第12回 プレゼンテーション1

大学生活においてのみならず,社会に出た後でもプレゼンテーションの重要性は高まっていくばかりである.これほどまでに重要なことであるにもかかわらず,依然として軽視されがちであることは驚くべき事である.

プレゼンテーションの成否の99%は準備にかかっている.準備が不十分ならば必ず失敗する.逆に完璧であれば,発表の時にアガってしまうことも無い.ここではそのプレゼンテーションの準備方法について述べる.

第一回目は,プレゼンテーションに使用する資料の作り方についてであり,次回はオーラルプレゼンテーション(口頭発表)の方法について解説する.

【注意】 本講義は,プレゼンテーションの「内容の構成方法」について述べたものであり,巷にあふれている,プレゼン用「ソフトの使い方」について述べたものではない.ソフトの使い方が知りたい場合は,関連書籍等を参考にしなさい.
本講義で身につけた知識が役立つ科目等:ゼミ及び卒業研究,大学院での研究等.しかし,大学の講義科目よりも,就職後に最も重要となるであろう.

12.1 プレゼンテーションの重要性

プレゼンテーションの重要性は今更言うまでもないかも知れない.しかし,それでもなお,本当の意味で重要性が認識されているとは言い難い.日本では古来,奥ゆかしいことが利徳とされてきた.しかし,現在は状況は変わり,どれだけ上手にプレゼンテーションが出来るかでその人の将来が左右されるといっても過言ではない.

プレゼンテーションの命は,自分がやってきたこと,あるいは伝えたいことがどれだけ相手に伝わるか,である.それまで100の準備をしたとしても,プレゼンテーションで10しか相手に伝わらなければ,10しかやっていないと判断されてしまう(つまり,10しかやらなかった時と同じ結果を招いてしまう,ということである).

※今では「奥ゆかしさ」はどこかへ行ってしまった様に見える.それでいて,「自信なさげに引っ込んでいる」状況は今も昔も変わりがなく,挨拶さえ十分に出来ない人が多い.この様な人は,自分では気がついていないが,大きなチャンスを逃しているのだ.プレゼンテーションの技術は,実は普段の生活にも直結している.ここでプレゼンテーション技術を磨いてチャンスをものにし,大きく飛躍しよう.

12.2 プレゼンテーション資料作成の要点

まずは資料作成の要点を述べる.ここに書かれたことを考慮に入れながら資料を作ると良い.ただし,「コンピュータの前に座り,無言で作った資料」は,大抵の場合,そのままでは使えない.

次週の講義ページにあるように,資料を作ったら,必ず

大きな声に出し,3度以上練習する

こと.そうすれば必ず資料の問題点が明らかになる.もしかすると,資料の全体構成を変更する必要に迫られるかも知れない.こんな時にも億劫がらずに全面的に見直し,資料を作り直すこと.これがプレゼン成功の秘訣である.

全体構想を練る

まずはいきなりパワーポイントで資料を作成しようとはせずに,紙を使って全体構成(アウトライン)を練るべきである.紙に四角い枠を描き,キーワードを入れていく.

アウトライン

手書きのアウトラインの例
(15分間のプレゼン向け)

四角い枠の数は発表時間で決まる.後にも述べるが,およそ1分=1スライドで計算すると良い.

手慣れてきても紙がベスト

プレゼンテーション資料は,何度作っても,なかなかうまく作れるようにはならないものである.多少慣れてきたとしても,新しいプレゼンを構成する場合は,右の例のように紙を使うことを勧める.

プレゼン用ソフトには,縮小スライドを多数同時に見る機能が備わっているものもあり,一見,手書きのアウトラインと似ているが,これは出来上がったスライドの順序を入れ替える為にあるものなので,残念ながら,ある程度の代用にはなったとしても,紙の自由さには到底及ばない.

1スライドで言うべき事は1つだけ

1スライドに色々なことを盛り込む人がいるが,これは多くの場合,失敗する確率が高い.

