2017年8月 日本食品科学工学会(日本大学藤沢)

試作「クッキー」における食感の差を構造と物性の違いから見える化する

○森田珠百1、日下舞2、鈴木真人2、中村卓1、松尾卓摩3(1明治大農・農化、2明治大院・農化、3明治大理工・機工)

【目的】

「クッキー」のような脆い物性を持つ脆性固形食品のおいしさにおいて、食感は重要である。食感はヒトが咀嚼により食品構造を破壊することで発現し、おいしさに寄与していると考えられる。本研究では食品構造の破壊過程に着目した物性測定、構造観察を行い、官能評価と相関づけることで、おいしい食感の見える化を目指している。クッキーのおいしい食感として、ザクザク、サクサクといった、オノマトペを用いた感性的な食感表現が知られている。これらのオノマトペ食感について、力学的特性、幾何学的特性から見える化することを目的とした。

【方法】

食感に特徴を持たせるため、小麦粉に対する砂糖とバターの配合と、焼成時間を変えたクッキー4種類(A-D)を作成した。クッキーの主な食感表現として選定した計5項目について採点法で官能評価を行った。また、ザクザク、サクサク、ホロホロ、しっとりの4種類のオノマトペ食感についても順位法で評価した。さらに破断強度試験とAcoustic Emission(AE)試験より物性測定を行った。また、X線CTを用いた構造観察も実施した。得られた結果について、SPSSを用いた統計解析を行った。

【結果】

官能評価の結果を主成分分析すると、第1主成分には力学的要素、第2主成分には幾何学的要素が関係していると考えられた。Aは第1主成分が負、第2主成分が正となり、第1主成分を挟んでB、C、Dと線対称の位置関係となった。Aはかたく、粒が大きいザクザク食感となり、CとDは、くずれやすく、付着性があり密な構造と関係があることが明らかとなった。BはAとC、Dの中間の性質を持つことが考えられた。次に、一噛み目のかたさに着目した結果、破断強度試験の最大荷重と有意な正の相関が見られ、官能評価の結果と一致した。構造観察の結果から、空隙率の大きさと官能評価の構造の疎密に正の相関が見られた。破壊に着目したAE試験の結果についても考察する。