○青山博明,石川智代,中村卓 (明治大院農・農化)
○青山 博明、中村 卓、渡部 幸一郎1、岡本 武1、熊澤 義之1、(明治大院農・農化、1味の素株式会社・食品研究所)
食品において、食感はおいしさを決める重要な要因である。その食品の構造形成成分としてタンパク質や澱粉などの高分子化合物が挙げられる。それらの成分を混合や加熱・冷却といった物理的加工することにより、食品構造を形成する。その食品構造が破壊される過程、つまり人間が口腔内で食品を咀嚼することで生じる状態構造、力学物性の変化を知覚する過程で食感を発現する。さらに、食感改良の加工法として、トランスグルタミナーゼ(TG)、グルコースオキシダーゼ(GO)が用いられている。TGはタンパク質分子間のε(γ-グルタミル)-リジンイソペプチド架橋反応を触媒する酵素である。また、GOはタンパク質の-SH基の酸化による、S-S架橋の形成に寄与し、タンパク質ネットワークを強固にすると考えられている。以上の様なメカニズムにより、TGやGOを小麦粉製品に添加すると食感が変化し、それぞれの食感が異なることが知られている。しかし、TGやGOの添加による食感の違いが、咀嚼過程でどのような構造変化、力学物性によって生じているのか明らかではない。そこで本研究では、TG、GOを添加して調製したうどんの食感の違いを破壊過程における構造と物性の変化の差からみえる化することを目的とした。
酵素無添加とTG、GOをそれぞれ添加して調製した3種類のうどんについてクリープメータを用いて破断強度試験を行なった。この破壊過程をデジタルカメラにて動画観察した。さらにこの破断強度試験で破壊したうどんについて、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて破壊構造を観察した。
破断強度試験で得られた荷重-歪曲線の結果より、TG添加うどんは最も高荷重で破断した。また、破断後の荷重が大きく低下した。GO添加うどんは酵素無添加よりも高荷重で破断した。また、破断後の荷重の低下が小さかった。以上より、TG添加うどんは破断後、壊れやすく、一方GO添加うどんは壊れにくい力学物性を示すことが明らかとなった。破壊構造の観察結果より、TG添加うどんは、グルテンネットワークが麺線方向に伸び、ちぎれたように破壊されていることが明らかとなった。一方、GO添加うどんは、破壊方向に巻き込まれるようにグルテンネットワークが伸びた構造変化を起こすことが明らかとなった。以上より、TG添加うどんはグルテンネットワークがちぎれるように破壊が起きたため荷重が大きく低下したと考えられる。一方GO添加うどんはグルテンネットワークが伸びた構造変化を起こすため荷重低下が小さかったと考えられる。さらに、食感とこれら破壊過程における構造・物性の変化との関係についても報告する。
○青山博明,中村卓
食品において食感はおいしさを決定する重要な要因である。その食品の構造形成成分として、主にタンパク質や多糖類といった高分子化合物が挙げられる。それらの成分が混合、加熱や冷却といった加工により食品構造を形成する。その食品構造が破壊される過程、つまり人間が口腔内で食品を咀嚼することで生じる力学物性と状態構造の変化を知覚する過程で食感を発現する。消費者が望む食感をデザインするためには、食品構造と食感の関係を明らかにする必要がある。しかし、食品構造が破壊過程においてどのように構造変化を起こし、食感と関係があるのか明らかになっていない。そこで本研究では、代表的なゲル状食品であるプリンを用いて、その食感表現を破壊構造、物性から翻訳することを目的とした。
量販店で購入した市販プリンについて、クリープメータを用いて破断強度解析を行なった。そのうち、6種類を選び、メンブレンフィルターを挟み込みクリープメータで99%圧縮破壊したプリンについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて破壊微細構造観察を行なった。また、5段階カテゴリー尺度を用いた採点法による官能評価を行なった。さらに官能評価について、分散分析、主成分分析(PCA)を行なった。
市販プリンについて破断強度解析で得られた応力-歪曲線の結果から、(A)低歪率、低応力領域で破断点を生じるもの、(B)高歪率、高応力領域で破断点を生じるもの、(C)破断後の明確な応力低下を生じないものの3グループに分類された。各グループから2種類ずつ選び、さらに分析した。破壊微細構造の結果より、Aでは相分離の界面において亀裂が発生し、連続相が伸びて破壊が起きることが明らかとなった。Bではネットワークが伸び、引きちぎられ、亀裂が伝播することが明らかとなった。Cではネットワークが伸びずに分離するように亀裂が発生、伝播することが明らかとなった。官能評価のPCAの結果より、Aでは弾力性、Bではざらつき、Cでは口溶けに特徴的なプリンであることが明らかとなった。さらに、食感と破壊構造、物性の相関について考察する。
○青山 博明、森口 奈津美、中村 卓、
ゲル状食品において、食感はおいしさを決める要因として大きな割合を占めている。その食感は食品構造が咀嚼により破壊される過程で発現する。その食品構造の主な形成成分として、高分子化合物であるタンパク質、多糖類が挙げられる。両成分を混合すると、単独成分では起きない相分離構造を形成することが知られている。前回大会において、分散相/連続相が異なる相分離構造を持つ卵白タンパク質・寒天の共存ゲルにおいて、亀裂の発生はタンパク質相と多糖類相の界面から生じるが、亀裂伝播の様子が異なることを明らかにした1)。また、両連続相構造(BC)を持つ共存ゲルでは、分散相構造を持つゲルと比較して大変形試験の破断後の応力低下が小さいことを明らかにした2)。そこで本研究では、この両連続相構造のゲルの物性を構造破壊過程から解析することを目的とした。さらに、相分離の界面から亀裂が生じることに注目し、界面相互作用の有無が構造破壊に与える影響について検討した。
