2018年8月 日本食品科学工学会(東北大)

乳タンパク質-寒天の相分離構造がモデルプリンのクリーミー食感に及ぼす影響

○鈴木真人,中村卓(明治大院農・農化)

【目的】

プリンのおいしさ表現の一つに「クリーミー」がある。クリーミーは複数の食感要素から総合的に判断されるため、具体的な説明が困難である。そのため、開発で効率よくクリーミーを実現するには、より詳細な知覚レベルの食感への具体化が必要である。さらに、食感は咀嚼による食品構造の破壊過程で発現するため、破壊過程と食感発現の関係を明らかにすることは、望む食感を実現するための指標になる。しかし、実際の食品は原料が多様で、破壊時の構造変化が複雑である。そこで、本研究では実際の食品より原料を単純化したモデルゲルを用い、破壊過程に着目した物性測定・構造観察・官能評価を行い、クリーミーを構造的要因・力学的要因から見える化することを目的とした。

【方法】

砂糖を10%、乳脂肪を6%添加した12%WPI溶液と1.2%寒天溶液を@60:40、A50:50、B40:60の比率で混合した。混合溶液を加熱・冷却し、モデルゲルを作製した。官能評価では「クリーミー」とクリーミーに関係することを前年度明らかにした知覚レベルの5つの食感要素について、咀嚼部位と咀嚼過程における時間軸を意識した評価を行った。物性測定では、破断強度試験、動的粘弾性試験を行った。構造観察では、共焦点レーザ走査型顕微鏡(CLSM)と走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて未破壊および破壊構造を観察した。得られた結果についてSPSSを用いて統計解析を行った。

【結果】

官能評価の主成分分析の結果、クリーミーはやわらかさ・なめらかさ・口どけ・流れやすさから判断されると考えられた。破断強度試験の結果、応力-歪曲線において立ち上がりの応力はB>A>@の順に大きく、これは官能評価のやわらかさと負の相関がみられた。動的粘弾性試験のひずみスイープの結果、線形領域(歪率1%)における複素粘度η*の値はB>A>@の順に大きく、これは官能評価の流れやすさと負の相関がみられた。CLSMを用いた構造観察の結果、@〜BのゲルはそれぞれWPIと寒天が様子の異なる相分離構造を形成していた。さらに、SEMを用いてより詳細な構造観察を行い、クリーミーおよびその他の食感要素・物性・構造の関係について破壊過程を踏まえて考察する。

祝企業賞受賞 2017年8月 日本食品科学工学会(日本大学藤沢)

モデルゲルを用いたおいしさの感性表現である「クリーミー」の見える化

○鈴木真人,中村卓(明治大院農・農化)

【目的】

ゲル状食品のおいしさ表現の一つに「クリーミー」がある。このクリーミーは食感と風味から総合的に評価される。食感と風味は食品構造が破壊されることでそれぞれ発現・放出される。実際の食品は構造を形成する要素が多様で、破壊時の構造変化が複雑である。そのため構造破壊に伴う、食感・風味の変化を構造的要因から明らかにすることが困難である。そこで本研究ではゲル状食品に広く使用される「ゼラチン」「寒天」を混合し、砂糖とフレーバーを添加したモデルプリンを作製した。このモデルプリンについて破壊過程に着目した物性測定、構造観察を行い、官能評価の結果と相関付けることで、ゲル状食品の「クリーミー」を見える化することを目的とした。

【方法】

砂糖を10%添加したゼラチン溶液と寒天溶液を最終濃度がゼラチン0.7%、寒天@0.06%、A0.12%、B0.18%、C0.24%となるように混合した。そこにミルク・バニラ・エッグの各フレーバーを添加し、モデルプリンを作製した。官能評価では「クリーミー」とクリーミーに関係すると仮定した知覚レベルの6つの食感要素について咀嚼部位と咀嚼過程における時間軸を意識して評価を行った。物性測定ではクリープメータによる破断強度試験、レオメータによる動的粘弾性試験を行った。構造観察では走査型電子顕微鏡を用いて未破壊および破壊構造を観察した。得られた結果についてはSPSSを用いて統計解析を行った。

【結果】

官能評価の主成分分析の結果、クリーミーは第1主成分においてやわらかさ・舌触りのなめらかさ・流動性・口どけ感と正の相関を示した。破断強度試験の結果、応力-歪曲線において立ち上がりの応力はC>B>A>@の順に大きく、これは官能評価のやわらかさと負の相関がみられた。構造観察の結果、サンプルはそれぞれ異なる構造を形成していた。さらにクリーミーおよびその他の食感要素と構造・物性の関係について破壊過程を踏まえて考察する。

2016年8月 日本食品科学工学会(名城大学)

連続相構造の異なる 連続相構造の異なる ゼラチン・寒天共存ゲルにおける破壊による構造・物性アロマリースの解析

○鈴木真人,鈴木遥,中村卓(明治大農・農化)

【目的】

プリン等のゲル状食品のおいしさにおいて、食感と香りは重要である。その食感と香りは食品構造を破壊することでそれぞれ発現・放出する。食品構造を形成する食品素材としてゼラチンと寒天がある。これらを共存させたゲルではゼラチンと寒天の配合比の違いによって異なる食感を示し、ゼラチン・寒天それぞれの単独ゲルとも異なることが明らかにされている。これはゼラチンと寒天の配合比による破壊時の構造変化の違いが要因だと考えられる。しかし、この構造変化による物性とアロマリリースへの影響は明らかではない。そこで本研究では異なる混合比のゼラチン・寒天共存ゲルの破壊による構造変化の物性及びアロマリリースへの影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

砂糖を添加したゼラチン溶液・寒天溶液を各割合(ゼラチン:寒天=@75:25A50:50B25:75)で混合し、合成グレープフレーバー(Ethyl propanoate, cis-3-Hexenol, Methyl anthranilate, Damascenone)を添加し、ゲルを作製した。作製したゲルについて、物性測定としてクリープメータによる破断強度試験、レオメータによる動的粘弾性試験(温度スイープ)を行った。構造観察を走査型電子顕微鏡で行った。また未破壊ゲルと破壊ゲルのアロマリリース測定をヘッドスペースSPME-GC法で行った。離水率を測定した。

【結果】

物性測定の結果、@のゲルではゼラチン連続相、Aでは両連続相、Bでは寒天連続相を形成し、それぞれ物性が異なることが確認された。構造観察の結果、それぞれのゲルで異なる構造が観察された。アロマリリース測定の結果、 未破壊ゲルではリリース量に差が見られなかったが、破壊ゲルでのみ、Ethyl proranoateにおいてリリース量に有意差が見られ@=A>Bとなった。また、離水率は@<A<Bとなった。これらのゲルの物性・構造・アロマリリースの関係性について考察する。