〇張カンビ1,付惟2,中村卓3(1明治大院農・農化、2明治大・研究知財戦略機構、3明治大農・農化)
うどんは原料とする小麦粉、食塩に水を加え、混練、複合、熟成、圧延を掛け、切り出し又は推し出して製造される。これらの製造工程を変えることによって、グルテンの形成に大きく影響を与え、うどんの食感は変わる。パスタのグルテンの微細構造が膜状では硬い食感、繊維状では柔らかい食感になることを昨年の大会で報告した1)。しかし、うどんグルテンの微細構造と食感の関係はまだ明らかになっていない。そこで、本研究ではうどんの製造工程に注目し、工程の組み替えにより、グルテンの変化を物性、構造から解析し、食感との関係を明らかにすることを目的とした。
中力粉に塩4.5%と35%又は43%の水を加え、混練(高速ミキシング、真空低速ミキシング)、複合、熟成、圧延を選択的にかけ、切り出し、又は押し出し、生うどんを作製した。生麺を凍結乾燥、粉砕し、Lowry法を用いてグルテン重合度を測定した。うどんの食感について官能評価を行なった。さらに、圧縮破壊試験や引張り試験による物性測定を行なった。また、グルテンの形成状態について、走査型電子顕微鏡を用いて微細構造を観察した。
引張り試験の結果、複合、熟成、圧延を選択的にしなかったうどんの伸び率は低かった。圧縮破壊の結果も、これらのうどんの破断応力ともろさ応力は低かった。また、グルテンの微細構造観察の結果、混練では細い繊維状の構造が、複合ではそれらが束になった構造が、圧延では束が一体化したような膜状の構造がみられた。さらに、食感について報告し、グルテン構造の違いと食感の関係について考察する。 1) 2017年日本食品科学工学会第64回大会 要旨集 p112 3Aa6
〇張カンビ1,踏分湧太2,付惟1,中村卓2(1明治大院農・農化、2明治大農・農化)
パスタのおいしさにとって食感は最も重要な要素である。パスタは原料とするデュラムセモリナに水を加え、混錬、押出成形、乾燥させて製造される。乾燥の工程では、異なる温度によってパスタのグルテンタンパク質構造が変化し、食感が変化する。本研究室でも、高温乾燥パスタは低温乾燥パスタよりもグルテンタンパク質の重合が進み、硬くてもろい「ぷりっと」した食感に、低温乾燥は重合があまり進まず、軟らかいが壊れ難い「もっちり」とした食感になることを明らかにした。昨年の本学会において、異なる乾燥温度で作られたパスタの食感の差を破壊構造から解析した結果を報告した1) 。しかし、高温乾燥と低温乾燥のグルテンにおけるタンパク質間の結合の違いについては明らかではない。そこで本研究では、澱粉が糊化しない温度で各種塩溶液を吸水させたパスタを用いて、グルテン構造の破壊時における、SS結合と非共有結合の寄与を構造観察から解析することを目的とした。
デュラムセモリナに外割30%の水を加え、パスタマシーンで混錬、押出し成型後、恒温恒湿機で乾燥させ、乾燥パスタを作製した。乾燥は湿度80%で低温乾燥55℃と高温乾燥85℃の2条件で行った。これら乾燥パスタのタンパク質について、Lowry法とSDS-PAGEを用いて成分分析を行った。澱粉が糊化しない温度35℃で、還元剤や離液順列の異なる塩溶液をパスタに吸水させ、圧縮試験や引張試験による物性測定を行った。さらに、この時のグルテンの変形破壊構造を、各種顕微鏡(SEM・CLSM)を用いて観察した。
タンパク質分析の結果、乾燥温度が低温より高温の方がSS結合による重合が進むことが明らかとなった。引張実験の結果、低温は荷重が低く伸び率が大きかったのに対し、高温は荷重が高く伸び率が小さかった。高温乾燥パスタの吸水に還元剤を添加した場合、荷重・伸び率共に低下した。また、離液順列の異なる塩溶液で吸水したパスタの破断実験の結果、破断応力が変化したことから非共有結合の寄与も推察された。さらに変形破壊構造と物性の関係についても考察する。1)踏分湧太ら学会第63回大会講演集,p.102,(2016)