2017年8月 日本食品科学工学会(日本大学藤沢)

無脂肪ヨーグルトの食感への乳タンパク質の影響

○内海佑香1、市村武文3、高井めぐみ3、日下舞2、中村卓1(1明治大農・農化、2明治大院農・農化、3(株)明治)

【目的】

無脂肪ヨーグルトは有脂肪ヨーグルトと比較して、食感のなめらかさが劣り、硬い物性となる傾向がある。この食感を改善するために乳タンパク質を添加した場合、同量の添加でも乳タンパク質原料の違いで得られる食感が異なる。 例えば、乳タンパク質濃縮物(MPC)を添加したものは、さらに硬く、ツブツブとした食感になる。一方、脱脂粉乳(SMP)の添加により乳タンパク質を増加したものは、濃厚でややなめらかな食感になる。しかし、種類の違うタンパク質の添加により食感が異なるメカニズムは明らかではない。そこで本研究では、無脂肪ヨーグルトの破壊過程に着目した物性測定・構造観察を行い、ネットワーク構造の破壊と物性と食感の関係を明らかにすることで、食感の向上のための知見を得ることを目的とした。

【方法】

異なるタンパク質を添加したヨーグルトミックス3種(コントロール・乳タンパク質(MPC)添加・脱脂粉乳(SMP)添加)を発酵・冷却し、無脂肪ヨーグルトを作成した。物性測定では、破断強度試験と動的粘弾性試験を行った。構造観察では、未破壊および破壊後のヨーグルトを走査型電子顕微鏡で観察した。

【結果】

物性測定の結果、破断強度試験では、破断応力がMPC添加ヨーグルトで最も高く、次いでSMP添加、コントロールとなった。動的粘弾性試験では、線形領域における複素粘度η*がSMP添加で最も高く、次いでMPC添加、コントロールとなった。構造観察の結果、MPC添加ヨーグルトの未破壊構造では、太いストランドやカゼインミセル表面に多くのホエータンパク質が付着している様子が見られた。これらの構造が破断応力の高さに寄与していると考えられた。一方、SMP添加の破壊構造では、ネットワークが伸びた様子が観察され、カゼインミセルへのホエータンパク質の付着は少なかった。この破壊過程におけるネットワークの伸びが、線形領域における複素粘度η*の高さに寄与していると考えられた。以上のことから、無脂肪ヨーグルトの食感向上にはカゼインミセルへのホエータンパク質の付着を少なくし、より伸びやすいネットワーク構造にすることが有効であると考えられる。