2016年8月 日本食品科学工学会(名城大学)

乾燥温度の異なるパスタの食感の差を破壊時のグルテン構造の違いから解析する

○踏分湧太,活田沙織,中村卓(明治大農・農化)

【目的】

パスタにおいて食感は、おいしさを決める重要な要因である。パスタはデュラムセモリナに水を加えて混練、押出し成型、乾燥工程を経て製造される。その中でも乾燥工程は、条件によって食感、保存性などパスタの品質が変化する重要な工程である。一般的に高温で乾燥させたパスタはタンパク質の変性が進み、硬く、付着性の少ないパスタとなると言われている。本研究室でも、乾燥温度の異なるパスタの食感の差を破壊構造の違いから明らかにした。しかし、茹でたパスタでは澱粉が糊化しているため、グルテン構造自体の違いを明確にできなかった。そこで、本研究では澱粉が糊化しない温度で吸水させた乾燥温度の異なるパスタを用いて、破壊時のグルテン構造の違いから食感の差を明らかにすることを目的とした。

【方法】

デュラムセモリナに外割30%の水を加え、パスタマシン中で混錬、押出し成型後、恒温恒湿機で乾燥させ、乾燥パスタを作製した。乾燥は湿度80%で低温乾燥55℃と高温乾燥85℃の2条件で行った。これら乾燥パスタのタンパク質の重合度をLowry法で測定した。さらに、澱粉が糊化しない温度35℃で120分間吸水させたパスタを99%に圧縮し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてグルテンの破壊構造を観察した。

【結果】

重合度測定の結果、重合度は高温乾燥の方が低温乾燥よりも大きかった。走査型電子顕微鏡観察の結果、低温乾燥パスタは圧縮時に細いストランドからなるネットワークがパスタの直径方向と長さ方向の両方向に伸びた構造が見られた。一方、高温乾燥パスタでは太いストランドからなるネットワークが長さ方向に伸びた構造が見られた。このように、破壊時のグルテン構造のネットワークと伸び方向に乾燥温度の異なるパスタで違いが見られた。これらグルテンの破壊構造と食感との関係を考察する。