ加熱条件でストランドとランダム構造を持つプロセスチーズが形成された。破断強度試験の応力―歪曲線の10-30%の低歪率において、ストランドでは、タピオカの添加は澱粉無添加より応力への影響が見られなかったが、馬鈴薯を添加したものは応力が増加した。ランダムでは、タピオカと馬鈴薯の添加どちらにおいても無添加より応力は有意に増加した。馬鈴薯では応力が一番高かった。また、SEM観察によりプロセスチーズの破壊構造と力学特性の関係についても考察する。