そこで「何が言いたいのか」がボケる

からである.

それとは逆に見るべき内容が無いスライドを作る人も多く見かけられる.そもそも,そのスライドには重要な事は何も書かれていず,無くてもかまわない(ない方が良い)などという場合もあるし,既に別のスライドで言ったことの繰り返し,という場合もある.

これらはどちらも,全体構成を十分練っていない事が原因である.1スライドでは1つのことを言うべきであり,それ以上でも,以下でもない.

その一枚のスライドのタイトル,および最初の行から最後の行に至るまで,

一つの事を主張するために捧げられているかどうか

を良くチェックすることが肝要である.

1スライド=1分

プレゼンテーションを行う時は,およそ1スライド=1分で計算すると良い.人は初めての情報を見せられたとき,その内容を理解するのにはある程度時間がかかる.経験上,1スライド=1分というのが丁度良い長さである.それ以下では進行が早すぎるし,それ以上時間をかけると間延びする.

発表原稿を作ってはならない

発表の場で原稿を読んでいる人を見かけることがある.しかし,発表の場で

原稿を読むのは最悪

である.原稿を見てしまえば,それが仮にどんなに優れた原稿であったにせよ,必ず「文章を読む口調」になってしまう.プレゼンは演説ではなく,対話である.

原稿を読まなければ出来ないのは,資料の作り方が悪いから

である.1スライドの要点は一つ,という鉄則を守っていれば,何を言えばいいのかがわからなくなってしまうことはない.

文字の大きさに注意せよ

やたらと小さな字をびっしり書くことや,書籍のコピーをそのまま見せるのはダメ.内容が十分伝わる訳がないからである.これによって相手に伝わることは,

この話し手はダメそうだな

ということくらいである.

また,やたらと大きな字を使うことも問題である.これによって情報量が希薄になるからであるが,それ以上に問題なのは,話を聞く相手に実際以上に,

「内容が希薄だ」というイメージ

が伝わってしまうことであり,プレゼン全体をpoorなイメージにしてしまいかねない.

背景がうるさくなりすぎないように

背景はあくまで背景である.確かに真っ白や真っ黒では味気ないので,落ち着いた背景があると良いが,目立ちすぎては良くないし,目障りになったらマイナスである.

動くパーツを盛り込み過ぎないように

よく文字が飛んできたり,飛び去ったり,回転して現れたりする効果を多用する人がいるが,多くの場合「逆効果」である.本当に目立たせたい部分にのみ使用すべきである.

12.3 PowerPoint

プレゼン資料(スライド)を作成するために,どの様なソフトを使うかは大した問題ではない.コンピュータの全画面に投影でき,ページ送りが出来ればそれで十分である.現在,一般にはMS社のPowerPointが良く普及している.このため,今回のプレゼン資料作成にはPowerPointを使うことにする.このソフトウェアの使用方法は,【ここ】を参考にせよ.

今回はこの資料ベースにしてPowerPointの使用方法に慣れよ.

課題

  1. 各自適当な話題を見つけて,5分間のプレゼンテーションにまとめよ.即ち,表紙を除いて5枚程度のスライドを作成しなさい.
  2. 1.の内容の手書きのアウトライン(紙媒体,A4一枚)

ファイル名は,presen_YCNN.ppt (YCNNはそれぞれ半角数字)とする.

上記のファイルをメールに添付して提出せよ.提出期限は来週月曜午後5時までとする.

尚,2の手書きのアウトラインはロボット工学研究室(1114B)に提出すること.

【補足7/7】 手書きのアウトラインはコピーを必ず手元に残しておくこと


次週予告

次週は,提出されたプレゼンテーション資料を元にして,数人の代表者に実際にプレゼンテーションをしてもらう.次週の講義ページを参考にして,オーラルプレゼンテーションの準備をしておくこと.

【注意】 次週は講義ページを用いて講義をすることは無い.次週の講義ページは,各自の予習の為に活用すること.
【注意】 最前列から詰めて着席すること.