両連続相構造を持つ卵白タンパク質・寒天共存ゲル(EABC)と大豆タンパク質・脱アシル型ジェランガム共存ゲル(SGBC)の作製方法は、各大会要旨集の方法に基づいた2) 3)。これらのゲルについて大変形試験を行ない、歪率を段階的に変えてゲルを圧縮破壊した。それら圧縮されたゲル全体をそのまま化学固定し、巨視的レベルでは目視で破壊過程を観察した。微視的レベルでは共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)と走査型電子顕微鏡(SEM)にて、ゲルの亀裂部分を観察した。
界面相互作用の無いEABCは、大変形試験において破断点以降の応力があまり低下しない応力-歪曲線を示した。巨視的亀裂観察の結果より、EABCは前回大会で報告した分散相/連続相共存ゲルとは亀裂伝播の様子が異なり、細かい亀裂が多数入り崩壊していくことが明らかとなった。SEMの微視的亀裂観察の結果より、EABCでは両成分の界面から亀裂が発生するが、連続相の部分が亀裂伝播を防いでいることが明らかとなった。このような細かい亀裂が多数発生するが、亀裂のつながりを阻害することによって応力低下を防いだと考えられる。一方、界面相互作用の有るSGBCでは、各単独成分の足し合わせ以上の立ち上がり応力を示し、より高応力、低歪率で破断点を生じた。巨視的亀裂観察の結果より、SGBCは大きな亀裂が発生、伝播し崩壊していく様子が観察された。SEMの微視的亀裂観察では、SGBCはジェランガムのネットワークが引っ張られ、界面において一部の相互侵入していない界面から優先的に亀裂が発生していることが明らかとなった。このようにネットワークが引っ張られ、一部の界面から亀裂が発生し大きな亀裂へと成長することによって立ち上がり応力の増加、低歪率で破断点を示したと考えられる。 1)日本農芸化学会2011年度大会要旨集p.229 2)第56回日本食品科学工学会大会要旨集p.121 3)第54回日本食品科学工学会大会要旨集p.150
○青山 博明、森口奈津美,中村卓
ゲル状食品において、食感はおいしさを決める要因として大きな割合を占めている。主な食品の構造形成成分として、高分子化合物であるタンパク質、多糖類が挙げられる。両成分を混合すると、単独成分系では起きない相分離構造を形成することが知られている。前回大会では、卵白タンパク質、ジェランガム共存ゲルにおいて、相分離構造の違いが、咀嚼後半に発現する「ざらつき」の違いに影響している事を明らかにした。そこで、本研究では、このような知見と手法が市販食品に応用可能かどうか、さらに食感を構造破壊過程から解析することを目的とした。
量販店で購入した市販プリン9種類について、クリープメーターを用いて破断強度試験を行なった。そのうち、3種類を選び、構造破壊過程を解析するために圧縮歪率を30〜99%の間で段階的に圧縮されたプリンについて化学固定した後、肉眼でプリンの巨視的亀裂観察を行なった。さらに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細構造観察を行なった。また、5段階尺度を用いた採点法による官能評価を行なった。
市販プリン9種類について破断試験で得られた応力-歪曲線の結果から、(A)低歪率領域で破断点を生じるもの、(B)高歪率領域で破断点を生じるもの、(C)破断点の生じないものの3つのグループに分類された。各グループから1種類ずつ選び、さらに分析した。巨視的亀裂観察では、それぞれ亀裂の発生する歪率、亀裂伝播の様子に違いが見られた。微視的亀裂観察では、相分離構造の見られたAの歪率60%のサンプルより、相分離の界面において亀裂が発生していることが明らかとなった。また、官能評価の結果から、AとCのサンプル間で、「硬さ」「弾力性」「付着性」「口溶け」「ざらつき」の項目において有意な差があった。「硬さ」の項目は、破断試験の低歪率領域の応力の立ち上がりと相関が認められた。さらに、食感と破壊過程における物性・構造の変化の相関について考察する。
○青山 博明、山田 芳1、武藤 愛1、中村 卓1(明治大農・農化、1明治大院)
【目的】タンパク質と多糖類を混合すると、タンパク質相と多糖類相に分離したw/wエマルション構造を形成することが知られている。卵白タンパク質と寒天の共存系において、濃度を変化させると相転移が起こり、連続相が異なるゲルを形成することを明らかにした1)。一方、食感は形成したゲルの構造が咀嚼により破壊される過程で発現する。そこで本研究では、ゲル構造の破壊に焦点を絞り、連続相が異なるゲルの破壊過程の違いを明らかにすることを目的とした。
連続相の異なるゲルについて、大変形試験を行い、歪率を段階的に変えてゲルを圧縮した。それらの圧縮されたゲル全体を化学固定し、巨視的レベルでは目視で破壊過程を観察した結果、亀裂伝播の様子と破壊後の破片の大きさに違いが見られた。微視的レベルでは電子顕微鏡と共焦点レーザー走査顕微鏡を用いてゲルの亀裂部分を観察した。その結果、相分離した卵白タンパク質と寒天の界面で亀裂が発生・伝播していく様子が見られた。 1)第56回食品科学工学会大会要旨集p.121(2009)